瞳の中3


沢山の卵を机の上に並べる。
じっと見つめて、一つ一つに挨拶をし、
その一つを手に取り、
用意したお椀の中に割っていく。

シャカシャカと混ぜる。
料理をし始めたのだ。

この卵は金色のゾーンにいた子達。
大きな卵は持ってきていたが、
他の卵も気になったので、
カゴを持って小走りで戻った。
カゴいっぱいになるまで卵を入れてきたのだ。


カチチチチ


コンロに火をつけフラインパンをのせる。
フライパンに油をひいて、溶いた卵を
入れる。

ジューーーという音と共に
油の匂いが広がる。

フライパンの様子を見つつ、
鍋を取り出し
その中に水を沢山入れる。

もう一つのコンロにも火をつけ
両手で鍋をもち、よいしょと置く。

料理に集中しつつ、鍋が沸騰しないか
チラチラと見る。



すると、足元にパタッとなにかが当たった。
あの1番輝いていた大きな卵の殻だ。
そういえば料理をするので、
この卵は足元に置いといたなと
思い出したと同時に、
声がした。


「何か手伝うことある?」


もう一人の自分だったのだ。


はじめましてとこんにちはが同時に来る感覚、存在。
そして自ら殻を破ってきたんだ、と。


「そしたら、鍋が沸騰するまで見ててくれない?」


そういうともう一人の自分は
自分の右側にある鍋の前に移動した。


フライパンからのパチパチする音。
鍋のぐつぐつ、ぐつぐつ
水からお湯に変わる音。慣れ親しんだBGM。


「はじめまして。」

「はじめまして。」

「会えたね。」

「会えると思ってたよ。」

「同じ事思ってたよ。」

「よろしくね。」

「こちらこそ。」

「まだ沸騰しないね。」

「もうすぐだよ。」

「それは安心だ。」

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