私にとってのワイン
普段からお酒は、あまり飲まない。
お酒に強くないのもあるし、もともと水分を多くとらないこともあって、お酒がなくても全く問題ない。若い頃は、飲み会でビールを飲むこともあったけれど、正直なところ、人に急かされて飲むお酒は苦手だった。飲めないことはないけれど、量は飲めなかったから、いつも上手に飲んだふりをしていた。だから、飲み会のイメージは良くない。お酒を積極的には飲まないけれど、ワインやブランデーなどの洋酒をまったり飲むのは好きだ。
芳香性の高い飲み物が好きなんだと思う。
自分のペースでちびりちびりと飲む。
思い返せば、小さい頃から父がワインやブランデーを美味しそうに飲んでいた。ブランデーのグラスを回しながら飲んでいる父の姿が格好良かった。ある時、匂いを嗅がせてもらったことがある。口が窄まったグラスから立ち上がる、強い酒の香りに一瞬で目をやられた。口を近づけられなかった。こんな強烈な飲み物を平気そうな顔で飲むなんて…。これが大人の味ってやつなんだ、と衝撃を受けた。その時から、ブランデーは私にとって憧れの飲み物になった。
これは私が3-4歳くらいの頃の記憶。
テーブルの真ん中に赤ワインのボトルが置いてあって、私はぶどうジュースだと思ってグラスに並々と注いだ。そして一気に飲み干した。
その後は、蒸気機関車のように、体が熱くなり沸き上がって部屋を走り回った…。
残念ながら私の記憶はここまで。真っ赤な顔をして走っていた私を見て、びっくりした両親は心配して私を寝かせたという。私はいびきをかいて寝て、起きた時は二日酔いもなく、いつもの私だったそうだ。
本当かな?水でも飲ませなかったのかな?そんなに簡単に寝るものだろうか?などと、もっと詳しく聞いてみたいけれど、両親の記憶も曖昧でこれ以上はわからない。
小さい子がいるのに、ワインを手に取れる場所に置いていた親もどうかと思うけれど、私は、こんな小さい頃にワインをがぶ飲みしても平気だった。酔っ払ったけれど、急性アルコール中毒とかにはならなかった。これで、ワインに免疫がついたのかもしれない。
20歳をすぎてお酒を飲めるようになってからは、父が注文するワインを家族みんなで飲むようになった。
ワインの原料は葡萄だから、複雑な味わいの中にしっかり甘みもあって比較的飲みやすい。食事と合わせるとよりいっそう美味しい。
自然と美味しい食事をする時にはワインを一緒に飲むようになった。
いつもワインを選ぶのは父だった。当時の私は、ワインをどんな基準で選んだら良いのかわからなかった。ソムリエさんにどう尋ねたら良いのかもわからなかった。だから、ワインリストを見ながらソムリエさんと楽しそうに話をしながらワインを選ぶ父の姿が眩しかった。
社会人になってからしばらくした頃に、たまたま入ったレストランでワインスクールのチラシを見つけた。それまではワインを時々飲むのに、ワインのことを深く知ろうともしていなかった。チラシを見て、どうせ飲むなら、少しはワインのことを知ってみようかな、と思い立った。ワインスクールに興味があったし、好きなワインくらい見つけたいな、と軽いノリで入門クラスを受講してみた。それが私のワインライフの始まりとなった。
ワインの話を聞くのは実に楽しかった。ワインの作り方や銘柄のこと。気候によって、品種によって、生産年によって全く違う味わいのワインができること、などなど。このワインには、こんな料理が合うなどと、ワインと食事のマリアージュについても教わった。先生があまりにも楽しそうに熱く語るものだから、どんなワインだろう?とどんどんワインに興味をもち、いろいろなワインを飲んでみたくなった。講義の後には毎回ワインの試飲ができて、仕事帰りにデパートでお惣菜を買っていきクラスの仲間とシェアするのもすごく楽しかった。
それで気がついたらワインにはまっていて、趣味ながら、ワイン・エキスパートの資格を取得した。
資格をとって良かったことといえば、ワイン・ショップやレストランで、ワインを選ぶことが楽しくなったことだろうか。
ソムリエさんなどとワインの話をすることも楽しくなった。
資格を持っているといっても、有名な銘柄のワインはあまり飲んだことがないし、知らないことの方が多いから、聞く話1つ1つが新鮮で、いろいろなことを教えてもらえるから楽しいのだ。
ワインは洋食だけでなく和食でも、比較的どんな料理にも合うと思う。最近のワインは安くても十分に美味しいし、あまり食べるものを気にしないで、飲みたいと思ったものを飲んだりもする。
