『好き』の連続
好きな人、好きな食べ物、好きな場所、好きな国、好きな洋服…
「好き」の答えの数で、人は出来上がる。
食べることが好き。
一人で過ごす時間が好き。
お花が好き。
夕焼けの空が好き。
洋服が好き。
家族が好き。
サーフィンが好き。
これが私の『好き』。
私の『好き』に理由はない。
そして、
『好き』の連続で、その人は出来上がる。
起きてから寝るまで、
ひたすら『好き』の選択を続ける毎日。
起床してからすぐに洋服に着替えるのか、もしくはパジャマのままなのか。
顔を洗うのは、丁寧にする、簡単にするのか。
顔を拭くタオルを選ぶ。
うがい用コップの置き場所はどこにする。
今日は髪を整える、もしくは無造作。
ドライヤーを、右もしくは左に置く。
鏡についたホコリの掃除をする、しない。
朝ごはんを、食べるのか食べないのか。
出かけるのか、家で過ごすのか。
あの人に連絡するのか、もしくはしないのか。
小さな選択も、大きな選択も、全部『好き』で作られている。
誰に何を言われたって、みんなそれぞれ『好き』選択をし続ける。
いや、そうでもない。好きな選択ばかりでもない、と首を傾げる人がもし居るなら、それはどこかで『好きじゃない』選択をしているから。
あの人と会うのは気が重い。
作業が全然面白くない。
この部屋が好きじゃない。とか、いろいろ出てくるかもしれない。
『好きじゃない』選択は積み重なる。『好きじゃない』選択をしたことに、無意識的に言い訳も重ねる。ちょっとした嘘が、ずっと嘘を続けなきゃいけないループに入るのと同じ。
自分や周囲の常識のせいにして、自分の行動に制限をかけていく。しかも、勇気を出して『好き』だけの選択をしてみれば、なかなか思い通りにいかない。たくさんの【縛り】が自分自身にまとわりついている、ということに気がつき始めるんだ。
生活のお金を稼がなきゃいけないこと。
家事をしなきゃいけないこと。
美しくしなければいけない。
朝は早く起きなければ。
文句いわれないようにしなきゃ。
その無意識の【縛り】というものは、年齢を重ねれば重ねるほど、深く強く濃くなる。毎日、動いている身体や意識が、考えなくてもその選択をさせているようになっているから。長い間、自分の中に染み込み続けた習慣や常識が、そうさせる。
お金をいっぱい使って、豪遊しまくった記憶。
モノが溢れて居心地の悪かった実家の記憶。
注目を浴びてナンパされまくってた記憶。
楽しい記憶も苦しい記憶も、
全部繋がって無意識の【縛り】と変化する。
呼び方は【縛り】でもあるし【経験】ともいう。
さて、その【縛り】を解き放つ方法。
実は、簡単。
過去を全て忘れてしまって、目の前にある瞬間だけを直視してみること。
そして、その瞬間に浮かんできた『好き』だけを意識する。
それだけのこと。
山景色が見える居心地のいい部屋が『好き』
『好き』な人からもらったお花を『好き』な花瓶に入れる
『好き』な下着だけで脱力している時間が『好き』。
運んできた甘い湧き水を飲むことが『好き』。
一つ一つの『好き』の選択。
その『好き』をひたすらに続けることで、自分の理想が簡単に作れる。なにもかも自由にセッティング出来る世界の原動力は、『好き』という気持ちだけだ。
『好き』を転がし続ければ、『好き』がどんどん大きくなる。
自分と似たような人が集まってきて、
『好き』な話をする。
『好き』な場所へ一緒に行く。
『好き』なものを食べる。
そうやって、『好き』を膨らませていく。
見えていなかった自分の『好き』なことも、さらに押し拡げる。そうして『好き』だけに囲まれた自分の天国が見えてくる。ここまでくれば、もう、楽しさの連続。毎日ニヤニヤして好きなことに夢中になったり、こうなったら楽しいな、なんて妄想だけでも楽しい。現状に満足しているから高望みなんて必要ないんだけど、妄想している行為が『好き』だから、それでいいんだ。
もちろん『好き』を極めるのは、簡単なことばかりじゃない。
常に自分の中に潜む【縛り】と戦わなければいけないし、仕事を捨ててまで放浪するほど子供じゃない。物質的にも社会的にも、失うものはたくさんある。取り囲んでいた人は急速に変化して、否定する人も肯定してくれる人も出てくる。いろんな感情をさらけ出すことになる。
その状況を、変化、というね。
幼虫が静かに固まってサナギになり、ゆっくりじっくり時間をかけて蝶に変わるような変化。変態。
頑固に『好き』を選択し続ける。
そこから先は、自分の生活がドラマチックに変わっていく。身体と意識、どちらでも手に取るように変化を感じられるようになる。楽しいことも、悲しいことも、すべて受け入れられる。オペラ映画のように、高らかに歌う毎日を過ごせるようになるんだ。
すべては自分の選択した世界。
自分で作り上げる、自分のドラマを毎日繰り返す。
『好き』という感情は、
自分を作る、大切な役割がある。