禍話「サカイ さんの動画」
禍話のリライトを読んで繋がったんだけど、Fさんはそう話を切り出した。
「アレ、読んだけど良くないよ、名前変えないと」
定例になっている会社の飲み会でFさんは「怖い話とか好きなんですか?」と、ある女の子に聞かれたという。
「幽霊みたいなのはそんなに怖くないけど、ヤバイ人が出てくる感じの方が怖いかも」
「それなら!今度会って下さい!」
二つ返事で了承すると、翌週その子はパソコンを持ってやって来た。
「変な人から動画をもらったんですよ」
へえ、動画……
その子は続けて話した。
「これを最後まで見れるのはなかなかだ」と、グロテスク動画が投稿されるサイトである動画が話題になっていた。
何人かがトライしてみたが、誰も最後まで見れなかった。自分も気にはなっていたが「最後まで絶対いけないな」と思っていた。
するとある日、その動画がメールで送られてきた。
誰かに見せろ ちゃんと見せましたか?
と送ってきた人が催促し、しつこくしつこく確認してくる。
覚悟を決めて見てみたが、前半で怖くなって見るのをやめてしまった。こういうのが好きな人なら、と思って見せてみようと思った。というのが事の経緯だった。
よしじゃあ見てみようかということで何人か友人を呼んでファミレスに集まり、その映像を見てみることにした。
郊外のショッピングモール、大型駐車場。
始まったのは営業が終わって真っ暗な駐車場の中を暗視でもない至って普通のカメラで撮影している映像だった。撮影しているのはおそらく40代から50代の中年男性、途中途中で
フッンフッ…フフフッッハッッ……
含み笑いをしながらカメラが揺れている。
正直これだけでもなかなか気持ち悪い。
ここでダメだったんですよね……と女の子は肩を落としている。ここでか……まあ確かに分からなくもない……
まあでも今日は何人かいるし大丈夫大丈夫!と励ましながら続きを再生する。
何台かまばらに停まっている車と車の間を見つけるとその男は
ミーつけたッ!
と隙間にカメラをパンするが、もちろん誰もいない。
あ〜いないかァ……ここかなッ!?
ミーつけたッ!……
うーんいないかァ……ここかなッ!?
ミーつけたッ!……いないんだなァ……
これ、かくれんぼしてるってこと?
とにかく人が入れそうな隙間を見つけては、ケラケラ笑ってその一連のやりとりを繰り返している。
時々、前からライトを持った人が来ると、まったく笑わずにスッと隠れる。
これ…警備員避けてんじゃん……
全体を通して薄暗く、この行動の意味がまったく繋がりとして見えてこない。漠然とした嫌な雰囲気が映像から伝わる。
屋上に出た。
月が出ているからなのか、街灯のおかげなのか、かなり明るかったが
こーいうところにはいないと思うんだなァ〜
と早々に切り上げてしまった。
ここまで特に何も起きていない、何も起きないのになぜか相当怖い。
それから10分から15分ぐらい駐車場をグルグルしている様子が映される。途中で途切れたり、繋がっていたりするので、雑ではあるが映像は編集されているようだった。
あるフロアに差し掛かった時だった。
あ〜!いたいたいたいた!
やっぱりいた!いたいたいた!
急に一直線に駆け寄っていく。
長い。この暗さで先なんて分かりそうにない距離を走っていく。
動画を見ていた人間曰く
それまでの映像は全部茶番だった、そいつは初めから"そこにいたのが分かっていた"ような感じだったという。
暗いからよく分からないが、遠くにポツンと停まっている車に駆け寄っているようだった。
いましたいましたいましたいましたいましたねェ〜〜!!
外が暗いのでもちろん車内も暗い。
助手席を映す、車内に人がいる。
人?マネキンではない。
すると見ていた一人が「待て待て待て」と映像をパッと止めた
「これ、この車の中のヤツさ、仰向け過ぎない?」
薄暗く映像がザラついているから詳しくは分からないが、確かに首がありえないくらいのけぞっていた。首がもう数10cm長くないと座っている感じからしておかしい状態だ。
「何だこれ……?…ちょっ……続き見る?」
すると別の友人がまた慌てて遮る
「待って!ちょっと、待って……さっきから言いたかったんだけどさ、ガラスが反射して鏡になって撮影者が映るじゃん?
この人、変な柄の服着てるよね?
バッと飛沫が飛び散ったような…柄の服」
………うわっ…いやいやいやないだろ。
そんなのダメだろ、そんなのヤバいだろ……
一瞬だけ、確認しよう……思い切って再生ボタンを押す。
接写しているが、やっぱりよく分からない。
カメラが下にパンする
あ〜やっぱりよく分からないかァ〜
……ナイトモードにしますねェ〜
その瞬間、バーンッ!と音を立ててパソコンを女の子が閉じた。
「ナイトモードにしたらダメだろ!!!!」
その子はパソコンを捨て、インターネットからも距離を取る為にスマホもやめてガラパゴス携帯にしたという。
一瞬、映像に地方名が映ったので少し調べてみたがそんな事件は一切見つからなかった。
「冗談ではできない狂気と演技だったよアレ……内容も気持ち悪かったし……」
「それで、それを送ってきたのが「サカイさん」って人だったんだよね」
【fin】
本記事は、著作権フリー&オリジナル怪談ツイキャス【禍話】禍ちゃんねる 霊障発動後回 (後編) より、編集・再構成してお送りしました。
禍話 禍ちゃんねる 霊障発動後回 (後) (13:00〜)
禍話-Twitter
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