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【短編】怪物
まるで駄目な一日だった。
何をすべきか理解しているのに動くことができず、仕事は手付かずのままに業務時間を終えた。こんな私に対しても、給与が発生しているのだと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
ネガティブな感情はヘソの下当たりから、煙のようにゆっくりと体内を昇ってくる。そして、喉の奥当たりでジッと動かなくなる。
まるで炭酸飲料をたらふく飲んだ後のような圧迫感と、喉の奥の違和感に吐き気がする。客観的に自身を見ればそんな悲観的な状況じゃないと、理解しているつもりだ。でも、作り笑いの一つもできる気分ではなかった。
別に泣きたい訳ではないし、涙が出そうな訳でもない。
ただただ、悲しく、悔しく、忌々しかった。
自分という存在が忌々しくて仕方なかった。
誰にも会いたくなかった、今の私の私自身に対する評価は最低だ、まるで人災だ。人と接しても、迷惑を掛けるだけだろう。どんな事象が起きても悪い方向に自責化できることだろる。
明日になれば何か変わるだろうか、案外そんなものかもしれない。
ただ「いま」という恐怖を乗り越えなければ明日には辿り着けない。
恐ろしい。
何もしなくても時間は過ぎていく、それはあまりにも残酷だ。
何も成せていないことの証明に他ならないからだ。
時間が解決してくれるなんて甘言もあるが、そんなことはない。時間の経過に伴って喉の奥の怪物は肥大化していく。息苦しい、吐き気がする。
知っている、眠りにつけば明日になれば怪物はへその下へ帰っている。
大丈夫、大丈夫
少しの息苦しさがなんだ、眠ってしまえばいい。
明日の私はいつもの調子で軽口を叩いている。
きっと、大丈夫
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怪物はいつ目覚めるかわからない。
ただいつも私を監視していることは確かだ。
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