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うちの猫のこと③

晴れて猫を飼っても良い人認定された私は約束の猫の元へと向かった。

改めて見るとデカい。
うちの先住猫は元々体が小さい上、もう老齢なので痩せている。
先住猫のサイズに慣れていたので、やたら大きく見えた。

普段病院に行く時に使っているバスケットを用意して行ったのだが、いざ入れてみようとすると、なんと太っていて入らない。
先住猫は余裕で入れるサイズだったのでまさか入らないとは思っていなかった。
無理やり詰めるわけにもいかないし、うーん困った。
しかしそのまま車に乗せるのも逃げてしまう可能性を考えると危なくてできない。
愛護センターの人と相談し、段ボール箱に空気穴を開けて使いましょうということになりセンターの人が箱を用意してくれた。

紆余曲折を経てようやく帰路に着くこととなったが、ここからロングドライブである。
後部座席に猫入りの箱を乗せシートベルトで固定した。
箱の中の彼は不満と不安でずっと濁声で鳴き続けていた。
私は1分でも早く家に着かなくちゃと思い、行きは節約して使わなかった有料道路を使い休憩も挟むことなく運転し続けた。

その間、彼は箱の中がどうにも嫌らしく空気穴からこちらを覗き、バリバリと箱を引っ掻き続けていた。
私は「ごめんねー、もうちょっと我慢してねー」と声をかけながら運転していた。
彼は尚もバリバリと箱を引っ掻き続け、空気穴だった小さな穴がどんどん広がっていくのがミラー越しに見えていた。

これはまずい。

そして家まであと1時間くらいの距離になった頃、ついに箱の外に出てしまったのだ。

困る。

でももう出てきてしまったものは仕方ない。箱に戻したところで既に猫が出られるサイズの穴が空いているので意味がない。
しかも高速道路を走行中。停る事もできない。このまま家まで行くしかない。
ドアと窓のロックを再度確認して、もう好きにさせておくことにした。運転の支障になる位置にだけ来ないでくれよと思いながら家路を急いだ。

一方ようやく箱から脱出した彼はここにきて初めて「にゃー」と猫みたいな声で可愛く鳴いたのだ。
もともと人に飼われていた猫である。甘えればなんとかしてくれる事を知っている。
怖がる事なく膝に乗ってきたりして可愛いのだが、しかしこっちはそれどころでは無い。足元に降りないように牽制しながらとにかく事故らないように必死だった。

車内をウロウロする彼をなんとかいなし、ようやく家へと辿り着くと、玄関先には父。
そう、待っていたのだ。完全に歓迎ムードである。
トイレもご飯のお皿も前の猫のお下がりではあるが既に使える状態に準備されていた。
先住猫が嫌がるから…とは言っていたが、人は嫌がっていなかった。

そうして彼は一時預かりという形ではあるが我が家の一員となったのだ。



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