Oenothera. #3
アピスが起きたことを確認した後、狼は夜に咲く花を求めて移動した。
月夜に開く花を求めて。
その香りをたよりに、時には何時間も狼は走った。
今夜は宵待草の咲く草原にたどり着く。
アピスが花の蜜を吸うと一つ、心揺れる景色を見てまた、一節と歌が生まれた。
うたうことで自分が何者であるか、というかけらを反芻できるような気がして、生まれるままに歌にした。
気のせい、かもしれない
歌う度に、あの夢のつづきや記憶がぼんやり近づいてきているような感触がある
花探索は夜にした。
誰もいない草原での蜜吸や歌唱は大変心地よい、大好きな時間だった。
その美しい歌声に誘われ、時々訪問者はどこからともなく現れた。
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ヒグチヨハクです。小説「planktos」連載中。よろしくおねがいします。