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マチュピチュこぼれ話 ~遥かな尾瀬~

<世界一周1年3ヶ月あたり・ペルー>

マチュピチュ。インカトレイル。4日間。

メンバー28人の中で最年長は、エリックのパパとママ、50代だった。

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とにかく、一日中歩くわけで、
その間色んな人とくっついたり離れたりして会話をしていくわけなんだけど、
初日、私はエリックの母、スーと結構長い時間並んで歩いた。
ほとんどはスーの話を聞いていただけだけれど。

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(この写真は、勇輝とスー。)

スーの話の85%が、愛息子エリックの話題だった。(残り15%が夫ケンの話題)
とにかく、息子が誇らしいのだなと、
そして立派に巣立ったことがちょっぴり寂しいのだなと
伝わってくるものだった。

そんな話を聞きながら、
私は、自分の父のことを思い出していた。
それでふとスーに言った。

「うちの父も、山歩きが好きでね。
こんなところ、連れて来れたらよかったけど、
60歳すぎて足が悪くなってきてしまってね。
もう無理だな。残念・・・」

too late.

確かに私、そう言った。
言ってしまって、ショックを受けてしまった。

事実そうなってしまった悲しさ、
そうなるまで親孝行できなかった申し訳なさ、
そして「 トゥーレイト。遅すぎる。」と 
諦めてしまってる自分自身に、ショックだった。

それから、まる1日ほど、私は父のことばかり考えていた。
こんな、東京からどんだけ遠いねんっていう、
ペルーの、山の中で。

本当かな、父はここに来れないかな、
無理なのかな・・・・って。イメージしてみた。

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若者中心のペースにはちょっとついていけないかな。

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そうだ、標高。 無茶したら高山病になるかもしれないしな。

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1日で1200メートル登ったり。こんなアップダウン。キツすぎるよな。

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朝晩冷えるテント泊も。芯から冷えてこたえるだろうな。

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危険もあるわけだしな。(突然の大規模な山崩落。おっかない!)


小雨が降りしきる山道を黙々と歩きながら
父と歩くインカトレイルを妄想していたら、
びっくりするほど不意に、ある光景が浮かんできた。


昔住んでた実家のベランダ。キャンピングセットの手入れをする父の背中。

私が中学3年~高校生のあたりだった。
やっと少し仕事に余裕ができた父が、やっと、
自分の趣味と家族との時間作りを始めたというとき。
田舎育ちの父は自然が好きで、山や川が好きで、
よくキャンプを計画した。
のに。
私は、一度も父とのキャンプに行かなかった。
一度も。

受験勉強とか、部活の合宿とか、いろいろあったんだけどさ、
ありえないよね。馬鹿な娘。
蹴飛ばしてやりたい。
目を見開いてよく見てみろと。
あの、父が一生懸命選び揃え、よく手入れされたキャンプ道具の数々。
行かないと突っぱねたときの、父の寂しそうな顔。


そして娘はいつの間にか34歳になり、
ペルー奥地の山の中で、父と山に登りたいと思っている。
なのに父はもう、本格的な登山ができる足ではない。

ねえ人生ってこういうこと?
これが、ことわざになるくらい皆が繰り返してきた愚かなこと?

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3日目。
小さな花々を美しいと思い、雨の切れ間の空の青にため息をつく。
この世界はとても素朴で素晴らしいものだって思う。


そして自分の中で1つのひらめきがあった。

「Too Late なんて、そんなこと、あるもんか」

急に、マチュピチュなんかじゃなくていい、って思った。
高尾山でも尾瀬でもいいじゃないか、って思った。

そうだよ。

ゆっくり父のペースでハイクして、目的地を目指して、景色や野の草花を楽しんで。
とにかく、やった!歩ききった!弁当がうまい!って思えるとこならどこだっていいって思った。
そんで温泉浸かって、ご当地の名産でも買って、
私が運転するからさ、車で寝てていいからさ、
のんびり帰って来ようよ。


うん。いい。
そうしよう。

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絶対行こうね。お父さん。

遥かな尾瀬~。

久々に、父の泣き笑い顔が見たくなった。


(MIWA)

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