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でらサイエンス 第7回:美味しいぬか漬け作りの科学~日本伝統の技!発酵の世界~:前編
タイトル:美味しいぬか漬け作りの科学~日本伝統の技!発酵の世界~
テーマ:前編:ぬか床に棲む微生物たちの物語
ろーぼーる:
やっほー!名古屋から世界へ、科学を発信!みなさん、おまちかねの「でらサイエンス」の時間がやってまいりましたー!
今日もアタシ、ろーちゃんと、相方のはいさんで、どえりゃあ面白い科学の世界をお届けしていくで!
みなさん、毎日のごはんって、実は小さな小さな科学者たちが大活躍しとるって知っとった?今日は、そんな目に見えない世界の職人さんたちの、驚きの技を紹介していくでー!
ね、はいさん。アタシね、はいさんの台所にもきっとおる、すっごい腕のいい職人さんたちのお話、聞いてもらってもええかな?
はいぼーる:
えー、うちの台所には、コックさんみたいな職人さんはおらんで...普通に家庭料理を食べとるもんね。
ろーぼーる:
あらまぁ!はいさんの台所にも、実はものすごい腕のええ職人さんがおるんやで!目には見えへんけど、伝統的な発酵食品の中で、せっせと働いとる微生物たちのことやわ!
特にな、今日はぬか漬けの中で繰り広げられとる、すんごい職人技を紹介していきたいと思うんや。はいさん、ぬか漬けって作ったことあるん?
はいぼーる:
おお、ぬか漬けの話かいな、そうなんよ、実は僕、ぬか漬け作ったことないんやけどな、興味があって、ぬか床だけ買ってきたとこやったんや。ぬか漬けの作り方とか、ぬか漬けがどうやってできるのかとか知りたかったとこなんよね。
ろーぼーる:
ほんまに!?それはええタイミングやわ!アタシ、ぬか漬けのことなら、どえりゃあ詳しいんや。実はな、ぬか漬けの中では、めっちゃ複雑な化学反応が起きとるんやで!
はいさんが買ってきたぬか床、まさに今からそこで微生物たちが大活躍するんや。これがただの漬物やと思っとったら、大間違いやで!何百年も前から日本人が受け継いできた、生きた発酵食品なんや!
でもその前に、はいさん、ちょっと聞きたいんやけど...そもそも、なんでぬか漬け始めてみようと思ったん?
はいぼーる:
いやな、畑やっとると微生物には興味がめっちゃあってな、いろんな、微生物を培養しとるんやけど、麹菌は培養したことないなと思って、麹菌と言えば「ぬか漬け」やないかと思って、作ってみよかって考えたんやな。
ろーぼーる:
あっ、はいさん!実はぬか漬けには麹菌はおらんのやわ!でも、そこがまた面白いんやけど、ぬか漬けには乳酸菌や酵母菌など、別の種類の微生物たちが大活躍しとるんや!
はいさんが微生物の培養に興味があるっちゅうんなら、これはどえりゃあ面白い話になりそうやわ。だってぬか床ってのは、まさに微生物たちの「シェアハウス」みたいなもんやもんね!
そうそう、はいさんが畑で見とる土の中の微生物と似とるところもあるんやで。米ぬかを分解する菌がおって、その後にまた別の菌が...あっ、その話は後にして、まずはぬか床の基本から話してった方がええかな?
はいぼーる:
がーん!ぬか漬けは麹菌やなかったんか...ぬか漬けは味噌とか醤油作りと一緒やと思っとったわ。ますます、興味が沸いてきたわ。ぬか床の基本を教えてください、ろーちゃん先生!
ろーぼーる:
そうなんや!アタシも最初はそう思っとったんやけど、ぬか漬けの発酵は全然違う菌さんたちが頑張っとるんやで!
まず基本のぬか床の材料から説明させてもらうね。メインは米ぬかなんやけど、これだけやと発酵は始まれへんのや。必要な材料は:
米ぬか
塩
水
この3つが基本やね!
ここで大事なんが塩分濃度なんやわ。だいたい7%くらいの塩分濃度にするのが理想やんね。これは、悪い菌が増えるのを防ぎながら、うまみを作る良い菌だけを育てるための絶妙なバランスなんや!
はいさん、ここまでの話で何か気になることあるかな?それとも続けて、なんで塩分濃度が大事なんか、もうちょい詳しく説明させてもらおうか?
