湯川温泉龍王閣のおばちゃんは優しかった
道の駅氷見にある氷見前寿司に開店と同時に飛び込んだ
北海道の根室はなまるやトリトンと肩を並べる美味さだ。
たらふくいただき、本日の一つ目のミッション・コンプリート。
さあ、いよいよ、秘湯湯川温泉龍王閣を目指す。道の駅から車で約1時間。富山湾の向こうにうっすら冠雪した白馬岳を眺めながらの爽快なドライブ。
私が今から訪れる竜王閣を知ったのは、高橋一喜氏の日本一周3016湯の書籍だった。「秘湯系宿。ラドン温泉は個性的な濁り湯」とある。
この日の最終ゴールは和倉温泉で唯一の掛け流しの「花ごよみ」さんに宿泊してそこのお湯を楽しむことなのだが、その前のお楽しみとしてのスペシャルイベントなのだ、そうなのだ。
実は、私は、そのいかめしい名前「龍王閣」から、富山湾を見下ろす断崖絶壁に建つドラキュラ伯爵の館みたいな建物を勝手に想像していたのだけれど、ナビに案内されてたどり着いたのは、なんてことのない、のどかな田舎の一軒家だった。
駐車場の案内がなかったので(実際は施設の下に大きな駐車場がある)、とりあえず建物の前に乗り付ける。停まっている車は1台のみ。(これは、おばちゃんの車とのちに解る)
玄関扉をガラガラと開けて「こんにちは〜」と挨拶すると、あらあらと言いながらおばちゃんが現れた。
「入れます?」と私
てっきりウエルカムと思いきや、「あ〜今から閉めて病院行こうと思ってたんよ」とおばちゃん。これってダメってこと?せっかく神戸から430km走ってきたのに・・・と万事休すかと思いきや、事態は思わぬ展開に。
そんな長いことはいらんやろ?せっかく来はったんやから、まあ、入っていき入っていきいきと気遣ってくれる。優しい。
え、いいんですか、じゃ、すぐ出ますんで。と首の皮一枚繋がった私は大喜び。
「男湯があちらで、女湯があちら・・・」
「あ、今な、女湯の蛇口が壊れとって、お父ちゃんしか直し方わからんのよ。うちは料理は全部私がやるんやけど、お風呂のことはわからんでな。で、いっぱい浮いてる(湯の花のことだと後に解る)けど、お湯は新しいお湯やからね・・・と、すこし状況把握が難解な展開になってくる。
よくよく聞くと、どうやらご主人が庭の木の手入れをしている最中、脚立から落ちて骨折、近くの病院に入院されたらしい。そのお見舞いに行こうとしておられたところに我々がお邪魔したようだ。
そのご主人が湯守でおばちゃんが宿の食事などの切り盛りをされてるのだ。だからお湯の状態はわからないけど、かけ流しだからいいお湯よと言っておられるよう。
時間があれば、いつまでも話を聞いていたいけど、おばちゃんも急いておられるのでそうはいかない。1人600円を支払って、さあ、本日のミッションスタート。
ワクワクドキドキ。
浴槽を見て驚いた。ものすごい量の湯の花だ。「湯の花が多いので、仕方なく漉している」みたいなことをどなたかのブログで読んだような記憶があるが、実際見てみると、量が多いてなもんじゃない。夥しい量だ。私自身、そんなにいろいろな湯に浸かった訳ではないが、ここまで湯の花が舞ってるのは初めてかもしれない。こうなると、まるで湯の花スープだ。
湯口のライオンの口からラドンを含むナトリウム・カルシウムー塩化物泉がこれでもかというくらいかけ流されている。
ラドン含有は北陸では珍しいという記述があった。そうなのか。
(というか、そもそもラドン温泉については、別の投稿でいろいろ議論したい。
浴槽は3人入ればいっぱいくらいのちょうど良い大きさだ。
どなたも入って来ないことがわかっているので、短い時間であったけれど、思い存分楽しませていただいた。
湯を堪能して退散しようとすると、おばちゃんが出てきて、私に、「急がせてごめんね、ほんまにごめんね」と100円を返却しようとしてくれる。
「いやいや、そんな、こちらこそ、いやいや、いやいや、いやいや・・」とやりとりするも、結局手の中にコインをねじ込まれて帰ることに。
なんだか、こちらが無理くり押し込んだ感じなのに、めちゃくちゃ恐縮してはるおばちゃんが一気に好きになり、次回はここに泊まってもいいかなと思わせる、ほんわかとした正しい秋の北陸路。
玄関を出て振り返ると、そこには、しっかり臨時休業の札がかかっていた。
我々が車のエンジンをかけた時、下の駐車場に一台の車が滑り込む。はてさて、おばちゃんはご主人のお見舞いに行けたのか? ちょっと心配しながら、目的地の和倉温泉にむかったのであった。
この投稿は、2022.10.21の情報です。
湯川温泉 龍王閣 (日本温泉遺産指定)
0707-58-1117 火曜休み
七尾市湯川町47-35-1
600円