『レビー小体型認知症とは何か』支援職からの書評
若年性認知症性と診断された方の就労や生活を長年全力で支えてこられた
来島みのりさん(東京都多摩若年性認知症総合支援センター、センター長)が、支援のプロとしての視点から書いてくださった書評をご本人の許可を得て掲載します。
来島みのりさんは、オンライン記事、雑誌などへの執筆やNHKの認知症番組へのご出演などもされていらっしゃる方で、樋口も大変尊敬している情熱的な方です。
・・・・・・来島みのりさんの書評です・・・・・・・・
『レビー小体型認知症とは何か ー 患者と医師が語りつくしてわかったこと』
(ちくま新書)を読みました。
一言で表現すると、立体的な本であると感じました。
樋口さんの実際の体験や知識と、極めて専門性の高い内門先生のお話が組み合わさることにより、読者の理解が立体的になるのです。
私はこれまでレビー小体型認知症と診断された多くの方々の支援に関わって来たことから、この病気については、十分に理解しているつもりでしたが、とんでもない! 知らないことがいっぱいで、非常に勉強になりました。
当センターのスタッフにも、勉強になるので読むように勧めています。
第4章「幻視など多様な症状への対処法」の中での、樋口さんの言葉
【本人や家族が本や資料を読んで基本的なことを知るのはすごく大事だと思っています。(P133)】
は、その通りです。
また、【医師が診察室で一から説明するのは大変ですから、資料を渡すとか、別室で動画を観てもらってはどうでしょう。】
との提案は、目からうろこです。
医師は忙しく時間がないので、動画というのは画期的な提案です。
第5章「病気と医師との付き合い方」の中での、樋口さんのアドバイス
【「幻視はありますけど困っていません」という言い方をしないと
「こんな症状がある」は「薬を処方してほしい」と医師はとるので、薬がどんどん増えたりしますから。(P154)】
これも凄く重要です。
相談業務で家族からよく聞くのは、「先生が話を聞いてくれない」と言う不満です(当事者はあまり言いません)。
家族は自身の辛い状況や本人の大変さを理解して欲しく、医師にたくさん情報を提供しようとしがちです。
一からエピソード交えて長々と話そうとすると、医師から話を切られることもあります。診察時間は、限られているからです。
ねぎらいや慰めの言葉を医師に求めている家族もいます。話を聞いてもらうのは家族会にするなど、目的を分けた方が良いと感じることが多いです。
医療との付き合いかたも学ぶことが必要で、家族が辛さばかりを訴えた結果、不要な薬が増えては本末転倒です。
第6章「最高の治療法とは何か」で樋口さんが説明されているご自身の症状、「時間感覚の障害」も、すごく分かり易く、とても興味深いです。
その他、読んで思うところが沢山ありました。
ご本人やご家族はもちろんですが、仕事で支援する立場にある方々には、強くお勧めしたい一冊です。 来島みのり
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来島みのりさんは、かもしたまことさん(若年性レビー小体型認知症と診断された後も同じ職場で働き続けていらっしゃる方)と共著で
『本人と支援者が教える!認知症になったあとも「ひとり暮らし・仕事」を続ける方法』(翔泳社。2023年12月発行)
という、当事者を応援する画期的な本を書かれています。
具体的でわかりやすい工夫やアドバイスが満載で、認知機能障害があっても読みやすい、理解しやすい工夫が凝らされていますので、認知症に限らず、それ以外の脳の病気や障害を持つ方の生活にも、とても役に立ちます。
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