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現実はイメージとは違う~ヨット部とフェラーリ

学生の頃ヨット部に所属していた。

ヨットと聞くと金持ちの優雅な遊びをイメージするだろう。僕も自分がやるまではそう思っていた。

しかし大学の体育会系ヨット部というのはそういったブルジョいイメージとは対極に位置しており、むしろ蟹工船の世界観の方が近い。暑くても寒くても気絶するほど練習して、時には船ごとひっくり返ったりもする。

ヨットは金がかかる、これは事実だ。海の近くで合宿を張るので宿泊費や食費がかかるし、どこへ遠征に行くにもヨットを運ぶためのトラック代など交通費がかかる。レース中に他の船と接触したら壊れるから直さなきゃいけないし、後輩には常におごらなきゃいけない。

どうやってこれらお金を調達しているかというと、バイトである。

僕は市場で競り落とされたブリを魚屋さんまで運ぶバイトをずいぶん長いことやっていた。毎朝元気に3時から8時である。週末はヨット、平日はブリ運搬。「おい、地獄さいくんだで!(蟹工船の有名な書き出し)」だ。それでもヨット部のおかげで4年間たのしかった。

そんなヨット部の後輩たちが江の島でレースをしているというので応援に行ってきた。

懐かしい光景です
走って行ったら逆に応援されてしまった

体育会の部活なので、いまの時代でも上下関係が極道張りにしっかりしている。卒業生というだけでビシッと背筋を伸ばして挨拶してくれる。ジョギングの途中で寄っただけだったので手ぶらで来てしまってすみません。

出艇を眺めたあと、そのまま鎌倉あたりまで走ったのだけれど、途中の駐車場にフェラーリが集まっていた。

見渡す限りぜんぶフェラーリ。奥に見えるのは江ノ島、海に浮かぶのはヨット

フェラーリと聞くと金持ちが優雅に乗っている姿を想像するのだけれど、もしかしたらヨット部と同じで苦労の方が多いのかもしれない。

維持するの大変そうだしぶつけたら直すのも高いだろう。やはり「地獄さいくんだで」なのだろうか。そう考えるとやさしくなれる。

こういう視点を持つことができたのもヨット部にいたおかげである。現役生はバイトたいへんだと思うけど頑張ってもらいたい。


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安藤昌教
ご支援いただいた金額はだいたいまとめて募金していますが、生活が立ちゆかなくなったら食費に回すかもしれません。