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宇宙から音楽が降ってきた! 1999年スカイパーフェクTVの衝撃

45年生きてきた中で新しいテクノロジーやメディアが登場する度、たくさんの衝撃を受けてきた。
古くはファミコン登場に始まり、MD、PHS、初めてインターネットに触れたときはびっくりしたし、そこからMP3、デジカメ、Youtube、radiko、もちろんiPhoneの登場、最近ではApple Watch単独で電話ができるようになったこと。
でも音楽好きな自分にとって人生で一番影響を与えてくれた出来事って、1999年に自宅でスカイパーフェクTVが観れるようになったことだなと思う。

当時、僕は某大手家電量販店で新入社員として働いていた。
店の売上が悪い月には社員が商品を自腹で購入して売上を作るという、令和の時代では自爆営業と呼ばれ問題になっているクソみたいな習慣も当たり前のように存在していた。
そこで上司にそそのかされ数万円するCSチューナーを購入したのがきっかけで、自宅でスカイパーフェクTV(現スカパー)が観れるようになったのだ。

パラボラアンテナをベランダに設置し、テレビ設定画面に表示される受信感度をチェックしながら微調整するとビーというビープ音が高くなり衛星電波を受信できているのが判る。
試行錯誤の上、初めてCS放送が映ったときはえらく感動したのを覚えている。
月々3,000〜4,000円ほどで20ほどのチャンネルが観れたはず。
主に観てた音楽チャンネルはスペースシャワーTV、VIBE(現MTV)、Viewsic(現M-ON!)の3つ。

まだブロードバンドやiモード登場前夜でYoutubeはおろか音楽配信も無かった世紀末1999年。
地方在住ではJ-WAVEやFM802のようなエッジの効いたFMラジオすら聞くことができない。
フジロックに出演するようなオルタナティブなアーティストの曲を聴くには、ロッキンオンやスヌーザーといった音楽雑誌の情報を頼りに、タワレコでCDを買ったりツタヤでCDをレンタルするしか手段がなかったのだ。

それが家のTVで四六時中好きな音楽に触れられる。
いち早く新曲PVが観れたり、特集でレジェンドアーティストを学んだり、好きなアーティストのライブ完全生配信には本当に興奮した。

何よりこの年から会場を苗場に移して開催されることになるフジロックの事前特集番組はフェスの期待感を何倍にも増幅させてくれた。
余談だけどこの番組がきっかけで観ることになったホワイトステージのアンダーワールドのライブは満月に満点の星空、流れ星がビュンビュン流れる中での最高のステージで、四半世紀近く経った今でも思い出すと震えてくる。
多幸感で「このまま死んでもいい」とさえ思えた人生ベストアクトで、この経験で僕は20代の熱情全てをフジロックをはじめとするフェスカルチャーに注ぎ込むことになるのであった。

まさに「スカイパーフェクTV」とは宇宙空間の人工衛星から大好きな音楽が降り注いでくる革命だった。
それにしても「スペースシャワーTV」って本当に秀逸な局名だなと思う。

当時高校生だった弟と観に行ったスペシャ主催、電気グルーヴとコーネリアス2マンライブ

中でも毎週喰い入るように観ていたのが各局のVJ達が凌ぎを削ってやっていた音楽情報番組。
スペースシャワーTVはブライアン・バートンルイス、VIBEは井出大介やサッシャ、Viewsicではジョージ・ウィリアムズなどVJは当時みんな20代。
最先端のカルチャーを教えてくれる兄貴のような存在だったな。
今でも彼らが様々なメディアで活躍している姿を見ると嬉しくなってしまう。

音楽以外のチャンネルにも多大な影響を受けた。
中でも凄かった局がso-netチャンネル。
様々なカルチャーを3分の尺で紹介するコーナーを立て続けに1日中流す「3分番組」の影響で、ロシア産トイカメラLOMOを買い、グレイトフル・デッドのデッドベアを集め、60年代のワーゲンバスまで乗り出すようになってしまった。

結局4年ほどでスカイパーフェクTVは解約してしまったけれど、今でも聴いている音楽は多感だったこの時代に聴いていたものが多い。
洋楽だとグリーンデイ、レッチリ、レディオヘッド、フーファイターズ、ウィーザー、プライマルスクリーム、オアシス、ブラー、ベック、ケミカルブラザーズ…
邦楽だとミッシェルガンエレファント、ブランキージェットシティ、電気グルーヴ、コーネリアス、サニーデイサービス、Tokyo No.1 Soul Set、フィッシュマンズ、ナンバーガール、スーパーカー、くるり…
次々とアーティストの名前が思い浮かぶ90年代から00年代初頭のオルタナティブ全盛期は、音楽が一番楽しかった時代かも知れない。
若かったのはもちろんのこと、情報が少ない時代だったからこそ、何でもかんでも吸収してやろうという貪欲さもあった。

もう十数年も行っていないけれど、その年のフジロック出演アーティストのラインナップがネットニュースで流れるこの季節になると、毎日テレビの前でワクワクしてたあの頃を思い出して少しエモーショナルな気分になってしまうのだった。

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やっこ
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