うちの猫のこと②
妙な経緯で引き受けることとなった迷い猫の飼い主探しは行き詰まっていた。
問題が起こった以上、他者を巻き込むことはもうできない。
しかし、乗りかかった船である。もう乗ってしまうことにした。
一旦自分で引き取って、その上で飼い主を探すことに決めた。
うちにはその時すでに老齢の猫がいて、しかも猫嫌いときていて、家族にはあまりいい顔をされなかったが、一時的に預かるだけだと説得し動物愛護センターへ連絡をした。
「次の譲渡会は○月○日なんですが、場所が〇〇市なんです」
遠い…
車で3時間近い距離。長時間移動に猫は耐えられるのだろうか。
でももう仕方ない。私は行きますと答え、猫は予約済みとなった。
譲渡会の日、私は全く土地勘のない市の会場へナビを頼りに向かった。曲がり損ねたり、通り過ぎたりしながらなんとか時間に間に合って会場へと辿り着いた。
会場の建物の外にはたくさんの犬たちが居て、犬の引き取りを希望している人たちが思い思いに犬たちとコミュニュケーションをとっていた。
私が受付で事前に連絡をしていたことを告げると係の方がネコちゃんこちらですと案内してくれた。
ケージの中の彼は人懐こいらしく人が通るたびに可愛くない濁声でびゃあびゃあと鳴いていた。「私たちはニャジラくんて呼んでます」と言われた。なるほど。
写真で見ていたよりも太っていて顔がまん丸だった。
譲渡会というのは「この子にします」「はいどうぞ」という単純なものではない。引き取るのに充分な資格があるか人間の方が篩にかけられるのだ。
動物の寿命に合わせて人間の方に年齢制限がある。高齢者の場合は引き継いで飼ってくれる人が居ないと引き取ることができない。
そして動物が安全に健康に暮らせる生活環境を有しているか、世話をするのに充分な経済力があるか、そもそも動物を飼ったことがあるのかなどいろんなことをチェックされる。
そして動物を飼っても良いと認定された人だけが引き取ることができる。
この時、愛護センターの活動内容や保護の現実、殺処分についてなどの講習を受ける。愛護センターに連れて来られる動物の中で最も多いのは野良猫や野良犬ではなく、飼い犬や飼い猫だそうだ。
私は動物愛護センターでは働けないなと思った。クソみたいな理由で捨てに来られたら多分その人のこと殴っちゃうと思う。少なくとも胸ぐらは掴むと思う。
そんなこんなで引き取っても良い認定された私はワクチン代を支払い、晴れて「ニャジラくん」を引き取ることになった。