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『怖ガラセ屋サン 澤村伊智』寒さか、寒気か?

この作者はデビュー作から好きで読んでいる作者の一人なのですが、実は私はホラーはどちらかというと苦手です。
でも、最近結構な割合で読んでるというのは、苦手と言いながら、実は結構好きなのかもしれないと最近思っています。

今回は連作短編集で、祖の短編全体を貫いて登場するのがタイトルにもある怖ガラセ屋サンなわけです。

普通に怪談を語るのではなく、いつの間にか怪談になってしまうだけでなく、自分が巻き込まれていく恐さ。
普段は恐怖に感じていないと思っていたことが、実は恐怖に気づいていなかっただけで、語られるうちに恐さがしみこんでくるようです。

これは、もうこの一作だけではもったいないので、第二弾第三弾と出して貰いたい設定と語りだと思います。

ただ、私的には一番怖かったのが最初の短編で、その後の短編は怖さよりもどこで怖ガラセ屋サンが登場してくるのかのワクワクが勝ったようで、本来のホラー小説の楽しみからは逸脱してしまっているのかもしれません。

恐怖体験というか、恐怖をもたらすものは、いろいろですが、自分が知らないところで恨みを買ったり、自分がやってきたことを忘れて幸せの絶頂から恨みを果たされたり、罪悪感からの恐怖や、これまで繕ってきた嘘がばれてしまう恐怖感、いろいろとありますが、どれも恐怖感というのは、その人の生き様に関連した何かが、自分の意志でなく自分以外から無理やりに変えられてしまう、もしくは意識的にも無意識的にも隠していたことが最悪の形でばらされてしまうということかもしれません。

こうやって、適当にいろいろ書いていると、実は読んでいるアナタに関しての秘密を知っていることをココで告白しなければなりません。
それは……

って中たちで、突然自分の隠している過去を、忘れようとしていることを無理やりここで公開されてしまうという恐怖が、味わえるとしたら、やはりそれはホラーというよりも超常現象なのかも。

いろいろな恐怖の形を味わえる連作短編、オススメです。

ちなみに、これを読みながら、体が震えるのを感じました。
ブルブルと震えた体、恐怖から体が震えたのではなく、暑かった残暑が終わり突然の冬の寒さに震えたのだということにしておきます。

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