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『さかさ星 貴志祐介』呪いと恐怖の先にあるホラー、というのでなく…

発売前から、貴志祐介先生の新作ホラーという事で楽しみにしていました。
更に、私の好きな鬼瓦が表紙全面に、これは期待しかありません。

数百年続く、凄惨なる呪いの戦い――。至高の恐怖と異形の謎に挑め。

戦国時代から続く名家・福森家の屋敷で起きた一家惨殺事件。死体はいずれも人間離れした凄惨な手口で破壊されており、屋敷には何かの儀式を行ったかのような痕跡が残されていた。福森家と親戚関係の中村亮太は、ある理由から霊能者の賀茂禮子と共に屋敷を訪れ、事件の調査を行うことになる。賀茂によれば、福森家が収集した名宝・名品の数々が実は恐るべき呪物であり、そのいずれか一つが事件を引き起こしたという。賀茂の話を信じきれない亮太だったが、呪物が巻き起こす超常的な事象を目にしたことで危機を感じ始める。さらに一家の生き残りの子供たちにも呪いの魔の手が……。一家を襲った真の呪物は? そして誰が何のために呪物を仕掛けたのか? 数百年続く「呪い」の恐怖を描く特級長編ホラー。

amazon 書誌データより

結局一気に読み終えて、一日で読めそうだったけど、もったいないので二日に分けて読みましたが、ほぼ一気読みで勢いがついて読み進める面白さでした。

が、ホラー、呪物が出てきて、昔からの則と超常現象、そして呪いの正体とはとたたみかけるように物語が進んで行ったのだけど、何故か恐怖感が小説の面白さと比例しない。
旧家に収集された名品の数々が実は恐るべき呪物で、その呪物の過去からの因縁も恐怖に包まれてはいるのだけど、恐怖にふるえることが出来ない。
これは、おそらく最初の一家惨殺事件が呪物の謎に絡めることによって、惨劇が直接的に語られないこと。
そして、霊能者が次々に暴く呪物の正体の物語が、判明するのが早すぎるからではないだろうか。
確かに呪物の来歴は恐るべきもので、その呪いの正体が現代に現実に侵食してくる恐怖はあるのだけど、その呪いが間違いなくこちらには向いてこないという安心感が恐怖をうすれさせているのではないだろうか。
語り継がれていたことが反転する“さかさ”、呪物の正体が最初に思っていたものと“さかさ”になっていく。そして星の正体。
正に、タイトルの“さかさ星”に納得、そうか目の前にもう答えを書いていたのかという、ミステリを読んでいる人は、読んでいて唸ってしまうでしょう。というか、私はそこまで読んで、タイトルに納得しまくりでした。
ただ、作者がどういうつもりで描いたのかはともかくとして、それを大上段にホラーと大声で宣伝した出版社が間違っているように思う。

読み終えた私からすると、これはホラーではなく、呪物の謎を解く、言わば呪物ミステリというべきもののような気がする。
そして、呪物のきっかけとして語られる真相は、ある意味呪術的なあの遊びの言葉なのだけど、その言葉がわかってしまったときの恐怖というよりも、あぁその言葉だったのねと言う納得感が強い。
ホラーというのではなく、呪いをかけるものと、それを阻み、呪いを阻むものとの闘いを描いたバトル呪術のダークファンタジーとして、続編を書いてくれたら、それはそれで楽しみな作品になると思うのだけど、どうなんでしょう。

ホラー大作というのでなく、呪物ミステリという気持ちで読めば面白い作品だと思います。

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