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カンヌライオンズ2024、見てみたまとめ

今年(2024年)のカンヌライオンズの作品をいくつか見たので特に印象に残ったものをピックアップして記録していきたいと思います。日経クロストレンドさんの特集をはじめとした記事、参加者のnoteなどを拝見しました。

今回取り上げたものを見直してみると、無意識の偏見や思い込みに対して「それは違うよ!」と教えてくれるようなものが多くて、素敵な企画だなと改めて思いました。

きちんとチェックしはじめたのが昨年からなので、5年分くらい遡って見てみようかな。


WoMen’s Football(Orange)

  • 男性サッカー選手が巧みなプレーを繰り広げて観客を魅了していたところ、「実は女子サッカー選手のプレーでした!」とネタばらしをする女子サッカーの広告。

  • フェイクという表現ではあるけれど、それによって事実をありのままに見る視点を与えてくれる。

  • 自分たちのサービスが持つ価値を、あえて反対の立場にあるサービスや、顧客にとって馴染みのあるものに置き換えて表現してみるという手法は他のサービスにも応用できそう。

解説はこちらの記事をチェック🔽

内容は、女子サッカーフランス代表チームの試合映像をVFX(isual Effects)技術で加工し、女子選手の姿形の上に男子選手を重ねた映像をCMとして流すというものです。前半は一流どころの男子サッカー選手たちが繰り広げる、いたって普通の試合風景なのですが、後半に「実はこの試合、男子ではなく女子選手の試合でした!」とVFXの種明かしを行うのです。

MarkeTRUNK「カンヌライオンズ2024から見えた世界的なマーケティングの潮流と日本企業の課題とは?PRストラテジスト本田哲也氏インタビュー」

動画は当初Xのみに公開。まず前半(男子選手に“偽装”した女子選手のテクニカルな動き)を投稿し、数時間後に全編を投稿することで種明かしをした。ツイートから1日以内に、8つの主要メディアがこのキャンペーンを取り上げ、動画はヨーロッパを皮切りに世界中に広まった。

河尻亨一「カンヌライオンズ2024速報 by 銀河ライター【Day2】」

ROOM FOR EVERYONE(Mastercard)

  • "Priceless"というワードでお馴染みのMastercard。ウクライナからの難民の居住地を見つけやすくする昨年の企画でもクレジットカードデータを活用してこんなことまでやるのか、と驚いた。

  • まずは住む処、つぎは仕事。大事なものから順番に取り組んでいて、最初の企画をさらに発展させているのがすごい。

  • お店の種類によっては成果をあげる相互補完関係があるというビックデータからの発見をもとに、ウクライナ難民による事業とポーランド人による事業が共栄しえることを、出店場所を探すという実利的なアプリを通して伝える。そして事業がうまくいけば、MasterCardとしてもhappyという三方良しを実現している。

  • データから見えてきた事実を、人々のネガティブな感情や認識を変えていく力を持つものに変えている。


(余談)解説の記事中に「ロシアのウクライナ侵攻によってポーランドに退避したウクライナ難民は約155万人で、これによりポーランドの人口は4%増加した」とあるのですが、155万人というのは沖縄県の人口よりちょっと多いくらい、鳥取県の人口の2.5倍以上という数です。たまたま友だちの薦めで難民関連の本を読んでおり、実際的な問題と人道的な問題がぶつかる大きなイシューに取り組んでいること自体が偉大だと感じました。


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そこでマスターカードは、ポーランドとウクライナの起業家それぞれのビジネスが相乗効果を生むように、店舗の出店場所探しをサポートするデジタルツール「Room For Everyone」を開設。たとえばジュエリーショップの隣に書店があると共に繁盛する傾向にある、レストランの横に理髪店があるとよりお客さんを引き付ける、ドラッグストアの横にペットショップがあるとビジネスが成功する傾向がある、といった法則がある。これらをもとにマスターカードが保有する来店客数、取引データ、ビジネス補完データ、不動産情報などを分析し、両者にとって適切な出店場所を提案した。

AdverTimes.「カンヌライオンズ2024、マスターカードのウクライナ難民救済施策が2年連続受賞」

The Code(Dove)

  • 生成AIに入力するプロンプトに工夫を加えて、出てくるアウトプットを変えることで、自社ブランドが大事にしていることを伝えている。

  • 生成AIという新しいテクノロジーのトレンドに乗りつつ、私たちの認識をかたちづくる情報が偏ったものであることに自覚的にさせてくれる。

  • 「美しさってなんだろう?」という大きな問いに、ブランドとしての解を提示しつつ、見る人に対しても問いかけてくる企画。

解説はこちらの記事をチェック🔽

ユニリーバのスキンケアブランドDoveの「The Code」は、「魅力的な女性」や「世界で最も美しい女性」をAIで生成する際に「according to Dove Real Beauty Ad(Doveのリアル・ビューティー広告によると)」というプロンプト(指示文)を加えることで、多様な美を表現することに成功した事例。

日経クロストレンド「なぜドリトスは「サクッ」を消したのか AIマーケ活用を3分類で分析」

Mother Nature(Apple)

  • 「Mother Nature」が人間に扮して会議にあらわれるという企画の発想にも、動画の細部にもユーモアが溢れている。

  • 母なる自然という概念を具現化して、そこに祈るとかではなく、むしろオフィスの会議室に来てもらおう、身近なところに引っ張ってこようという発想がおもしろい。

  • 「Mother Nature」の皮肉で辛辣なツッコミがおもしろくて、何度でも見れちゃう。

  • 環境問題への対応という堅苦しいと思われがちなテーマも、こんなにたのしくレポートできるんだからすごい。

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また、特に印象に残っているのが、アップルの「Mother Nature」だという。同社の環境に対する取り組みなどを伝える内容で、活字の報告書だと面白く伝えるのは難しい。そこで、Mother Nature(人間にふんした自然の神様)に対してティム・クック(本人)らAppleメンバーが緊張しながら必死に報告をする動画に仕上げた。

日経クロストレンド「キリン、資生堂のトップマーケターはカンヌから何を得た?」

SPREADBEATS(Spotify)

  • 自分たちのサービスの価値を伝えたい相手がよくみるツールを「メディア(媒体)」として捉えて動画をコーディングして届けるという、実利的でありながら、たのしい企画。

  • 誰に対して、何を届けたいのか、そのために最適な手段は?を考えた結果としてスプレッドシートにたどり着くのは分かるけど、そこで「スプレッドシートに動画を」なんて発想にならない・・これもまた思い込みを超えてきている。

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Spotify広告がデジタルオーディオを超えたものであることを示すため、アーティストのジョン・サミットの協力も得て、メディアプランナーが広告購入を検討する際に多くの時間を費やす場所、つまりスプレッドシート上を"メディア”と捉え、Spotifyの営業チームがクライアントに送信するエクセルファイルに4分間のミュージックビデオをコーディングした。

河尻亨一「カンヌライオンズ2024速報 by 銀河ライター【Day2】」


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