トーマス・マン「魔の山」登場人物一覧表 第六章からの登場人物と主要人物
ハンス・カストルプ
本編の主人公。5歳から7歳の間に両親を失う。国際サナトリウム「ベルクホーフ」で療養中の従兄、ヨーアヒム・チームセンを訪ねる。自らも「ベルクホーフ」に入院。
ヨーアヒム・チームセン
ハンス・カストルプの従兄。ハンス・カストルプの母の腹違いの姉の息子。ハンスより背が高く、肩幅も広い。士官候補生。国際サナトリウム「ベルクホーフ」で療養中だったが山を降り入隊し少尉に任官するが、容態が悪化し再び「ベルクホーフ」に戻る。
マダム・ショーシャ
ロシア人。戸をガチャンと閉める。中くらいの背格好。赤みがかったブロンドの髪を編んで無造作に頭の周りに巻きつけている。名はクラウディア。キルギス人のような眼は、ハンス・カストルプが少年の頃に出会ったヒッペの眼と同じものであった。ダーゲスタンに旅立つ。
ブリギン氏
マダム・ショーシャの同国人で、彼女の旅の同行者。
ゼテムブリーニ
髪の褐色な垢抜けしたイタリア人の紳士。黒く美しい口ひげ。年齢は30歳から40歳。ハンス・カストルプはこの人物から異国の旅音楽師を連想する。文学者・人文主義者であり、ドイツの新聞にカルドゥチの追悼文を書いた。ゼテムブリーニは偉大な詩人で自由思想家のカルドゥチの弟子であることを自認している。婦人服仕立師ルカセクの下宿人。ナフタの論敵。フリーメイスンであることが発覚。
ナフタ
名はレーオ。ガリチアとヴォリニアとの境に近い小さな部落の出身。ユダヤ僧侶の弟子となるが折り合わず、イェズイト会「暁星学院」の給費生となり好成績で卒業。ティージスの修練道場に入るが、体調を崩す。イェズイト会に正式に所属し、オランダのファルケンブルグのイェズイト神学大学へ赴く(20歳)。体調を決定的に崩し喀血。「暁星学院」に送り返され、生徒監兼舎監、古典文学および哲学教師となる。体調や諸事情により出世コースから外れ、「ベルクホーフ」近郊で長期療養に入る。病人のためのギムナジウムのラテン語教師となる。婦人服仕立師ルカセクの下宿人。ゼテムブリーニの論敵。
ヒッペ
姓はヒッペ。名はプリビスラフ。ハンス・カストルプの13歳の時の高等中学校時代の1学級上の生徒。ハンス・カストルプとは年齢は同じ。マダム・ショーシャと同じキルギス人の眼をもっている。
「ハンス・カストルプの6章からの食卓仲間」
(かつてのゼテムブリーニの席にハンス・カストルプが座ることになった)
アントン・カルロヴィッチュ・フェルゲ
ペテルスブルクからきた保健会社調査員。善良らしいふさふさとした上ひげと飛び出したのどぼとけの持ちぬし。5章では重症患者だったが6章ではハンス・カストルプの親しい食卓仲間で散歩仲間。
フェルディナント・ヴェーザール
頭髪の薄い虫歯だらけのマンハイム人の商人。ハンス・カストルプと親しい食卓仲間。
メキシコからきたせむしの素人写真師
ハンス・カストルプの食卓仲間。メキシコ語しか分らないので寂しい思いをしている。
ジーベンビュルゲンからきた初老の婦人
ジーベンビュルゲンの老嬢。頬に不吉な赤みのさした気の毒な人物。「義兄」について語る。6章ではハンス・カストルプの食卓仲間。
ヴェンツェルさん
ボヘミア人。ハンス・カストルプの食卓仲間。自身の死を断言しているがまだ死なない。マグヌス氏としばしば口論。
マグヌス
ハンス・カストルプの食卓仲間。ビール醸造業者。乾草の束みたいな鼻ひげを生やしており、文学に興味がないのでゼテムブリーニの軽蔑の対象になっている。
マグヌスの細君
ハンス・カストルプの食卓仲間。マグヌスの席の差し向かいに座っている。
「ナフタ関連」
婦人服仕立師ルカセク
ルカセクが香料店主人から借りている家にゼテムブリーニとナフタが下宿している。
仕立師ルカセクの召使の少年
仕立師ルカテクの召使の少年
エーリア・ナフタ
レーオ・ナフタの父。ユダヤ法典の規定に従っての家畜屠殺権を与えられたユダヤ教関係役人。律法研究家。宗教対立に関わる民衆暴動により惨殺される。
エーリア・ナフタの大力の下男
力士タイプの若者でエーリア・ナフタのと殺業を手伝う。
ラーエル・ナフタ
レーオ・ナフタの母。
レーオ・ナフタの四人の弟妹
レーオ・ナフタの冷淡さによって貧民救済所行きとなる。
ユダヤ僧侶
レーオ・ナフタにヘブライ語、古典語、数学を指導するが、政治思想に目覚めたナフタと袂を分かつ。
オーストリアの国会議員になっていたある社会民主主義者とその息子
レーオ・ナフタに革命思想の影響を与え、政治的興味と社会批評傾向を注入する。
ウンターペルテインガー
イェズイト派教父。レーオ・ナフタの才能を認め「暁星学院」に迎える。
「ハンス・カストルプの親戚等・関連人物」
チームセンの上にいる粗暴で狂信的な曹長
チームセンに対しロマンティックで複雑な態度で接する
チームセン夫人(ルイーゼ叔母さん)
