トーマス・マン「魔の山」登場人物一覧表 第七章からの登場人物と主要人物
ハンス・カストルプ
本編の主人公。5歳から7歳の間に両親を失う。国際サナトリウム「ベルクホーフ」で療養中の従兄、ヨーアヒム・チームセンを訪ねる。自らも「ベルクホーフ」に入院。
ヨーアヒム・チームセン
ハンス・カストルプの従兄。ハンス・カストルプの母の腹違いの姉の息子。ハンスより背が高く、肩幅も広い。士官候補生。国際サナトリウム「ベルクホーフ」で療養中だったが山を降り入隊し少尉に任官するが、容態が悪化し再び「ベルクホーフ」に戻る。喉頭結核の悪化により死亡。
マダム・ショーシャ
ロシア人。戸をガチャンと閉める。中くらいの背格好。赤みがかったブロンドの髪を編んで無造作に頭の周りに巻きつけている。名はクラウディア。キルギス人のような眼は、ハンス・カストルプが少年の頃に出会ったヒッペの眼と同じものであった。ダーゲスタンに旅立つ。7章でペーペルコルン氏と共に「ベルクホーフ」に戻る。
ペーペルコルン氏
年輩のオランダ人。ジャヴァでコーヒー園を経営していた。名はピーター。マダム・ショーシャと一緒に「ベルクホーフ」に現れハンス・カストルプに衝撃を与える。捉えどころはないが、風変りで貫禄十分であり、「ベルクホーフ」の人々の関心を集め、人心を掌握。ゼテムブリーニ、ナフタとはまた違った悪魔的人物。
ブリギン氏
マダム・ショーシャの同国人で、彼女の旅の同行者。特に重要な登場人物ではなかった。
マレー人の従僕
ペーペルコルン氏の従僕。
ヒッペ
姓はヒッペ。名はプリビスラフ。ハンス・カストルプの13歳の時の高等中学校時代の1学級上の生徒。ハンス・カストルプとは年齢は同じ。マダム・ショーシャと同じキルギス人の眼をもっている。
ゼテムブリーニ
髪の褐色な垢抜けしたイタリア人の紳士。黒く美しい口ひげ。年齢は30歳から40歳。ハンス・カストルプはこの人物から異国の旅音楽師を連想する。文学者・人文主義者であり、ドイツの新聞にカルドゥチの追悼文を書いた。ゼテムブリーニは偉大な詩人で自由思想家のカルドゥチの弟子であることを自認している。婦人服仕立師ルカセクの下宿人。ナフタの論敵。フリーメイスンであることが発覚。
ナフタ
名はレーオ。ガリチアとヴォリニアとの境に近い小さな部落の出身。ユダヤ僧侶の弟子となるが折り合わず、イェズイト会「暁星学院」の給費生となり好成績で卒業。ティージスの修練道場に入るが、体調を崩す。イェズイト会に正式に所属し、オランダのファルケンブルグのイェズイト神学大学へ赴く(20歳)。体調を決定的に崩し喀血。「暁星学院」に送り返され、生徒監兼舎監、古典文学および哲学教師となる。体調や諸事情により出世コースから外れ、「ベルクホーフ」近郊で長期療養に入る。病人のためのギムナジウムのラテン語教師となる。婦人服仕立師ルカセクの下宿人。ゼテムブリーニの論敵。
エレン・ブラント
19歳。デンマークのフューン島オーデンゼ(アンデルセンの出身者として有名)生れ愛らしい亜麻色の髪のデンマーク娘であるが霊能力を有し「ベルクホーフ」に一大オカルトブームを巻き起こす。
ヘルミーネ・クレーフェルト
気胸でひゅうという音を出す女。「片肺クラブ」の誇り。7章ではエレン・ブラントの友達兼パトロンとなる。
ホルガー
エレン・ブラントの仲良しの霊で、浮世を離れたエーテルのような存在。エレンの守護神にして詩人。ホルガ―のモデルが詩人でもあったアンデルセン(エレン・ブラントと同じくフューン島オーデンゼ出身)であると考えるとエレン・ブラントの霊能力自体が潜在意識的に予定された茶番ではないかという見方も可能で、この後「魔の山」で語られる集団恐慌状態への序章・通奏低音となっているとも考えられる。
フライア
エレン・ブラントの父の愛犬。ブルドック。霊的感能力を有している。
ゾフィー
エレン・ブラントの姉。結婚してアメリカにいたがオーデンゼに幻影として現れ、同時刻にニュージャージーで死亡していた。
カーレン・カールシュテット
ドクトル・ベーレンス顧問官のプライベートの院外患者。19歳の弱弱しい少女。ハンス・カストルプとヨアヒム・チームセンは彼女を見舞い、スケートやボブスレー見物に連れていく。ハンス・カストルプはエリー・ブラントの微笑からからカーレンのことを思い出す。
「ハンス・カストルプの6章からの食卓仲間」
(かつてのゼテムブリーニの席にハンス・カストルプが座ることになった)
アントン・カルロヴィッチュ・フェルゲ
