イケメンたずねて三千里。人妻・美和の妄想特急
※こちらは女性限定です。インド旅行中に書いた妄想全開のイケナイ読み物コーナーですので、男性の方はご自身を守るためにも、チラ見程度で急いで避難ください。
※あくまで個人的趣味です。苦情は受けつけませんがファンレターは歓迎します。
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第一話 美和33歳、戸惑いの冬
あれは、そう。
2009年の年の瀬でございました。
わたくしを乗せた飛行機が、インドのムンバイに着陸いたしました。
市街地に出たときの、あの日差し。あの熱気。
急な温度変化からか、移動の疲れからか、
わたくしはふらふらしておりました。いえ、違いました。それは街をゆく殿方たちから発せられておりましたもののせいです。
体臭ではございません。殿方の目ヂカラの強さです。
日本男子の平均目ヂカラが懐中電灯ほどだとしましたら、彼らのそれは恐らく波道拳か昇竜拳ほどありましょう。
それに加え、何ともどことも言えない、全体的な毛の濃さでしょう。
兎に角、濃ゆいのです。濃厚なのです。この方々が東京に来たら、なんと顔の薄っぺらい人間たちかと驚くでしょう。千と千尋の神隠しの顔なしの国かと思われるでしょう。
とにかくそんな顔・顔・目・目・毛・剛毛に圧倒され、わたくし思わずクラァーっと眩暈がしてしまったのです。
そのときです。
わたくしの視線に飛び込んできましたのが、山のような野菜・・・その先に
長い睫毛と優しい瞳。
あ、あなたは・・?
「僕は、野菜売りです」。
大きなリヤカーに満載にした、色艶のいい野菜たち。
どれもまるまるして美味しそう。わたくしが手に取ると、嬉しそうに眺める彼。
あぁ、野菜が大好きなのね。
はっ。そ・れ・と・も・・・?
わたくしは尋ねます。
「今日一番のおすすめは?」
「えっ?・・・・えーと、・・・全部です」
思わずプッと噴出してしまいました。
野菜をたくさん食べているからでしょうか、肌がびっくりするほど奇麗な彼は照れてうつむいてしまいました。
初めてのインドという地、ムンバイという街、インドの方々の多さとエナジーの強さに怖気づいていたわたくしですが、確信をいたしました。
「イケる」。
そして決心をいたしました。
世界中をまわり、容姿端麗な現地の殿方を探し、写真に収めるのです。
略しまして、イケメン採取です。
誘惑の亜熱帯に迷い込んだわたくし。手には虫取り網。ふわりと、色とりどりの蝶が。あぁ、待って。あら、こっちも。
いけない。また妄想が膨らんでしまいました。
そんなホテルへの帰り道、角にあるタバコ屋の中から声がしましたの。
「お嬢さん、明日、一緒に食事でもどう?」
あら。人のよさそうな、笑顔とおなか。
「まあ、ありがとうございます。主人と2人でお邪魔しますわ」
こういうときはシラっとハズバンドという単語が効きますの。
「あ、そうじゃなくてさ・・1人で来れない?」
私はクルリと踵を返し、早足で去りました。
ごめんなさいね。お呼びじゃなくってよ。
日が傾き、少し涼しい風を受けながら、
青年のシャツの黄色とトマトの赤が 、瞼の裏でちらちらし、
名前を聞きそびれたことを、少しだけ後悔しておりました。
(了)
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第二話 潮騒に誘われて
それは12月25日。
俗に言うクリスマスの日でございました。
ムンバイの喧騒から逃れ、わたくしが向かった先は、海沿いのリゾート地を多く保有するインド一裕福な州、ゴアでした。
バスに揺られながら、わたくしは胸騒ぎが止まりませんでした。
それは暴走し無茶な追い越しを繰り返す運転手のせいではありませんでした。
ビーチ、リゾート、イベント、パーティ・・・
薄着の男女と鳴りやまないテクノミュージック・・・
遠くに聞こえる潮騒が、何か、新たな出会いを予感させるようだったのです。
ゴア一番のヒッピーパラダイスと言われる町、アンジュナに着きましたわたくしは、小さくため息を一つつきました。
町は、バラ色の頬と細い手足を持った白人のバックパッカーの坊やたちか、
カラスの羽のようなものもしくはアースカラーの麻をまとった裸足のヒッピーの皆さんで溢れていたからです。
現地の殿方・・・・・いない・・・。
結局わたくしには、少しお歳を召した感じの方か、「ハッパアルヨー」とよくわからない片言の日本語を話す瞳と歯の色の濁った方々しか見つけられませんでした。
嗚呼、そうだわ。わたくしの持ってしまった、下心のせいだわ。下世話な汚い心が、清らかなイケメンの皆さんを遠ざけてしまったのね。
わたくしは海に沈む大きな夕日に向かって懺悔をいたしました。
ところが、ラブストーリーは突然に、やってまいりました。
夕飯を食べに、隣のビーチ、アランボールへ行ったときのことです。
ビーチ沿いのムードのいいCafeに席を取り、大好物のチベット料理MOMO(小龍包のような)を注文しようと顔を上げた
わたくしの、目の、前に・・・・
野生の、新種の、美しい蝶が・・・・
何から伝えればいいのでしょう。
小田和正さんの甘い歌声が頭に響き、わたくしは卒倒してしまいそうでした。
これは、夢なのでしょうか。
「ご注文、決まりました?」
なんて、なんて低い!顔に似合わないハスキーな声!(ここで2秒ほど意識が飛びます)
「きゃ!あ、あはい。モモを。あ、あの、
これは蒸しモモ?揚げモモ?」
なにをしゃべっているのか、自分でもさっぱりわかりません。
本当は、モモの調理法などどうでもよいのに。
いいえ、食事自体どうでもよくなっておりましたのに。
