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アーヤトッラー・ホメイニー(資料7)

イランは、私にとって人生を変えられた国だ。

まず、ホメイニー師の出立ちが、小学2年生の頃から気になって仕方なかった。1979年のイラン革命の時、父の転勤で米国に住むことになった。米国には、師の顔を色々な場所で見かけるようになっていた。今考えると同年11月には、イランアメリカ大使館人質事件が起き、大変な時だったので当然と言えば当然だ。しかし、そんなことは知らず、小学生の私にとって顔に髭いっぱいにの大きなターバンを頭に巻いた顔は興味津々!

「いったいこの人は、どんな人なんだろう?」

とずうっと考えていた。そのため、小学生の頃の国語の教科書の芥川龍之介や石川啄木の顔は、皆ターバンと立派な髭を生やし、ホメイニー師に変身していた。

その後の思春期でも、ニュースなどでイランのニュースが流れると「米国に死を!」とすごいデモなどが行われているので、この気概のある国が常に気になって仕方なかった。さらに中東全体が、どんどん興味を持つ地域となっていき、イランは、自分にとって最も異国感漂う行ってみたい国となっていった。そして1994年、ついにイランに行く機会が誕生した。

1994年のイスファハン

世界一周旅行をする上で、米国から日本への横断の途中にこの国は欠かせなかったからだ。奇しくも、この前の年に仲良くなった女性がイラン人だということにも運命を感じてしまった。(後にこの女性に片思いするが失恋)

また、この国でホスピタリティーとは、どういうものかというのを体験した。人は、こんなにも見知らぬ人に親切になれるものなのかと、驚愕したのを覚えている。東欧やトルコでも、そこそこ親切にされながら旅行していたが、このイランという国のホスピタリティーは、私の知っている人間の「親切心」のキャパを越えていた。この時以降、困っている人には、親切にしようと生き方を変えるようになった。

さて、そんな国の元首モノである。当然、この七つの資料の中でも、格別な想いがこもっている。何せ小学2年生以来の憧れの師で、人生を変えた国なのだから。しかし、友人のイラン人に聞いても、ホメイニー師のポスターをどこで売っているか知らない。まあ、アメリカに住んでいるので、それも当然だ。必然的に、私のテヘランでのミッションは、元首モノを探すことが最優先課題となったのは、言うまでもない。

今回の元首モノも、アタチュルク同様「ホメイニーコレクション」として、1994年当時に収集したもの以外のイラン関連モノを、この資料7のコレクションとして収蔵する。ただし、今回はホメイニー師以外の人物も、イラン関連の資料7として扱うこととする。

GM0044

GM0045:ホメイニー師とハメネイ師(ポスター、1994年)
「ホメイニーコレクション」の第一号。ホメイニー師とハメネイ師の定番の2ショットだが、周りにイランならではのモスクのタイルを思わせる装飾がされていて、とても美しいポスターだ。30年の月日が経ったせいで、色がかなり落ちているのが残念なところだ。おそらく購入当初は、最も美しい元首モノと言って良いものだと思う。現在は、画鋲や切れ目などが痛々しい。

GM0045のホメイニー師

元々、この青色がかなり綺麗で、茶色も金に近い色だったと思う。2人の顔も今では、白黒に近いが当時はもっと血色が良かった。

テヘランやエスファハーンの町を歩いていると、あちらこちらにホメイニー師の顔を見つけることが出来るので、きっと元首モノを手にいれるのは、簡単だろうと思っていたのだが、意外にどこに行っても売っていなかった。バザールで探しても、ほとんどなく、唯一刺繍屋さんで見つけた。しかし、売っていたが大きすぎたりして買えなかった。

で、数日が過ぎたある時、大通りに国のプロパガンダセンターのような場所を見つけ、入ったら元首モノだらけだったと思う。流石に当時は、そこまで沢山のものを買うわけにはいかず、旅の最後ということもあってバックパックはパンパン!お土産をほどほどにしないと行けなかった。

その中で購入したものが、このGM0045〜GM0050となる。その中でも、秀でて優れている元首モノがこのGM0045と言えよう。

GM0045のハメネイ師

また、この元首モノには逸話がある。米国のアパートに住んでいた時、イラン人の同居人の女性(3ベッドルームの部屋を3人でシェアしていた)がいた期間があった。その時に、私はすでに元首モノをリビングに貼り付けていた。もちろん米国のイラン人なので、シャー側の思想を持った家族の出だ。同居人は、このリビングを見て笑って楽しんでいてくれていた。

