ボリパー ~そうだ、パーマあてよう。~
<世界一周1年4ヶ月目あたり・南米ボリビア>
チチカカ湖畔を走るバス。
ペルーからボリビアへ。スタンプポンポンで国境を抜け、
広い広いチチカカ湖をひたすら眺め、
のどかな所でバスを降りたかと思ったら
ボートに乗れと。
バスも専用ボートに乗せられる。
湖を渡り、また峠を越え、
着いたところが、ボリビアの首都・ラパス。
なんて所だ。なんて迫力。
山をぐるぐるぐーるぐる降りていって、街へ。
遥かに見える6000メートル級の山脈。
巨大テーマパーク? 秘密基地?
やってきたぜ。ラパス!!
ラパスに来て、びっくりした。
日本人の若い旅人がうろうろしている。
さすがウユニ塩湖の玄関口の街。
一人旅同士で仲良くなって、これから一緒にウユニ行くんです〜、とか言っちゃって、なんか、みんな若い。青春の香り。
それゆえ。ラパスには日本料理屋がある。これをかなり楽しみにしてきた私。
日本人パッカーがわんさかいる「けんちゃん」で、かなり久々(半年以上)の!寿司600円! 生姜焼き定食550円!ひゃっほーい!
そして、意外に苦戦した宿探しで、快心の一撃。
これはまったく期待してなかった、かなりかなり久々(フランス以来4ヶ月ぶり)の、バスタブ。 1泊1800円! ヒーハー!!!
はうーーー。しああせ。
青春バックパッカーの皆さんは1泊300円とか500円のドミトリーに泊まってるがね。
ごめんね。大人なんで。30代・エレガントパッカーなんで。
無理しないの。
ビバ、大人の旅!ふはははは!
で、本題。
ラパスといえば、そんな若き日本人バックパッカーの中で 「常識」があるという。
ペルーのリマで出会ったユウタ君に教えてもらった。というか、彼のモワモワのあたまがすべてを語っていた。
「ボリパー」。
そういうらしい。
南米諸国の中でも特に物価が安いボリビアで、500円程でかけられるパーマが日本人パッカーの間で流行っているのだと。
「へー……」。
ユウタ君の話にまったく気の無いフリをしてたけど、実は私、ソワソワしていた。惹かれていた。
髪型にめっぽう飽きやすい私が、ずいぶん髪をいじっていないのだ。
旅の最初の方でバンコクのシャレオツ美容院でパッツリ切って以来、
インドで…いやいや、イランで…いいかな、
アフリカで…まさか、パリで…お金が…
ということで、ただただ伸ばし放題になっていた。
どこの国でもふらっと床屋に入る相方が羨ましかったのだ。
うん。
その手があったか。
切らずに済むもんな。
「そうだ。パーマをあてよう」。
私はスキップした。
京都に行こう。くらいの爽やかさで。
でもね。私は30代エレガントパッカー。
路地の床屋なら500円つったって、こっちを選ぶわ。
サロン・セシリア。広くて素敵なこの空間で、パーマ2000円よ!おほほほ!
シャンプー台だってあるんだから。洗面台とかバケツじゃないんだから。
ってちょちょっ!耳に泡入りまくってるぅ!
まず伸ばしっぱなしで痛んでいた毛先を全部切ってもらう。
横で指示をしてるのが、セシリア。ヨーロッパで修行してきたという。一味違うオーラ。
おおっ!ボリビアにこんなものが! すきバサミ!
「ドイツで買ってきたのよ」と、私のつっこみに嬉しそうなセシリア。
さて、パーマ。ダイジョブですよね・・?
「あたりまえでしょ。街の床屋とはわけが違うのよ。パーマ液が上質なの。輸入なのよ!」セシリアが胸を張る。スタッフ総出。
うん。わかったよ任せるよ。 でも、そんな顔で巻かなくても・・。
いいねいいね。仕事丁寧。
・・・あ、れ? 私、こんな、細いロット、巻いたことも見たこともない、けど・・・・・・?だいじょぶかな。
巻き終わり。ラップしてタオルして、放置。
お釜かぶらないんだね。さすが。髪に優しくていいね。
みんなどこ?って思ったら、ご飯!&ドラマ観てるしっ! どんだけ平和!
こっちはプロのハサミで勝手におひげの手入れしてるし。 どんだけ自由!
ちーーん。はい時間よーー。流すよーーー。
って!!このビジュアル!ヤバくない?公開して平気?
えっ?似合う? 私、パンチ、イケる???
そうそう。 私が希望を出したイメージフォトは、これでしたの。
任せて!と自信満々だったセシリア。
お・・・・や・・・? これ・・・は・・?
イメージフォトと・・・・・ちょと・・・・・・ちが・・・・・
?????????!!!!!!!!!
ラブ イズ オーバー ~。
悲しいけれど~ 。
LOVE IS OVER。
訳 : 百年の恋も冷める。
そんな髪型。
「コンバンハ。 オーヤンフィーフィー デス。」
これ、30代・エレガントパッカーじゃないアルヨ。
50代・場末のスナックママ、の出勤前、アルヨ。
ひゅる~
えっと。。
私は、何がしたかったんだっけ。。。
髪型に飽きて変えたかっただけだ。
ちょっと冒険したかっただけだ。ひと夏の火遊び感覚だった。
お母さんごめんなさい。
それがこんなカッチカチのパーマ。絶対ずっと取れないやつじゃん!!
京都に行くくらいのルンルン気分だったのが、魔女セシリアによる決して消えない呪いをかけられたような気持ちになった。
ずーーーーーん。
大成功ね!と喜び合うセシリアと魔女一味に、ショックを悟られまいと引きつった笑顔で御礼を言い(小市民)、店を出た。
・・・・・
(帰り道)
あ、そういえば、
あなたもかけるって言ってたよね、ボリパー。
「うん。やめたよ」。
なぬ!??
ってゆうか目を見て話せ!逸らすな!半笑いやめろ!傷つく!
毎日が小春日和のようだった私たちの夫婦関係に、このパーマがもたらす影響は・・・・・いったい・・・。
つづく・・・
(MIWA)
★追記:4ヶ月後、続きを書きました。
→「そうだ、ストパーあてよう」