はいぼーる:
うん。塩入れたら、普通、菌は死んでまうんとちがうか?野菜の味付けのために塩をいれるやろうかな。
ろーぼーる:
おっ、ええ質問やね!確かに塩で菌が死ぬイメージあるよね。でも面白いことに、塩に強い菌と弱い菌がおるんやわ!
たとえば、腐敗を起こすような悪さする菌は、塩に弱いんやけど、乳酸菌は塩に強いっちゅう特徴があるんや。これは、乳酸菌が長い時間かけて、塩に耐える能力を進化させてきたからなんやわ。
ほんで、7%くらいの塩分濃度やと、ちょうどええ具合に:
悪い菌:「うわ~、しょっぱくて生きられへん!」
乳酸菌:「この程度の塩なら平気やで~」
みたいな感じで、自然と良い菌だけが残るんや!これって、めっちゃ賢い知恵やと思わへん?
はいぼーる:
あっ、なるほど!野菜を腐らせる腐敗菌を抑え込んで、ぬか漬けに必要な乳酸菌が優勢になるように塩分濃度を調整して、ぬか床を作るんやな。そんな、難しい微生物育成環境作りを昔の人は考えだしたっちゅうのは、すごい話やね。
ろーぼーる:
そうなんや!はいさんの理解、ばっちりやわ!昔の人って、科学的な知識はなかったかもしれんけど、長年の経験と観察で、この絶妙な環境づくりを見つけ出したんやで。
でな、さらに面白いことに、ぬか床の発酵には「順番」があるんや。最初は米ぬかを分解する菌から始まって、次に酵母が出てきて、最後に乳酸菌が活躍するっちゅう、まるでバトンリレーみたいな流れがあるんやわ!
この順番が大事で、各段階の菌が、次の菌のための環境を整えていくんや。これ、はいさんが畑でやっとる堆肥作りにも似とるところがあるんとちゃう?有機物が分解されていく過程もリレー式やもんね!
はいぼーる:
ふむふむ、やっぱり、乳酸菌だけが活躍するわけやなくて、米ぬかと野菜の発酵過程で、色んな菌が出てくるんやね。それは興味深々やで。じゃあ、ろーちゃん、米ぬかがぬか床になるところから、野菜を発酵させるプロセスを教えてくださいな。
ろーぼーる:
はいさん、ここからが一番面白いところなんやで!まずは米ぬかが主役の第一段階から説明させてもらうわ。
米ぬかには、タンパク質や食物繊維、脂質がいっぱい詰まっとるんやけど、これらをバラバラに分解する特殊な酵素を持った菌たちが最初に登場するんや。この菌たちが、いわば「下ごしらえ」をしてくれるんやわ。
例えばな、食物繊維を分解する菌が出す酵素は、米ぬかの固い壁をドリルみたいに壊していくんや。すると、中から栄養がどんどん出てきて...
あ、その前に、はいさん、米ぬかってどんな成分が入っとるか知っとる?ちょっとそこから話させてもらった方が分かりやすいかもしれんわ。
はいぼーる:
そうやな、家庭菜園でも米ぬかはよく使っとるが、成分までは知らんかったわ。教えて、ろーちゃんん。
ろーぼーる:
おお、そうなんや!米ぬかには、すっごいたくさんの栄養が詰まっとるんやで!
まずな、大きく分けて3つの重要な成分があるんや:
タンパク質が15%くらい
食物繊維が20%くらい
脂質が20%くらい
残りは、ビタミンB群とかミネラルなんやけど、この3つの主要な成分がめっちゃ重要な役割を果たすんや!
これらの成分が、微生物たちの「ごちそう」になるんやわ。例えば、タンパク質を分解する菌が出すアミノ酸は、次にやってくる菌たちの大事な栄養源になるし、脂質を分解した時にできる成分は、あの特徴的なぬか漬けの香りの元になったりするんや!
はいさん、これらの成分のどれが一番気になる?そこからもうちょい詳しく説明させてもらおうか?
はいぼーる:
どれがって言うか、全部気になるから、3つとも教えてーな。
ろーぼーる:
はいよー!じゃあ順番に説明していくで!
