能登の旅
先日、能登に行ってきました。
能登半島をレンタカーで、それこそ好き勝手に、自由なペースでうろうろしてきました。1人旅をすると、自分の中の偏愛リサーチ、五感のアンテナが全開になります。それが楽しくて、時々1人旅に出ます。
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宿泊した七尾市の街中をうろうろ。高い建物がなくて空が広い。昔ながらの意匠のある建物が当たり前に残っていて、なぜかと考えたら、そうか。能登は戦時中に空襲をうけてないからだね。(逆に考えると、空襲で破壊された街は、いかに昔から続く時間の流れを分断されている事か。)
こういうのとがとてもエモくて好き。
何式の建築というの?
私はお寺や神社、そこに茂る大きな樹がツボ。すぐに吸い寄せられてしげしげと観察する。何なら触ったりこっそり幹や葉の匂いを嗅いだりする。専門的な知識なんてないけど、何かを感じる。
この土地に昔から生きてきた人たちが、何か悩んだ時や辛い時、そして感謝する時、何かにつけここにお参りしてきたのかと思うと、数え切れない人々の思念が息づいている様だし、みんながんばってるよね…って何だか愛しくなる。
半島の内側は、海が穏やかで、優しい表情をしている。そして、水際のすぐそばに家が建っている。例えるなら、満タンに水の入ったプールサイドにすぐ家が建ってる感じ。
海のことを信頼しているから、ここに家を建てられるんだろうな。海と人の暮らしが親密で、お互いに干渉しあっている感じ。
海際を走っていて、突然アンテナに引っかかった所に車を停める。こういう、現地に行かないと絶対知る事のない場所を発見するのが好き。
半島の外側に出ると、内側とは植物の植生が違う。いつも海からの強い風に吹かれているからか、海側の斜面に大きな木は無く、あっても小さくねじ曲がっている。
有名な白米千枚田。よく手をかけて、長い間継承されてきた物の美しさを感じる。
半島の外側なので、やはり日本海からの風が強い。農業をするにはなかなかハードな環境かも。
美しいけどへんぴな、能登という場所で生きるしかなかった人たちが、限られた土地に必死で作り上げたものなんだろうな、とも思う。
小さな田んぼの一枚一枚。当然だけど、全てに取水口と排水口がある。
1番下の海際まで下りる。面倒なのか、上から見るだけの人も多くて、下まで行く人はあまりいない。
そこで、激しい海風に吹かれながら、道の駅で買った揚げたてコロッケを食べる。美味しい。
こんな所にいるのは私だけかと思ったら、防波堤を超えて波のかかるテトラにいるおじちゃんを発見した。私の上を行くチャレンジャーを見つけて、何だかとても楽しい気分になり、ついこっそり撮影。
おじちゃん、波にさらわれない様に気をつけてね。お互いよい旅を。
帰り道。能登半島から金沢に向けて、海沿いの高速道路をノンストップでひたすら走る。この直線。右側にずっと海がある。
だんだん夕方味を増していく海の上の空に、薄桃色のギリシャ神殿みたいな雲がそびえ立っていた。
止まって写真を撮る事はできなかったから、何度も何度もチラ見して頭の中に焼きつけた。
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能登は遠い。関東圏から、新幹線で金沢まで2時間以上、そこからさらに車で2時間弱。
もぐら会のお話会などで、海外にいる方たちだってリアルタイムでお話できる今の時代に、時間とお金をかけてせっせと自分の体を運んでいかなくちゃ辿り着かない。
だけどその、人間が絶対に超えられない物理的な壁が、逆にかけがえのない物に感じられる。
あの時確かに居たのに、今は行きたくても行けない、絶対的な隔たりがある場所。だけど思いを飛ばせば、その場所の空気や光、匂いやまでも感じられる場所。
そんな場所がある事が、バタバタと慌ただしい日常の中で、いっとき心の避難所になってくれる。
少し立ち止まって深呼吸して、思いを飛ばし、「私にはここがあるんだからね」とこっそり笑う。そしてもうちょっとやろうかな、と思う。そんな力をくれる様に思う。
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