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クソ女がぬいペニを考える

 令和ロマンの松井ケムリ、一見とても可愛いがよく見ると怖い。

 熊のような体躯にふっくらと優しげな顔立ち。漫才中に淡々とボケを処理する様子は素晴らしく、Youtubeをチラッと見た限り、舞台上と変わらず感じの良いよく笑う好青年といった感じ。しかし、じっくりと見ると、彼の若さ、能力の高さ、パワーが分かってしまい、「かわいい」から遠ざかっていく。M-1の舞台では面白くてふくふくとした可愛いあんちゃんだった彼が、横浜市青葉区出身、慶應法学卒の大和証券副社長のご子息だと分かったら、「日体大フェイス」が悪い方向に見えてきて、YouTubeのブリッジの「俺〜!」でも目の奥が笑っていない気がしてくる。

 もちろん松井ケムリが悪いわけではない。彼が悪酔いしている動画を見つけて、興味本位で視聴してしまった私が全面的に悪い。

 ナイチンゲールダンスの中野なかるてぃんにも同じようなことを思った記憶がある。彼らの芸風の緻密さに気付き、ふざけたキャラクターを演じてくれているだけでめちゃくちゃ計算高いじゃん、とふと気づいてしまう。
 自分に「かわいいと思った芸人がよく見たら怖い」が起きるたびに、IPPONグランプリで千鳥の大吾が自らの過去のプレーを回顧して「人を笑わせる顔をしちょらん」と評したのを思い出す。芸人は、舞台上でわざわざ「人を笑わせる顔」をしてくれている。そして、それは不断の努力の上に成り立っている。松井ケムリも、中野なかるてぃんも、私が穿った見方をしない限り「かわいくて面白い芸人の兄ちゃん」で、そう見えるように彼らはエネルギーを費やしてくれている。こんなことを書いて申し訳ない。本当にありがたいことだ。元々、人間なんて大してかわいくないからね。

ぬいペニを考える

 バキ童チャンネル、年始早々ヘビーな話題を展開していてしびれた。
動画内で説明されているが、ぬいペニ現象というのは、友人男性が性欲を向けた瞬間に女性が気持ち悪いと感じてしまう現象のことだ。

 私個人としては、この現象、めちゃくちゃ身に覚えがあって胸が痛い。別に、「ぬいペニよーッ!」と叫んで去ったということはないので相手がどう思ったかは知らないが、こういった恋愛の上手くいかなさで、男性側も大変な苦痛を感じたであろうことは察することができる。申し訳なかった。成仏してください。

「ぬいペニ」も「蛙化」も女の外れ値

 とにかく知ってほしいのは「ぬいペニ」や「蛙化」は多くの場合、非モテ男性のアプローチのせいではないことだ。会話に不自然にエロを織り込んだり、セックスしたいと仄めかす、もしくは女を物として扱う魂胆が透けてしまった、といった悪いペニスの出し方の場合は、すべての女性側が裏で「急にペニ出ししてきて無理だった」と言います。やめてください。
 しかし、それ以外の場合、まともな女性が言うのは「私が受け入れられなかった、申し訳なかった、いい人だから他で幸せになってほしい」だ。中流大学卒以上の中流企業以上社会人の場合に限るかも知れないが、女性は相手のペニを受け入れられないのは自分の問題だと分かっている場合が多い。当事者として、裏側をよく聞く立場として、私はその体感がある。