ヨーアヒム・チームセンの母。ハンス・カストルプの叔母。
ミセス・マクドナルド
ヨーアヒム・チームセンの居た部屋に入院している。男の子の写真を手にしたまま死亡。
チームセン夫人の呼んだ若い牧師
のりの利いた襞飾りをつけていなくて、法衣の襟から二条の麻布を垂らしていたためにハンス・カストルプを失望させる
葬儀社の男
短いフロックコート様の黒服を着こんでいる。
ジェイムズ・ティーナペッル
ハンス・カストルプの叔父。ティーナッペル領事の子。40歳に近い脚の長い紳士。第二章から登場しているが、このたび「ベルクホーフ」にハンス・カストルプを訪ねる。
ジェイムズ・ティーナペッルの妻
ジェイムズ・ティーナッペルと同じ階級出身で、文化的に洗練されている妻
レーディシュ夫人
ポーランドの工業家の妻。5章でも淫らな噂があったが、6章ではジェイムズ・ティーナッペル叔父を魅了する。
「「ベルクホーフ」職員・関係者」
ドクトル・ベーレンス顧問官(ラダマントュス)
国際サナトリウム「ベルクホーフ」の院長。ゼテムブリーニによって地獄の裁き手「ラダマントュス」に見立てられている
クロコフスキー
助手。患者たちの精神分析を行う。35歳くらい、肩幅が広く肥っている
白い帽子をかぶって鼻にかけた鼻眼鏡の紐を耳のうしろに垂らした看護婦(ベルタ看護婦、アルフレーダ・シルトクネヒト)
新教(プロテスタント)の看護婦。ヨーアヒム・チームセンの看護を担当。
フォン・ミュレンドンク嬢
名はアドリアティカ。婦長さんと呼ばれる。きいきい声。旧貴族出。40代のいじけたような貧弱な体つき。不格好でベルトのついた白いエプロン式の病院服を来ている。
だんまり看護婦
目盛りのない体温計のこと。医者は物差しを当てがって調べて、熱のカーブを記入する
トゥルンヘル
マッサージの先生。筋骨たくましい巨漢。
「患者たち」
シュテール夫人
カンシュタットの音楽家の細君。かなり重症。非常に無教養。
イルティス夫人
とんがり鼻。ふとってそばかすだらけである。
ふたりとも(Tous-les-deux)
「ふたりとも」と呼ばれているメキシコ人の女
長男の看護の為に「ベルクホーフ」にきている。つづいてやってきた次男も発症
うぶ毛の生えたような顔色をして、頬を弱弱しくほてらせた、見栄えのしない女(エンゲルハルト嬢)
バタつきの巻きパンとコーヒーのみの朝食をとっている。ハンス・カストルプは彼女の存在に女裁縫師を感じた。本当はケーニヒスベルクの官立高等女学校の先生。
イギリスの未婚婦人(ミス・ロビンソン)
中年で、非常に醜く、骨と皮ばかりのかじかんだような指をしている
薄いくちひげを生やして、何か味の悪いものでも口にふくんでいるような顔つきをした若い男(ドクトル・ブルーメンコール)
完全に黙りこくって食事している
ヘルミーネ・クレーフェルト
気胸でひゅうという音を出す女。「片肺クラブ」の誇り
マルシャ
顔色はつやつやしく、胸は豊かに盛り上がり、栗色の髪に見事なウェーブをつけ、子供のような丸いとび色の眼をして、美しい手に小粒のルビーをはめている。ロシア語を話す
ザーロモン夫人
アムステルダムからきた肉付きの豊満な女。
アルビンさん
ブロンドの青年。ひょろ長い青二才で、子供のようなバラ色の顔をして、耳の横に小さい頬ひげを生やしている。ご婦人たちに大人気。
ポリプラキシオス
ギリシア人。父がピレーウスの染料工場主である若い化学者。
アミ―・ネルティングの同性の愛人
アミ―・ネルティングとポリプラキシオスができていることに対して嫉妬。
重症の婦人
スコットランド生れ。肺壊疽に冒されている。
シェーンフェルト夫人
ベルリンからきた赤髪で赤眼の患者。「まあすばらしい」
免許飛行士。ドイツ海軍少尉
女たらしの鷲猟の猟師
シュミッツ
工場支配人。几帳面で努力家。
ローゼンハイム
散歩道で痰を吐いた事をシュミッツに非難されるだらしない男
ペレス夫人
バルセロナからきたシュミッツとローゼンハイムのマドンナ。
「重症患者たち」
ライラ・ゲルングロース
危篤患者である少女。父である退役少佐は頑健な偉丈夫だが、母親のほうは人間性に屈折がある。
フリッツ・ロートバイン
20歳になるかならぬかであるが頭がすこし禿げ上がっており白髪もある。商売根性が強い
チンマーマン夫人
チューリヒの医者によって肺にガスを詰められすぎた笑い上戸の婦人。
ふたりとも(Tous-les-deux)の次男
名はラウロ。ひどく壮士芝居ふうな身振りの美青年。
「フレデリック大帝校」のテディ少年
14歳の上品な少年。付き添い看護婦のいる金持の孤児。
ナターリエ・フォン・マリンクロット夫人
仇っぽいおしゃれ婦人だが四百四病を負わされている。
カーレン・カールシュテット
ドクトル・ベーレンス顧問官のプライベートの院外患者。19歳の弱弱しい少女。ハンス・カストルプとヨアヒム・チームセンは彼女を見舞い、スケートやボブスレー見物に連れていく