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光との偶然の出会い【米子空港】
12月に入り、山陰も冬っぽい日が続くようになった。
この日の天気予報は曇り雨。
目が覚めた時にはかなり雨が降っていて、撮影に行くか正直迷いながらもとりあえず行ってみることにした。
いつもなら7:25発の羽田行きの離陸から撮影をスタートするところを、少し朝ゆっくりしたかったので8:15着の便から撮影することにして遅めの出発。
空港に向けて車を走らせると、低層に雲が溜まり、島根半島を包み込んでいるのが見えた。
秋から冬にかけての朝、境港や島根半島あたりに雲が溜まるように湧いて、雲海の様な景色を作り出していることがある。
経験上、これは冷え込んでいる朝方のみに起こり、9時を過ぎて地表が温まってくると自然と消えてしまうようだ。
これは冬の米子空港らしさを表現するにちょうどいいと思い、一度空港を離れて外浜(日本海側)で着陸機と境港の街並みを絡めて撮影しようと思った。
進入コースをイメージして構図を決めて待つと、8:20ごろに羽田からの初便がやってきた。
機体がフレームインしてくるのを待つ1分の間でも雲の形はどんどん変わっていく。
綺麗に見えていた高尾山駐屯地のレーダーサイトもシャッターを切る頃には雲に飲まれてしまっていた。
高度を下げて降りてくる機体の下には境港の港湾施設と境水道大橋が見える。
冬の冷えた朝の雰囲気を出すため、少し青めのホワイトバランスで仕上げた。
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1/1000 f8 ISO2000
撮影を終えて、海の様子を見にこられたサーファーの方と談笑していると、空の様子が少しずつ変わっていた。
一度空港の近くまで向かおうと思い車を走らせると、ほんのわずかだが晴れ間がのぞいていた。
ちょうど雲の薄い層が上空を流れていた。
次に撮影するのは羽田行きの離陸機。
西風なのでRW25、中海に向かっての離陸だ。
撮影場所を内浜に変えると、滑走路のあたりだけ、スポットライトのように光が差し込んでいるようだった。
米子空港RW25の離陸といえば中海干拓地の撮影が主流だが、ここまで印象的な光を逆光にしてしまうのは勿体無いと思い、順光になるポイントを選んだ。
出発予定時刻より少し遅れて機体が滑走路へと動き出したようだ。
機体の姿は見えないので、機体が空にいつ飛び出してくるかわからない。
このシャッターチャンスを待つ時の緊張感がなんとも心地よくて、また撮影に出かけてしまう。
まだ静かな9時の弓ヶ浜に、突然エンジンの轟音が響く。
それから数秒後、空にエアバスA321ceoの機体が飛び出してくる。
狙い通り、滑走路の上には光が来ていた。
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1/2500 f8 ISO400
正直、曇り雨予報の日にこんなにいい光が入ってくるなんて期待していなかった。
現地にいたからこそ出会えた光景そのもの。
現像ソフトの進化もあって、光が入っていなくても後からなんとかなるような時代に、自分のアイデンティティとして、自然本来の光線に古臭くてもこだわっていきたいと改めて思った朝でした。
2024年12月