フランス料理ならフランスのワインを選ぶ、みたいに、料理とワインの国をそろえてマリアージュを楽しむこともある。
シャルドネ、ソーヴィニョンブラン、カベルネ・ソーヴィニョンなど、どこの国でも作られている品種でも、作られる地域によって味わいは全く違ってきて魅力的だ。でも個人的には、特定の国・地域でしか作られていない、土着品種を飲みたいとも思う。
ワインを表現するのって実に面白い。どう感じてどう表現してもいい。表現する人の感性が試される。ワイン本などを読んでいると凡人の私には思いつかないような個性的な表現が沢山でてくる。
えー?どうしてそんな風な表現ができるの?って思うくらい奇抜なものもある。
孤独のグルメでも、主人公の五郎さんのコメントは独特でインパクトがある。えー?って思うこともあるけれど、同時にそれくらい自由に表現していいんだ、と思わせてくれる。
ワインの好きな人の感性はユニークだ。
私のワインに詳しい知り合いも独自のワイン感があって、コメントも個性的だった。
ワインの香りを表現する時に、人口的な香り、というものがある。
私は人工的な香りというものが最初ピンとこなかった。
なんとなくはわかるけれど、何も情報なくワインを飲んだ時に人工的な香りをかぎとれるか自信がなくて、彼にどう感じるか聞いてみたことがある。
人工的な香りは、ねっとりとした、オイリーな感じの香りで、石油香とかケミカル香とかと表現することもあるのだけれど、彼はりかちゃん人形の匂いだと答えた。リカちゃん人形の匂い?私には余計にわからなくなった。彼曰く、ゴムみたいな匂いとのこと。人によって感じ方、解釈の仕方って違うんだな、と思い知らされた。誰がどう表現しても、結局、自分の解釈を見つけなければならないんだ、と学んだ。今でもリカちゃん人形の匂い、という表現は私にはすごくインパクトがあって忘れられない。
人の数だけ表現方法はある。その人がそう感じたなら、それは正解なんだ。ワインリストなどに書かれているワインの説明はワインを選ぶ際の参考になるけれど、それと同じように自分が感じなくてもいいんだね。
自分の鼻や舌で確かめて、私はこう感じる…と確かめてみる。
一緒に飲む人がいる時は、お互いにどんな風に感じるか語りがら合うことも楽しい。食事と共にワインを味わいながら、他愛もない話で盛り上がることも楽しい。
最近は外食が減った。ワイン会と称するワイン好きの仲間と食事することも久しくしていない。
特別なワインは飲んでいない。家で安価なワインをちょびちょびと飲むくらい。500円くらいのワインでも意外と美味しいし、種類も豊富でオーガニックワインとかもあって十分楽しめる。
比較的飲みやすいワインだから、料理を気にせず、ちょっと飲みたいな…という時に気楽に飲む。こんな楽しみ方でもいいんじゃないか、と思ってる。
最近までマリアージュなんて全く考えていなかった。そんな時に、しあわせワイン倶楽部のワインと出会った。
楽天のサイトで主人が頼んでくれたワインなのだけれど、思いがけないプレゼントが届いて、嬉しかった。主人はプレゼントのつもりじゃなかったみたいだけど。
丁寧な梱包のワインと共にミネラルウォータも入っていた。カリフォルニアのワインに、カリフォルニアのミネラルウォータ。
水はチェーサーとして一緒に飲むようにと手紙に書かれてあった。ワインと一緒に水が届いたことは初めてで粋な試みだな、と思った。
しかもワインごとにテイスティングシートが入っていた。ワインの詳細な説明やおすすめの料理などが書かれていて、右の欄には感想を書き込めるようになっている。
飲んだ後にラベルをはがしてファイルに閉じて、食べた料理や飲んだ時の感想を書く…。
昔はやっていたけれど、最近は全くしていない。
ただ飲むだけ。写真は撮ったりするけれど、それも撮りっぱなし。
でも今回は、
せっかくシートがあるのだから、久しぶりにワインに合う料理を考えてみよう。ワインを飲んでコメントを書いてみよう。それも、ありきたりな表現じゃなくて、自分ならではのユニークな表現で。
他にはワイン通信が数枚入っていて、
久々にワイン情報を楽しく読んだ。
しあわせワイン倶楽部の、粋な心遣い。
ワインを飲む前から、また頼んでみたいかも、
誰かに贈り物をしたら、喜んでもらえるんじゃないかと思った。
たまにワインが届く幸せ。自分で頼まないから、届くまでどんなワインかわからない。届いたワインを見て、献立を考える。そんな楽しみ方も悪くない。
思いがけず届いたワインが、私の何気ない日常に彩りをもたせてくれた。
こういうワインの活用法、これからも続けていきたいと思う。