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検事・佐方と弁護士・佐方「罪は真っ当に裁かれなくてはならない」
このシリーズの主人公の佐方貞人は作者のデビュー作では辞め検の弁護士として登場しましたが、後の短編集では検事としての活躍を描いた作品となっています。
「罪は真っ当に裁かれなくてはならない」という信条で、権力やあらゆる圧力に屈せず、自分の信じる道を生き抜く強さを持った人物として、かたくなな堅物の人物として描かれています。
が、そのぶれない生き様というか、信念が、事件の真相をつかむことが出来るという物語となっています。
私は原作小説を全て読みましたが、どれも読み応えのある良い小説だったので、未読の方には是非オススメしたい作品となっています。
弁護士としての作品『最後の証人』は作者のデビュー作ですが、弁護士・佐方貞人が殺人事件の弁護を引き受けることから物語は始まりますが、殺人事件の弁護というか真相を探ることから別の事件の解決にも繋がっていきます。シリーズでは以降弁護士としての佐方ではなく、弁護士になる前の検事時代の佐方を主人公とした事件ばかりを描いていくことになります。
検事としての物語としては『検事の本懐』『検事の死命』『検事の信義』の三作品が出版されていますが、長編ではなく短編というより中編の作品集なので、ドラマのシナリオとしてはまだあるのですが、ドラマ化されているのは弁護士としての佐方を描いた『最後の証人』と検事時代を描いた『検事の死命』『検事の本懐』『検事・佐方~裁きを望む』『検事・佐方~恨みを刻む』の5作品です。どのドラマも骨太で良い作品に仕上がっているので、未見の方は是非観ていただきたい。
警察が調べに調べて犯人を特定した事件を検事が起訴するわけですが、その警察の調書を読むことで矛盾点を見つけ出し真相を追いかけていくという、新しい形のミステリと言えるのかもしれませんが、警察の調書を読み込むという退屈な部分については主役がやってくれるので安心して読む事が出来ます。
昔なら、テレビドラマは再放送があるまで観ることができなかったのですが、最近は配信サイトで観ることができるようになって嬉しい限りです。
ちなみに2025年2月の時点ではHuluとAmazon Prime Videoで観ることが出来ます。
主役の佐方貞人を演じるのは上川隆也で、現在「問題物件」で演じている自由闊達な役と違って硬派な演技で魅せてくれます。
原作の小説のネタは残っているので、まだまだテレビドラマを製作してほしいのですが、小説の内容が地味というか、堅物過ぎる主人公が一般受けしなかったのか、続編が製作されることなく現在に至っています。
そして、四冊目の本『検事の信義』が出版されて現在まで5年近く続きが出ないので、佐方のお父さんの事件の真相が明らかになったところで一段落付けて続きを書く気を無くしているのではと思っていましたが、noteで連載しているのを発見。
現在、このnoteでKADOKAWAから最新作の『誓いの証言』が連載中で、これは弁護士・佐方貞人の物語となっています。
やっと時系列では未来に進み出したということになります。
これは非常に嬉しいんだけど、私は本で読むのが好きなので、本が出版される日を気長に待とうと思います。
物語として熱く燃えるものも、クスリと笑えるものも良いのですが、堅物で法を遵守することを「罪は真っ当に裁かれなくてはならない」という信条にのっとって愚直に事件の真相を追う姿というのも良いものです。
小説を読むのがこのシリーズを好きになる一番の道ではありますが、小説を読むのが苦手な人でもテレビドラマとしてこのシリーズを楽しむことが出来ます。
どちらが先でも、きっと読めば、観れば、気に入ってもらえるのではないでしょうか。
検事時代の佐方の小説が三作。
弁護士時代の小説は『○○の証言』という証言シリーズとして三部作となって、連載中の作品ともう一作描いてくれることを祈っています。