うちの猫のこと①
私は飼い猫の正確な年齢を知らない。
マロンがうちにやって来たのは7年前、すでに成猫で当時の推定年齢は5歳。それが正確だとしたら12歳だし違っていても10歳は超えているはずだ。
彼との出会いは非常に奇妙なものだった。
ある日、会社のSNSに「おたくの会社の近くで保護された猫の飼い主を探してほしい」という内容のDMが届いた。
どこの誰とも知らない全く無関係の第三者から。
動物愛護センターに保護されているが、もうすぐ保護期限になりその前に飼い主が見つかるか譲渡先が見つかるかしないと殺処分されてしまうから協力して欲しい、ということだった。
そしてその猫の紹介ページにリンクが貼ってあった。
見ると青い目の可愛らしい猫だった。
ハーネスをつけた状態で保護されていること、毛艶も良くやや肥満気味であること、去勢済みであることから考えて、おそらく室内飼いで捨てられたわけではなさそうだった。
ちゃんと大事にされていた様だから飼い主も探しているだろうと思い、私はその唐突な依頼を引き受けることにした。
ちゃんと飼われていた猫ならすぐに飼い主が見つかるだろうと思ったのだ。
去勢されているということは病院に行っているはず。保護されたエリアから推定して利用者数の多そうな病院に張り紙をさせてもらうことにした。
そして個人のSNSでも呼びかけをした。
中には協力を申し出てくれる人もいた。
しかし何の手がかりも掴めないまま、日々は過ぎていった。
そんな日々の中、張り紙をさせてもらっていた病院から連絡があった。
苦情だ。
どこの誰かは知らないが、病院に乗り込んだ輩がいたそうだ。
患畜の飼い主のリストを見せろと迫ったらしい。飼い主が見つからずに猫が殺処分されたら病院も同罪だとかなんとか。
甚だ迷惑である。歪んだ正義ほど厄介なものはない。
私は速攻で菓子折り持って病院に行き、誰か知らん他人の愚行を詫び、飼い主探しの張り紙を外した。
SNSに飼い主探しをやめたこと、記事を拡散しないで欲しいことを投稿し、協力してくれていた人たちに事の顛末を話し、この件は私一人の預かりとさせてもらった。
しかし、どうしたものか。
SNSに反応がないことから見てSNSをやらないか興味のない年代なのか、病院で手掛かりが掴めないのはそもそもこのエリアの住人ではなく旅行中に逃げられたということなのか、もしかして飼い主が亡くなって家から脱走したとか?
いろいろ考えてはみるものの事態は進展せず保護期限は迫っていた。