【散文】クリスマスの月に
12月になりました。いよいよ街はクリスマスモードですね。まだ「ホワイト・クリスマス」ではありませんが、札幌では先月22日に始まった、クリスマス飾りなどを販売するミュンヘン・クリスマス市が、25日まで開かれます。ドイツ・ミュンヘン市は札幌の友好都市。
会場の大通公園では「ホワイトイルミネーション」も輝いています。
日本では信仰に関係なく、25日より24日のイブが〝本番”。その夜は、家族や友人、彼女・彼氏と楽しい時間を過ごすひとも多いでしょう。
そんな街が華やぐ12月になると、ふたつの「クリスマス」を思い出します。
1987年。街のにぎわいに背を向けるような一曲に出会いました。
中島みゆきさんの小品。
「クリスマスソングを唄うように」
仲間や家族と料理を囲む温かい部屋。華やかに飾り付けられた店や街に聞こえる明るい会話、弾ける笑顔。その向こう側にあるクリスマスを歌います。初めて聴いたときの驚きは忘れません。衝撃的でした。みゆきさんの歌唱力もあって、歌詞がこころに刺さりました。
2004年。映画「Love actually」が日本で公開されました。ヒューグ・ラント、アラン・リックマン(ハリー・ポッターのスネイプ先生)、エマ・トンプソン、ローワン・アトキンソン(ミスター・ビーン)など英国の名優をそろえたラブコメディー。クリスマスを迎えるロンドンを舞台に19人の男女による9通りの愛を織り交ぜます。想いを成就させる人。想い悩む男と女。男と男。
印象深い場面があります。親友と結婚した、密かに思いを寄せる女性に、素直な気持ちをボードに手書きした文字で告白します。
その一枚には「JUST BECAUSE IT'S CHRISTMAS-」。
立ち去る男性は「Enough. Enough Now」とつぶやく。
ずっと心にしまっていた想いを伝える彼も、受け止める彼女も饒舌ではありません。2人の間にはBGMの「Silent Night」が流れるだけです。
これからクリスマス・イブに向けて気分を盛り上げていこうというときに暗い話が続きました。
ただ、人の心の深淵を、印象に残る場面を、繊細に、あるいは説得力を持って表現しようとするとき、言葉は選りすぐられます。平易で、使い慣れた言葉であっても研ぎ澄まされます。
この2例は、そのことを教えてくれていると、ずっと思っています。
日ごろ、言葉を雑に扱っていたら真似すらできないでしょう。言葉を大切に、使い方を丁寧に。その場にあったオンリーワンの言葉。追い求めたいです。
うつむきたくなる話を、またひとつ思い出してしまいました。
「戦場のメリークリスマス」
坂本龍一さん。あれから2回目のクリスマスですね。
(了)