しかしある日、この母親が尋ねてきた。すると突然、リビングから悲鳴が上がった。何事かとやってきたら、ホメイニー師が飾ってあったので、娘がその思想に囚われてしまったのかと思って恐怖を覚えたらしい。改めて元首モノとは、かくも強いパワーを持つものなのかと感心した。

GM0046

GM0046:神妙な顔つきのホメイニー師(絵葉書、1994年)
GM0045と同じ場所で購入。さまざまなイランの政治家、宗教家の絵葉書があったと思う。記憶はかなり曖昧だが、絵葉書は邪魔にならないため、数枚購入したのだと思う。中でも、ホメイニー師は必須だったので、2枚購入した。そのうちの威厳のある感じのものだ。

GM0047

GM0047:笑顔こぼれるホメイニー師(絵葉書、1994年)
GM0045と同じ場所で購入。ホメイニー師は必須だったので、2枚購入した。いつも威厳のあるホメイニー師のイメージだったが、これは珍しく笑顔だったので迷わず購入。GM0046と対比的な表情のものを手に入れたいと思い買ったんだと思う。

GM0048の表紙

GM0048:ホメイニー師とハメネイ師(手帳、1994年)
GM0045と同じ場所で購入。システム手帳だ。1994−1995年とちゃんとグレゴリオ暦で書かれているが、下に書かれたアラビア・インド数字でヒジュラ暦で1414年-1415年と書かれている。この手帳を手にいれるまで、別の暦が存在することを知らなかった。とにかく、それまで西欧社会のシステムにのって生きてきたが、そのアルタナティブがあるのに感動した。初めてのイスラム教世界は、自分にとって発見するものばかりだった。

GM0048の中、見開きにホメイニー師とハメネイ師

そして、この手帳の中身も発見だった。現役で元首の肖像画がここまで堂々と描かれている国がなかったからだ。もちろんアタティルクは、トルコで体験済みだが、やはり何か別の威厳のような絶対的なものを、この2人からは感じとった。とにかく手帳にまで描かれていることに驚いたのだ。ホメイニー師はすでに亡くなっていたので、写真は決まった肖像画が掲げられていたが、ハメネイ師は、当時50代なので、今で大分風貌が変わっている。その後、手にいれることになるGM0052と比べてみるのも面白い。現役の元首モノを収集する醍醐味を感じる。

GM0049:ラフサンジャニ大統領(絵葉書、1994年)欠番
GM0045と同じ場所で購入。この人の絵葉書も同じ場所で買ったのは、覚えているのだが、どこかで無くしたのか、はたまた本棚の裏にお隠れになっているのか分からない。貴重な絵葉書なので、ふたたび出現することが待望されている。

GM0050

GM0050:ホメイニー師とハメネイ師(レンチキュラ―、1994年)
GM0045と同じ場所で購入。今回、この「立体的に見える奴」といつも呼んでいるモノが、レンチキュラーという名前だと、この資料を書く上で初めて知った。2024年現在、元首モノは、このGM0045とヴァチカンで友人が購入し、寄贈したローマ法王ヨハネ・パウロ2世と、2011年にロシアで購入したドミートリー・メドヴェージェフくらいである。元首モノとして、使われる技術の一つであるものの、あまり普及していない規格である。

GM0050

このレンチキュラーの特筆すべき点は、2人の指導者を同時に表現出来ることである。まだ、ホメイニー師が亡くなって数年後くらいのイランでは、この2人は常にセット、あるいはホメイニー師のみだった。なので、こうすることで2人を同時に拝めるレンチキュラーは、ハメネイ師にとってプラスに働く意味を持つのだろう。メドヴェージェフが、この規格を使ったのは、もちろんプーチンと一緒の方がプラスに働いているからだろう。

GM0051

GM0051:ホメイニー師(紙幣、2016年)
2016年にニューヨークを久々訪れた時、冒頭で述べた女性とおよそ20年ぶりの再会を果たす。SNSとはすごい。相変わらず美しい彼女に、これら資料の話をすると、プレゼントがあると言われ彼女のマンションに訪れ、いただいたものである。そういう意味で価値があるため、ここに資料として登録している。