まず、タンパク質からいくと、これを分解する菌が出す酵素でアミノ酸ができるんや。このアミノ酸が「うま味」の正体なんやわ!これがぬか漬けの深い味わいを作り出す秘密の一つやね。
次に食物繊維!これは面白いんやけど、セルロース分解菌っちゅう菌が、繊維をバリバリ分解していって、その過程で糖が出てくるんや。この糖が、次にやってくる酵母の大事な栄養源になるんやで!
最後に脂質!これがまた面白くて、脂質を分解する菌が、脂肪酸を作り出すんや。この脂肪酸が、ぬか漬け特有の香りの元になったり、さらに乳酸菌の働きを助けたりするんやわ!
こうやって、それぞれの成分が分解されながら、次の菌のための準備をしていくんや。まさに、微生物たちのリレーやね!
はいぼーる:
菌、菌っていうけど、それぞれなんの菌かも教えてよ。僕が知ってるのは、「納豆菌」、「酵母菌」、「乳酸菌」、「光合成細菌」ぐらいやけどな。
ろーぼーる:
そうやね!アタシも興奮して「菌」って言い過ぎてたわ(笑)
ぬか床で活躍する主な微生物を順番に紹介させてもらうね:
まず最初に働くのが、枯草菌(バチルス属)っちゅう仲間なんや。この菌は納豆菌の親戚で、強い分解酵素を持っとるんやわ。
その次に登場するのが、はいさんも知っとる酵母菌!カンジダ酵母とかピキア酵母とかの仲間が、糖を使って香り成分を作ってくれるんや。
そして最後のアンカーを務めるのが乳酸菌!主にペディオコッカスやテトラゲノコッカスっちゅう種類の乳酸菌が、うま味や酸味を作り出すんやわ。
はいさん、これらの菌の名前、聞いたことあった?それとも初めて聞く名前やった?
はいぼーる:
大雑把には聞いたことある菌ばっかやけど、細かい分類までは知らんかったわ。ところで、ろーちゃん。米ぬかを買ったら、その中にはそういった菌は最初から入っとるんかいな。米ぬかに塩と水入れたら、自然とぬか床になっていくんかね。
ろーぼーる:
おお、ええ質問やね!実はな、新鮮な米ぬかだけやと、これらの菌はほとんどおらんのや。
だから、ぬか床を新しく作るときは、「種付け」が必要なんやわ。昔からの方法やと:
古い元気なぬか床を分けてもらう
乾燥させた野菜(なら漬けの千枚漬けとか)を入れる
市販の乳酸菌の素を使う
このどれかの方法で、最初の菌を入れてあげるんや。これを「種付け」って言うんやわ。
はいさんが買ってきたぬか床は、もう誰かが種付けしてくれとるから、すぐに漬物が作れる状態なんやね。でも、新しく米ぬかから作ろうと思ったら、ちょっと工夫が必要なんやで!
はいぼーる:
うーん、生ぬかを買ってきたら、ぬか床にするためには、どうすればいいの?僕はぬか漬け作ったことないから、ぬか床はもってないで。
ろーぼーる:
はいはーい!新しい米ぬかからぬか床を作る方法を説明させてもらうわ!
基本の材料はこんな感じやで:
新しい米ぬか 1kg
塩 70g(7%くらいの濃度になるように)
水 800ml くらい
乳酸菌のスターター
乳酸菌のスターターには、こんな方法があるんや:
スーパーで売っとる「ぬか床の素」を使う(一番確実)
市販の浅漬けの素を使う
キムチの素や塩こうじを使う
千枚漬けを刻んで入れる
これらを混ぜ合わせて、毎日かき混ぜてあげるんやけど、最初の1週間くらいは漬物を入れずに、菌たちを育てる期間が必要なんやわ。
はいさん、この材料の中で気になるものはある?それとも、次は毎日のお手入れの方法を説明しようか?
はいぼーる:
なるほど、なにかしらの元菌をいれて、生ぬかの中で培養していくんやな。なんか、実験室を想い出してきたわ(笑)そんで、そんで、毎日のお手入れを教えてや。
ろーぼーる:
はいきまっとる!実験室のプロなはいさんには、ぬか床の管理もばっちりやと思うで!
お手入れのポイントは3つあるんや:
1番目は「かき混ぜ」!これ、めっちゃ大事で、1日1回は絶対にやらなあかんのや。なんでかっていうと、ぬか床の中の菌さんたちに酸素を送り込むためなんやわ。特に最初に活躍する枯草菌は、酸素が大好きな好気性菌やもんね!