 男性のアプローチの仕方がどうであろうと女が受け入れられない時があることを理解するのは、男性にとっても悪いことではなかろうと思うので説明しておく。みなさんご存知の通り、女体に生まれるとかなり見下され肉体を求められる機会が多い。同僚上司からセクハラをされているとか、前の彼氏に酷いセックスを強要されたりモラハラされたり、普通の女にカジュアルに起きる。こういう背景から、女性には性的なものが本当に不愉快なタイミングがある。飽き飽きで、場合によっては軽いトラウマを抱えている。妊娠する方の性であるためか、それらの嫌悪感が同じ被害を受けた男性の場合より過敏である場合もある。そのタイミングの女性が「蛙化現象」や「ぬいペニ現象」という過敏な反応をしてしまう。
 だから、本当に、非モテ男性のあなたのアプローチが悪いわけではない。その女性を過去に傷つけたペニが悪くて、その傷が癒えていないことを無自覚にあなたと恋愛関係を築こうとした女性が悪い。大抵あなたは悪くない。
 そんな一人の女性の一時の態度は「外れ値」として気にしない方がいい。実験で言えば無視していい点、エラー。この点に固執して分析していても「女性と関係を築く方法」の傾向を理解しようというのは難しいのは理論的に理解できるでしょう。感情的に難しいのは重々承知だが、その女性は抜いて女性を分析してくれ。

外れ値のイメージ。
外れ値は赤の点、緑が傾向をもつ点。Wikipediaより引用

 あなたが悪かったのは、月並みだがタイミングだ。あまりにも信じられない回数でぬいペニで振られる、という場合はあなたが嫌なペニの出し方をしている可能性もありえなくはないが、あなたの周りの女性を嫌な目に合わせているペニがあまりにも多いのかもしれない。社会から女性の性に関わる精神的・肉体的被害を減らすことが根本の解決になるかも知れないが、ちょっと一人の男性だけが担うにはきついと思う。
 「俺は君にペニを出すけど、君が嫌ならペニをしまうよ」というごくあたりまえの態度が通じる女性と信頼を築くのが恋愛工学としては効率的なラインではなかろうか。あなたをぬいぐるみと思いたい、かわいいかわいいと言ってくる女は今、性的なものに潔癖すぎるタイミングかもしれない。あなたからペニを奪おうとするかも知れないのだ。

ペニは花束じゃない

 動画の後半に、「ペニを出さなかったら女性に怒られた。性的な目でみないことを軽蔑されたと捉えられて関係を進められなくなった」というエピソードがある。この女も「外れ値」で傾向から取り除いていい。ていうか、こういう、ローカルルールの同意で性行為するの、本当に面倒くさい、なくなって欲しい悪しき文化だ。言語外のことを感じ取れない発達障害者に優しくなさすぎるし、そのせいで「これはオーケーサイン!」というさらなるローカルルールが作られてレイプ文化に発展している現状、溜まったもんじゃない。もっとバリアフリーにセックスをさせろよ。

 「性的な目でみられないことを屈辱に感じる女」は外れ値であるが、実際に私の知人もこれに悩まされていた。その女がたまたまペ二をありがたいものだと信仰している男根主義者で、与えられなかった自分を悲観してるだけだ。確かにこの場合、男性側の罪悪感ははかりしれないと思う。重ねていうが、本当に男性側は悪くないです。"ヤリモク"ではない場合、関係値を深めてからペ二を出すのが常識的な振る舞いです。あなたは間違っていない。
 そして、男性もプレッシャーでペニを出さなくてもいいんだよということを伝えたい。
知人は、経験から「ペ二を出すのが苦手で、また女の人を傷つけてしまうかも」と悩んでいたが、気にするな。性的なことは男から、女にOKだと仄めかされたら襲わないと恥、というのも悪しき風習だ。タイミングなんてカップルごとで話し合え。話し合えないやつとセックスって、人間としての順序おかしいだろ。知人には、「お前、自分のペニを花束かなにかと勘違いしてねえか?驕るなよ」と励ましの言葉をかけている。