これは、彼に流れる血の問題でしょうか。
それとも、ニュージェネレーションということでしょうか。
ムンバイにいらした濃厚カカオ90%な殿方たちとは一味違うムードなのです。
明らかに、ミルクチョコレートなのです。でも、鼻血はこちらのほうが出そうなのです。
鼻血の理由は数あれど、やはり、
「店員、なのに、上半身裸。」でしょうか。
やはり光GENJI世代、わたくし、上半身裸には特別な感情があるようです。
どこをどう帰ったか、夢心地で宿へ戻り、イモリ数匹の徘徊も気にもせずベッドにもぐりこみました。
ああ、幸せ。。。。ありがとう。。。。
翌朝、部屋のドアを開けると、宿の夜番ガードマンが立っていました。
「グッモーニン。僕はこれから寝るところだよ」
そのまま、パタリとドアを閉めたわたくしは、ベッドへ戻りました。
今のおかしな残像を消すように、目を閉じます。
彼の亜麻色のふわふわした髪と涼しげな瞳を思い出し、一緒にMOMOを食べる絵を妄想し、
また会えるように、願わくば、
もっとたくさんのキラ星が見つかるように、祈るのでした。
(了)
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第三話 シヴァ神の甘い導き
ムンバイとも、ゴアとも、明らかに雰囲気の異なる地へ参りました。
ここはゴカルナ。
シヴァ神が牛の耳から生まれた(どういうことでしょう)聖なる地だそうです。
海へ出てみまして、わたくしは唾をはしたなくゴクリと音を立てて飲みこんでしまいました。
巡礼者です。
インド各地から。少しやんちゃな巡礼ワゴンに乗って。
あろうことか、全員、上半身裸、です。
腰に巻いていらっしゃいますのは、この地特産の布、ゴカルナロンギです。
「イケナイ!」
わたくしは直感でそう思いました。
何かが起こる、予感。誰かに出会ってしまう、予感だったのかもしれません。
ところが次の日から、巡礼者の皆さんがパタリといらっしゃらなくなりました。聖なるホリデーが終わったのです。
私は浜辺でひとり佇むしかありませんでした。
巡礼者も麗しの男子も現われず、まったく麗しくない男性から声をかけられるばかり。都度、走って逃げました。
(なぜ皆さん水泳用パンツをお持ちでないのかしら!嫌!)
わたくしは何をしているのでしょう。我に返り、恥ずかしくなりました。
ここはヒンズー教徒の皆さんが大切にしている聖地です。
わたくしも、心を清く、静かな心で過ごさなくてはならないのでしょう。
自らの趣味となりかけていたイケメン採取を少しの間忘れることにいたしました。
そうしてある夜、美しい月を眺め、神話の世界に思いを馳せておりました。
「飲みますか?ココナツジュース」。
ふいに静かな声がして、わたくしは顔をあげました。
はっ!!! 息が止まってしまうかと思いました。
彼が、神話の世界から出て来たかのように思ったからです。
誠実を光線に変えて目から放っている、そんな視線でした。
「あなたは、じゅ、じゅ、巡礼の方ですか?」
「はい。1日がかりで、バンガロールから来ました」。
なんという、偶然のめぐり合わせでしょう。
月のエネルギーでしょうか。それともあたりに寝ている牛たちのパワーでしょうか。
全身から知的なオーラが溢れており、くたりとした黒シャツも上品に、また、凡人がつけると難しいアイテム、ウエストポーチさえも輝いて見えました。
「ああ、あなたに会いに、わたくしはここへ来たのですね。」
絞りたてのココナツジュースを受け取りながら、思わず日本語でつぶやきました。
すると彼は、ゆっくり、頷いてくれました。
月の奇麗な、夢のような夜でございました。
ところが翌日。
前言撤回を余儀なくされる出来事がおこったのです。
到着時から気になっていた、インド風味の柄が素敵なドレス。
ひときわセンスのよさそうな一軒のお店に、ふらりと入ってみました。
そのとき、衝撃が走ったのです。
奥の部屋に、瞳がキラキラした、歯の白い、こんなに美しい青年が。
やっぱりあなたかもしれない・・・。 視線を離せずにいるわたくしに、少し照れた笑いを見せた彼は「この色なんて、お似合いだと思いますよ」。
優しく、柔らかくそう言うと、すらりとした手足を伸ばし、1枚のドレスを取って見せてくれました。
ああ、わたくしが今まで抱いてきた、インド人男性のイメージは一体なんだったのでしょう。
まったくの誤解をしておりました。
今は、脳がもうこのように反応します。
「インドじ・・」 「タイプ!」
言い終わらないうちにお手つきで反応します。
そんなことはどうでもよいのです。彼です。
彼が、これらのドレスをミシンで縫っていたのでした。
ああ、ダメです。完全に弱いのです。
このお顔でミシンって・・・。
迷わず、そのドレスを買ってしまいました。
早速部屋で着てみますと、何とも美しいシルエットが出るではありませんか。
明日、お店へ行って、着た姿を彼に見せようかしら。でも恥ずかしい・・。
鏡の中のわたくしは、頬を赤らめ、乙女のようにさえ見えました。
シヴァ神のパワーでしょうか。それともこのドレスの持つ不思議な力でしょうか。
そ・れ・と・も・・・。
(了)
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次回予告
アジア&中東編
アラブの王子は、果たして美和を夢の宮殿へとさらってくれるのか?
アフリカ編
乾いた大地で美和の心を激しく揺さぶるワイルドな魅力の持ち主とは一体・・・?
モロッコ編
美和に手をさしのべた砂漠の青年が乗っていたのは、ラクダ?それとも魔法のじゅうたん・・?
ふふふふふ
ではまたどこかで。