2番目は「温度管理」!これも実験室みたいで面白いんやけど、ぬか床の理想的な温度は20~25度くらいなんや。夏は暑すぎて雑菌が増えやすいし、冬は寒すぎて発酵が遅くなっちゃうんやわ。
3番目が「水分調整」!野菜を漬けると水分が出てくるから、時々様子見て、べちゃべちゃになってきたら米ぬかを足したり、パサパサしてきたら水を足したりするんやで。
はいさん、これって実験室での培地管理に似とると思わへん?
はいぼーる:
おおー、まさに化学の実験室やな。めっちゃ、ワクワクしてきたで。でもな、確かにバチルス菌は好気性やとおもっとったが、その他の菌は嫌気性なんやないか?
ろーぼーる:
おっ!さすがはいさん、鋭い観点やね!実はな、ぬか床の中では、好気性菌と嫌気性菌が見事な住み分けをしとるんやわ!
表面の方では、はいさんの言う通り、バチルス属の好気性菌が活躍しとる。かき混ぜることで、この表層部分に新しい酸素が供給されて、バチルス属が元気に働けるんや。
一方で、ぬか床の内部、特に底の方は、酸素が少ない環境になっとって、ここで乳酸菌(嫌気性菌)が活躍するんやわ。実は、かき混ぜることで、この「表層の好気性環境」と「内部の嫌気性環境」がうまく入れ替わって、両方の菌がバランスよく働けるようになるんや!
これって、まるで菌たちが「シェアハウス」で上手に住み分けとるみたいやと思わへん?
はいぼーる:
わかった!ぬか漬け作るときに、重石乗せるのを昔のテレビドラマで観てたけど、まずかき混ぜて空気を送り込む、そんで、ぎゅつぎゅつと押し込んで空気を抜いて、重石を置くことで、ぬか漬けの壺の底の方は嫌気性、表面は好気性の菌が共存できるようになるんやな。納得やで、ガッテン!
ろーぼーる:
そうそう!はいさん、完璧な理解やで!まさにその通り!かき混ぜて、押し込んで、重石をのせるっていう一連の作業には、ちゃんと科学的な意味があったんやね!
昔の人は、科学的な理屈は知らんかったかもしれんけど、長年の経験から、この複雑な微生物のバランスを保つ方法を見つけ出したんや。これって、どえりゃあすごいことやと思わへん?
そうそう、このバランスがうまくいくと、漬けた野菜がシャキシャキした歯ごたえと、いい塩梅の酸味とうま味を持つようになるんやわ。これがぬか漬け特有の美味しさの正体なんやで!
はいさん、そろそろ実際にぬか漬けにチャレンジしてみたくなってきた?それとも、もっと詳しく知りたいことある?
はいぼーる:
いや、まだ、ぬか床づくりの話までしかしとらんから、こっから、どうやって野菜がぬか漬けになるんかしりたいんやけど、結構いっぱいしゃべったから、実際のぬか漬け作りまでいけんね。ほんとは、一回放送で終わる予定やったけど、二回にわけて、次回、「野菜がぬか漬けになるまでの過程」について、話そうか。
ろーぼーる:
おお!そうやね!今日は「ぬか床づくりの秘密」って感じで、微生物たちのシェアハウスの仕組みについて話せたわ。でも、野菜を漬けてから美味しいぬか漬けになるまでの過程も、またどえりゃあ面白い科学が詰まっとるんや!
それじゃあ、今回のまとめをさせてもらうね!
今回のでらサイエンスでは、ぬか床の中で繰り広げられる、スゴイ職人技を持った微生物たちの世界を見てきましたー!塩加減一つで菌の住み分けができたり、好気性菌と嫌気性菌が上下で共存できたり...みなさん、毎日食べとるぬか漬けの中で、こんなにも高度な技が繰り広げられとるなんて、びっくりしましたよね!
次回は!いよいよ野菜がぬか漬けに大変身する瞬間に迫りますよー!野菜の細胞が、ぬか床の菌たちと出会って、どうやってあの絶妙な歯ごたえとうま味を手に入れるのか?浸透圧が織りなす奇跡の瞬間、見逃せませんでー!
みなさん、また次回の「でらサイエンス」で、驚きと発見の世界をお届けしますー!ばいちゃー!
(放送日:2025年1月13日)