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おじさんとの夏休み 9話
「何から何まで、本当すみません。晴臣さん呼んできますね、お礼言ってもらわないと…」
「ああーいやいや良いですよ。兄さんも今日は疲れてるでしょうから、風呂を先にしてあげてください」
三文芝居を見ながらいた俺は、俺の意志など入り込む隙もなく夏休みの予定が決まってしまった…まさかずっと夏休み一杯おじさんとこいるわけじゃないよな………?
不安になってきた。
「いつまでおじさんとこにいるの?俺」
「なんか用あるんか?」
いや…これと言って…あ、違う違う
「勉強とか…」
「だからそれをやりに俺んとこ来るんだから、夏休み一杯いたらいいよ」
頭をポンポンかなんかして、ーな?ーと覗き込んできたおじさん笑ってねえ。
なんなんよ…俺に何しようとしてるの?この人…
「そう言うわけなんで、和代さんも悠馬の夏休み時は家でのんびりしててくださいね」
「ありがとう〜〜。子供一人いると、食事やら何やら大変でね。でも多少の生活費はお渡しさせてね、1ヶ月半くらい分ね」
母さん…俺を売るなよ…
「お気を使わせます、それはありがたく」
マジで決まってしまった夏休み…探偵だって言ってたじゃん?俺に勉強教える時間なんてあるんかな…不安だ…
そんな不安がってる俺を尻目に、母さんとおじさんはこの計画の話し合いに花を咲かせてた。
期末の成績もまずまずで、なんとか補習を避けられた俺はキャスター付きのスーツケースを転がして、小田急線の経堂駅(北口)に立っていた。
迎えによこすって言ってたのに来ないじゃんか。なんか隣には派手だけど可愛い子が立ってるだけだしさ…まさかこの子じゃ…ないよなぁ…あ、ジロジロ見ちゃった…
「あのぉ…」
わっ!話かけられた!見すぎたかな
「あっあのすみません!なんかその、可愛いなって思ってみちゃいまし…」
「悠馬くん?」
「え?あ、はい…もしかして…」
その女性は、鎖骨辺りまでのまっすぐな金髪を揺らして近づいてきて
「よかった!ボスの甥っ子さんって聞いてたから、ゴッツイ子想像してたのよ〜。こんな可愛らしい子だったのね。私小宮唯希(いぶき)です。唯一の希望って書いていぶき。よろしくね。ボスの助手してます〜」
ボ…ボス…?
「もー、ボスったら画像なり見せてから迎えに来させて欲しいわよねー。じゃあこっちだからいきましょ」
唯希さん…よく喋る人だな…明るくていいけど派手…あの肩出しTシャツ(?)とあんな短いパンツは、目の毒だ…