満月の夜
日常で起こる些細なこと。
自分の発する一つ一つの発言や行動が、
自分を取り巻く世界を作っていく。
当たり前なのだけれども、
情報に溢れた毎日では、なかなか気がつけない些細な日常のお話。
とある山の麓で暮らすワタシが綴る物語。
【山暮らしの手帖】書き始めました。
大橋鎭子さんに愛と尊敬を込めて。
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とある夜のこと。
仕事で帰宅したワタシは酷使した身体を引きづるようにして、いつもどおり部屋の電気をつけ、窓際の椅子へ腰を下ろしていた。
なかなかハードなスケジュールの今日だった。忙しかったけれど、とても楽しい1日だった。気分はまだ高揚していてお酒でも飲みたいような気分。でも動かしすぎた身体は、すぐにでもベッドへ行きたがっている。
ようやく今が自由時間。
何して過ごそう。
考えているようで何も考えていないワタシは、ふと電気が眩しいことに気がついて電気を消してみた。
暗くなった部屋。
電気を消したのに、妙に明るい。
「もしかして!」と気がつき、部屋の窓の外を見てみる。
強く、優しく微笑む、満月がそこに浮かんでいた。
うっすらとベールがかった空、大きな大きな月輪をまとった満月。
藍色の夜空、白い絵の具を足したようにゆるく、にじみながら揺れる。
「うわあ」と子供のような歓喜の声が漏れる。まるで、朝日を浴びるような気持ち。思わず身体を伸ばしながら、全身で月光浴をする。
眩しい。
直視できなくなったワタシは、目を閉じてみた。
いろんな音が聞こえる。
川のせせらぐ音
楽しそうにはしゃぐ人の声
ときどき聞こえる、家のどこかが軋む音
ただただ静かに
動かず、そこに座る。
自然と、床に座って座禅をするようにあぐらを組む姿勢に変わってた。
静かに呼吸をし、考えることをやめた。
しばらくして、温度が変わるような感覚に襲われる。
眉間の上から頭上にかけて、ふと力が抜ける。
瞑想モードへ突入。
もう一人のワタシが囁く。
月明かり、めっちゃ気持ちいい!
ほんとだねえ、気持ちいいねえ
ワタシの中のワタシとゆっくり対話する。
いい時間。
満月。ありがとう。
これこそが、マインドフルネス。