善良な忍従者。ペテルスブルクからきた保健会社調査員。善良らしいふさふさとした上ひげと飛び出したのどぼとけの持ちぬし。5章では重症患者だったが6章ではハンス・カストルプの親しい食卓仲間で散歩仲間。
フェルディナント・ヴェーザール
頭髪の薄い虫歯だらけのマンハイム人の商人。ハンス・カストルプと親しい食卓仲間。
メキシコからきたせむしの素人写真師 ハンス・カストルプの食卓仲間。メキシコ語しか分らないので寂しい思いをしている。
ジーベンビュルゲンからきた初老の婦人
ジーベンビュルゲンの老嬢。頬に不吉な赤みのさした気の毒な人物。「義兄」について語る。6章ではハンス・カストルプの食卓仲間。
ヴェンツェルさん
ボヘミア人。ハンス・カストルプの食卓仲間。自身の死を断言しているがまだ死なない。マグヌス氏としばしば口論。
マグヌス
ハンス・カストルプの食卓仲間。ビール醸造業者。乾草の束みたいな鼻ひげを生やしており、文学に興味がないのでゼテムブリーニの軽蔑の対象になっている。
マグヌスの細君
ハンス・カストルプの食卓仲間。マグヌスの席の差し向かいに座っている。
「「ベルクホーフ」職員・関係者」
ドクトル・ベーレンス顧問官(ラダマントュス)
国際サナトリウム「ベルクホーフ」の院長。ゼテムブリーニによって地獄の裁き手「ラダマントュス」に見立てられている
クロコフスキー
助手。患者たちの精神分析を行う。35歳くらい、肩幅が広く肥っている。エリー・ブラントに入れ込んでオカルトに耽溺する。
白い帽子をかぶって鼻にかけた鼻眼鏡の紐を耳のうしろに垂らした看護婦(ベルタ看護婦、アルフレーダ・シルトクネヒト)
新教(プロテスタント)の看護婦。ヨーアヒム・チームセンの看護を担当。
フォン・ミュレンドンク嬢
名はアドリアティカ。婦長さんと呼ばれる。きいきい声。旧貴族出。40代のいじけたような貧弱な体つき。不格好でベルトのついた白いエプロン式の病院服を来ている。
だんまり看護婦
目盛りのない体温計のこと。医者は物差しを当てがって調べて、熱のカーブを記入する
トゥルンヘル
マッサージの先生。筋骨たくましい巨漢。
黒い服に白いエプロンをかけた広間嬢
侏儒。名はエメレンティアであることが判明。ペーペルコルン氏によって愛称はエムヒェンとなった。
「患者たち」
シュテール夫人
カンシュタットの音楽家の細君。かなり重症。非常に無教養。名はカロリーネ。
イルティス夫人
とんがり鼻。ふとってそばかすだらけである。
エンゲルハルト嬢
バタつきの巻きパンとコーヒーのみの朝食をとっている。ハンス・カストルプは彼女の存在に女裁縫師を感じた。本当はケーニヒスベルクの官立高等女学校の先生。
エジプトの王女
「ベルクホーフ」が国際色豊かであることを示す好例である入院患者。
ランダウアー夫人
ルーマニア系ユダヤ人。エジプトの王女からの愛情を受ける。
パラヴァント検事
ドルムントからきた。今度はエジプトの王女に夢中。それを鈍らせるための数学にも夢中。
去勢した黒人で病弱な男
人並以上に人生に執着を感じている
ポポフ
痩せておとなしい教師。やせておとなしい新妻と一緒に上級ロシア人席に座っている。
アルビンさん
ブロンドの青年。ひょろ長い青二才で、子供のようなバラ色の顔をして、耳の横に小さい頬ひげを生やしている。ご婦人たちに大人気。モンテカルロのカジノの常連であるらしい。交霊術にも詳しい。
ドクトル陳富
言葉が分らないのにペーペルコルン氏の話に喝采している。ギャンブルは得意。
レーヴィ―嬢
「片肺クラブ」メンバー。象牙色の顔をしている。
オーストリアの田舎からきている、前身は彫刻家
経済政策的な計画の立案に夢中になっている
ミンスクからきた品のよい田舎貴婦人
軽症で3カ月のみの滞在のはずだったが、一般に広まっている精神状態の影響で街のフランス人経営のブラウス店で女店員相手にひどい言い争いをして、病状が悪化し、不治の病人となる。
ザーロモン夫人
アムステルダムからきた肉付きの豊満な女。
袖の短すぎる服を着て厚い丸い玉の眼鏡をかけた小学生くらいの少年
以前はよく食べるだけだったが、一般に広まっている精神状態の影響で錯乱的発作に至る。
ヴィーデマン
以前は商人であった。歳は30くらい。ユダヤ人排斥者。ゾネンシャインと畜生同士のようなものすごい掴み合いを演じる。
ゾネンシャイン
元来は商人。非常に重症なうえに病的に神経質。ヴィーデマンと畜生同士のようなものすごい掴み合いを演じる。
ポーランド人のグループ
「ベルクホーフ」内に小さな植民地を形成しているポーランド人グループ。名誉棄損問題から相互に決闘している。構成員はフォン・ツタフスキー、チーシンスキー、フォン・ロジンスキー等。