「ノットオールメン」を叫べる権威性

 蛙化とかぬいペニは、勘違いして悲観的になる男性も愚かだが、助長している女が悪いよと思う。妊産婦の「ガルガル期」とか母親業の「上の子かわいくない症候群」とかも含めて女性は特別で個体差の大きい状態の話を「あるある」として一般化しすぎているきらいがある。いや、妊娠中や育児中のあるあるというのは当事者にとってはとても大事なコミュニケーションで、それを作ることに異存はない。問題は、特殊な状態のあるあるを外部に啓蒙する必要、なくね?ということだ。
例に出したガルガル期や上の子かわいくない症候群はママ界隈だけで話していたのが漏洩した不幸な例なのかもしれないが、蛙化とぬいペニについては言い逃れはさせない。
5,6年前に密かに心理カウンセラーの相談でみつけられた蛙化という言葉がこんなに一般化したのは「彼氏が⚪︎⚪︎して蛙化したわ🐸」と、インフルエンサーをはじめたくさんの女性のカジュアルな誤用が流行ったからだ。
 蛙化の誤用は最早男女構わずが面白がってネタにしてる部分もあると思うが、その前には「女の子ってそういうものだもん!しかたないんだもん!」という無闇な同一化ムーブがあったのを私は体感している。デートサイゼ論、4℃プレゼント論のような無意味な闘いにも通じるが、この「女ってこうだもん!」というデカ主語型ハメを女が自分に課す感じ、本当にご勘弁いただきたいのだ。ぶっちゃけ大迷惑なんですよね。

 最近は、主に性犯罪の文脈で男性が「ノットオールメン」「俺はそんなことしない」と表明するのを見かける。それが個々の文脈上噛み合った答えなのか、隙自語乙なのかはここでは判断できないが、この「それってみんなじゃないよ」ってメッセージは正しさを持っている。
ずっと「女はみんなこうだよな」って型に長年嵌められてきた抑圧のせいで、「違う、女はみんなこうだもん!」と同じく女全体を型に嵌めて対抗する闘い方を覚えてきたのかもしれない。そうすることで団結して、権威を持っていた男を納得させようとしてきた。しかし、現代においては、型にはめることで女の多様性を自ら否定して首を絞めているように思う。男は女より少し早く多様性を認められたという権威性をもって「ノットオールメン」と叫んでいる。女も「ノットオールウーメン」していい。

 特に、ホルモンバランスと被害者性によって特殊状態に陥りやすい私たちだから、「今の私は普通の状態ではありません!」「女がみんなこうではないよ!」を理解して伝えるのが双方にとって親切だと思う。特殊な状態を単語に落とし込みバカの一つ覚えみたいに使うのは、コミュニケーションを無くし"断絶"を作り得る。男は型を基にして相手の女の本質的な部分にたどり着けず、女は「女ってこれがいいんだろ」と型をおしつけられ永遠に個体認証されない。コミュニケーションをサボって「蛙化しちゃった」「ぬいペニだわ」「ガルガル期だから」って、女に損しかないように思う。

非モテこそ話をしよう

 陽キャほど言葉じゃなくて雰囲気でいいでしょとかキャッチーな言葉で済ませようとしますよね。
これも無闇な一般化で、その実、なんとなく仲良く楽しく男女関係を構築できている層は大して言葉を尽くさなくても問題が起きていないという話だと思う。問題が起きてないならキャッチーだろうがフィーリングだろうがいいんじゃない、という感じだ。
 一方で、非モテで困ってるとか、異性に嫌なことをされがちだとか、そういう恋愛弱者は男女一般論やフィーリングでどうにかなってない現れですよね。それを男女一般論やフィーリングで乗り切るのは無謀だと理解してもらえるだろうか。それなら、異性絨毯爆撃ではなく、各個撃破しかないだろう。話の通じる相手を見つけて、自分がして欲しいこと、相手が嫌なこと、話をして注意深く行動していくしかないんじゃないか。陽キャがフィーリングでセックスするなら、陰キャは文字数で稼いでロジカルにセックスしようじゃないか。

 ここまで提案して話を膨らませておいて、話が通じる相手の見つけ方がまず分からなくて私も実際に困っているんですけれどね。
 モテ工学の権威の方々が、オーナーサインや三回目のデート神話を捨て、「相手の話を聞きましょう」「自分の話をしましょう」という原始のコミュニケーションに立ち戻ってくれるのを待っています。

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