戦場デリカテッセン・マイアミ 1皿目「サバ炭火焼きのオーヴァードーズ」
時は大殺戮時代。所はクリカラピークの麓の森の中。
いまや日はとっぷりと暮れ漆黒の闇が森の中を満たす。
森の中をこちらへ駆けてくる一人のサムライ。息が荒い。満身創痍。
「はっ ぜぇっ」
「はっ ぜぇー」
肩、腰の鎧には矢じりが刺さったまま。その姿はまさにオチムシャ。だが見ると、身に着けている装束は決して安物ではない。きっちり編み込まれ、磨き上げられた見事な塗りのそれはむしろ高級、丁寧な仕事のオーダーメイド。
必死に駆けてはいるもののスピードはない。息も絶え絶えとはこのことか。落ちる速度。と、違和感を感じたサムライは、ふと、足を止めて、
大きく深呼吸。
なんだ、この香りは。香ばしい!魚だ!魚!焼けている!
どこから来るのだこれは。いや待て、ここは山の中だぞ?
だがこの香りは…。
あたりを見回すが、やはり漆黒の、闇。
「いらっしゃいませ。」
闇の中から唐突に、女の声がした。
電子的ゲーム界隈で生きてます。文章は読むのも書くのも好き。久しぶりの創作は「読む講談」スタイルで、心躍る冒険譚をどうぞ。お楽しみいただければ幸いです。