第1844回 ツバメの越冬
①https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784034373903より引用のツバメ(体長約17㌢)の飛翔のイラスト
①のイラストのツバメといえば、私はいつも愛着心を持って、春先の三月半ばになりますと、まだかまだかと越冬しているツバメの到着を心待ちにしています。何しろ、体長約17㌢の小さな身体で、東南アジアや、フィリピン、インドネシア、台湾から、はるばる三千㌔という途方もない距離から、生まれ故郷の日本、それも生まれた都市、市町村をピンポイントで帰ってくるのです。到着は当初はすべてオスだといいます。オスが前年の営巣を確認して、つがい相手のメスを待ち望みます。相手が帰って来なければ、他の相手を探して繁殖を行わないといけません。過酷な渡りです。
②https://www.advan-group.co.jp/times/tsubame_sudukuri/より引用のツバメの営巣
もう何回もツバメの記事を書いていますので、ツバメがなぜ日本に渡ってくるのかはご存知だと思いますが、春先に帰ってきて、繁殖し、子育てして幼鳥から若鳥になる秋口まで、生まれ故郷の日本に滞在します。なぜ春先に日本に帰って繁殖するかは、この時期にツバメの主食である虫が出てくるからです。スズメやハトも普段は植物食ですが、繁殖期には動物食を捕獲し、早くヒナから幼鳥、若鳥と育てなければならないからです。それだけ虫は高カロリー、栄養豊富な食糧なのです。
③https://www.tsubame-map.jp/tsubame-zukan/etto-tsubameより引用のツバメの越冬地の地図
春先にやってきて、ひとつがい二回の繁殖し、子育てを終えた秋口には、日本には餌となる虫たちも姿を消します。「餌がなければ、餌のある地域に行かないと死んでしまいます。だからツバメは虫がいる暖かい地域に移動します。それが渡りです」と小学校で教わったことを覚えています。今もそうですが、春先生まれ故郷の日本に戻って来て、秋口には日本を離れるツバメはやはり昔から私たちの身近な野鳥でした。越冬地は③の図のように複雑みたいですが、大体①の項で紹介致しました地域が越冬地となります。また当たり前に、ツバメは日本だけで繁殖する鳥でありません。
④-1.https://www.agara.co.jp/sp/article/75348より引用の街中の電線に集まるツバメ
④-2.https://www.advan-group.co.jp/times/tsubame_sudukuri/より引用の渡り前に葦原でねぐらの中のツバメ
越冬のために渡りを行う時が来たツバメたちは、街中の民家で営巣させて頂いたひとたちにお礼を言うかのように、④-1.の写真のように、街中の電線に親鳥を始め、日本で育った若鳥や一族が時が経つごとに集まります。本当に日本で繁殖させて頂き感謝してますみたいに…この光景を毎年見るごとに、来年も元気に戻ってこいよとエールを送りたくなります。渡りの時には街中を離れて、天敵の多い郊外の虫が多い葦原にいくつものグループが集まり、たっぷりと虫を食べて、長距離の渡りに備えます。また、④-2.のように集団で警戒しながらも、葦原でねぐらを組み渡りに出発します。
⑤-1.https://www.tsubame-map.jp/tsubame-zukan/etto-tsubameより引用の越冬先でのツバメのねぐら
越冬のため日本を離れたツバメの渡り先は様々ですが、台湾より南の地域で、東はインドネシアから、南はインドや西アジアのほうまで続いています。また、日本で見るツバメは繁殖のため、民家の軒先で営巣しますが、越冬地では繁殖はなく、⑤-1.の写真の様に、一時期の日本に於けるムクドリの様に、街中の電線に集団でねぐらにします。またツバメには越冬のために渡るツバメばかりではありません。森昌子のヒット曲「越冬つばめ」がありますが、渡りでなく日本に留まります。
⑤-2.https://www.tsubame-map.jp/tsubame-zukan/etto-tsubameより引用の宮崎市の店舗の軒下の竹棒の上に越冬ツバメ
特例として、渡りをせずに⑤-2.の写真のように冬を越すツバメがいます。冬でも温暖な九州地方の、特に宮崎県と鹿児島県では越冬ツバメが普通に見られるようです。冬は寒くなる本州でも、大きな川や湖沼のそばでは冬でも飛翔性昆虫が発生するため、少数のツバメが越冬している場合があります。2017年のことですが、日本野鳥の会宮崎県支部の支部報の4月号に「宮崎市内で1月2日にツバメのヒナが孵った」との記事が載ったそうで、まだまだ、ツバメの越冬は不明点がある様です。