GM0051

というのも、紙幣を資料としてしまうとキリがないので、よほどの意味がない限りは、この資料としては扱わないことにする。ただ、これは、前述の理由により、かなり価値の高い資料として扱うこととする。

GM0052

GM0052:ハメネイ師とホメイニー師、そしてソレイマーニー司令官(ダンボールダブルポスター、2020年)
GM0045やGM0048のハメネイ師は、当時50代なので、この2020年に手に入れてもらったハメネイ師の顔の変化は面白い。すでに80代である。威厳がそなわり、かなり顔つきも変わっている。次のGM0053では、御大が20代の頃の写真だ。ちなみにダンボールダブルポスターという規格の名前は、私が勝手につけた規格名である。ダンボールの素材を使い、両面にプリントするという規格になる。

GM0052

裏面(表?)には、このようにホメイニー師に集う人たち、その中にガーセム・ソレイマーニー司令官の写真が描かれている。プロパガンダ性の高い元首モノでとても良い。このダンボールダブルポスターの規格は、これ以外では、2018年にカフェバグダッド氏に寄贈してもらったアブデラジィズ・ブーテフリカ大統領のみである。

GM0053

GM0053:若い頃のハメネイ師(写真、2020年)
GM0045、GM0048、GM0050らの50代のハメネイ師、GM0052の80代のハメネイ師と見てきたが、GM0048では、ヒジュラ暦で書かれていたが、こちらはどうやらイラン暦で書かれている。イラン暦1353年は、西暦1975年にあたるので恐らくそうだろう。最後に彼が捕まった年だ。年号の下には、ハメネイ師の名前とSAVAK反破壊活動合同委員会と書かれている。当時の刑務所で使われた写真と思われる。

この大きめの写真は、Ebrat Museum(王政時代の監獄の博物館)で購入された写真。2018年に知り合った某機関のS氏に2020年に寄贈された。S氏からは、当ギャラリーのコレクションにおいて、多大な貢献をされている方で、その第1号資料として記念すべきものである。

ただし、S氏の最も優れた寄贈品は、2019年に寄贈されたイラクのサダム・フセイン大統領のカーペットとなる。これが先に来なかったのは、GM0053が「ホメイニーコレクション」として特別な元首モノとして番号が先に来てしまったからである。

GM0054
GM0054 捲った裏面

GM0054:若き日のハメネイ師と現在(キーホルダー、2020年)
こちらも某機関のS氏の寄贈品である。Ebrat Museumで購入したもの。逮捕されていた時のGM0053と同じ写真のハメネイ師のキーホルダーである。しかし、それをめくるとイラン・イスラム共和国の第2代最高指導者となられたハメネイ師が現れるという趣向である。素晴らしい演出のキーホルダーだ。下には、博物館のホームページも印刷されている。流石、ギャラリーレーニンの寄贈第1人者のS氏である。分かっていらっしゃる。

GM0055

GM0055:ハータミー大統領(写真、2020年)
こちらも某機関のS氏の寄贈品である。当時大統領であるモハンマド・ハータミーの小さな写真である。裏は白い紙なので、絵葉書ではない。ブロマイドになるのだろうか?

GM0056

GM0056:ソレイマーニー司令官(カラーコピープリント、2020年)
コロナ禍に入るギリギリ前に、殺害されたソレイマーニー司令官のA4サイズのカラーコピー3枚である。これは、パキスタン人のシーア派コミュニティの友人からお呼ばれした、イラン大使館における彼の追悼イベントに訪れた際に飾ってあったものだ。そのプロパガンダ性に魅力を感じ「欲しい!」とねだり手に入れたものである。

「欲しい!」と言ったあと、オフィスに戻ったので、どうやらプリントアウトしたばかりのもののようだった。ただ、このプリンターの調子が悪いせいか、ちゃんと印刷されておらず指でこすると消えてしまう状態になっている。保存のため額に入れるのが必須ものだ。

ただ、ソレイマーニー司令官は「司令官」なので、厳密には、元首モノではない。しかし、あまりにもプロパガンダ性が高く、日本語で書かれているというレア度の高さから、3枚で1つの「ホメイニーコレクション」の資料としてGM0056を拝受させた。






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