【ドラマ「大奥」感想第4回】時代から取り残される者
家光、有功編が続きます。
今回は、女家光との間に子ができない有功がお褥すべりをさせられ、代わりに大奥入りした捨蔵(お楽)との間には子ができ…という話で、メインは有功の苦悩、同じ想いを抱くようでいて微妙にずれてきている家光との関係性だったかと思います。
家光が女将軍として確立していく回でもありました。
赤面疱瘡が猛威をふるい、いよいよ日本中の男子の人口が激減していきます。
庶民は家業を父親から娘に引き継いでいく世の中になっています。武家はというと、娘が男装し、男名を名乗ってお家取り潰しを免れようとする状況。
「女が家督を継ぐことを認めては」という幕閣の意見に「民百姓と違う!武力をもって成り立つ武家の家督に女子を据えたら、世は乱れ、戦乱の世になってしまう(大意)」と言う春日局。
赤面疱瘡で変わる人口という差し迫る問題に対し、戦国時代に逆戻りするリスクを心配するのは非現実的です。
後世からこのエピソードを語るご右筆の村瀬は「時代から取り残される者」と表現します。
その後のシーンで、病に倒れた春日局から、明智光秀の家臣の娘として生まれ、本能寺の変が起こって命の心配をしながら逃げ続けたこと、戦で多くの民百姓も犠牲になったこと、徳川家康が戦乱の世を終わらせたこと、だから何としても徳川の世を守りたいことが涙ながらに有功へ語られます。
私は、ここに「時代に取り残されたと思われた側にも、思いがある」「過去の記憶が風化しているから、未来の人間から一方的にそう言われてしまう側面もあるのでは?」という示唆を感じました。
ドラマでは尺の問題なのか、女性が家督を継ぐ問題に絞られ、女家光が表舞台に立つところで今回が終わります。
原作では、華やかな菊見の宴を催した有功を春日局がとがめても、誰も言うことを聞かないという場面が出てきました。
ここで「この大奥に一生捕われ、日々を過ごす者達がせめてもの慰みに一夜皆で菊を愛でる事のどこがいけませぬのか!?」と有功は言い放つのですが、その直後「しかし有功のこうしたやり方は後に大奥を華美に贅沢に幕府の金食い虫に変貌させてゆくのである」というモノローグがはさまれます。
リスクの考え方、予算の抑え方、いずれも現代の政治・行政にもつながる問題です。
原作、ドラマとも「どちらが正しい」と言いきらず、多面的な見方を見せる。「大奥」はそういう作品なのだなと思うのです。