エッチってドッキリだと思っていた話
いきなりで驚かせるかもしれないが、私は「性行為」というものはこの世に存在せずにドッキリだと思ったことがあった。もちろん、そんな考えは誤りだと理解している、なんなら今は子どももいるパパである。
本noteでは思春期の男という生き物が如何に愚かであるかを伝えたい。そして、それとともにあの無尽蔵の好奇心と行動力を、ミリでいいから思い出したい。
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hige_22。
14歳、中学2年生。
童貞。
当時の私は部活動には所属していないし、学業に関しては有り難いことに小学校高学年の頃から学習塾に通わせてもらっていたため不自由もなく
ただただ暇を持て余しており、渡された昼食代を節約して細々とゲームセンターに通うぐらいしか楽しみがなかった。
彼女なんて浮かれた話も当然なかった。
しかし、周囲の友人たちは違った。やれ手を繋いだだの、チューしただの、チョメっただの…。私は嫉妬することもせず、ただただ涎を垂らすがごとく「うらやまじい!!!」と話を聞いていた。
そうやって、性に対する期待は膨らむ一方、特に何事もなく時間は過ぎていき、私は高校1年生になっていた。当時、仲の良かった友人Mはバイト先のファミレスで女の子に手を出しまくっており、その話をよく聞かしてくれた。
彼はよく言っていた、「遊んでるうちに”流れ”で」。
は?
ナガレ…?
どれだけ考えても理解することができなかった私は、合気道などの武術の技の一種で「流れ」と呼ばれるものがあるんだなぁ、たぶん寝技なんだろうなぁ…ということで思考をストップさせた。
これは童貞の防衛本能だ。
わかっている、武術なんかじゃないって。
女性とのやり取りの中で、相手の仕草や表情から感情を読み取り、「合意を感じ取る」、という高等技術だということを。
ただそんな高等技術と自分は縁もゆかりもない人間であると、そう認識することが悔しくて悲しくて、だからわからないフリをしただけなのだ。
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そんな私にも彼女ができた。
今思い返しても勿体ないぐらいの美人だった。部活帰りに自転車で二人乗りしたことがきっかけで急接近したんだっけか。
甘酸っぱい思い出である。
この彼女とは約2年半、つまり高校生活のほとんどをともに過ごすこととなるのだが付き合ってしばらく経っても、私は「ナガレ」を習得することはできていなかった。
相も変わらず「ルーキー(童貞)」だった。
当時の私はとにかくパワフルだった。彼女が電話越しに寂しげにすれば、夜中だろうとなんだろうとすぐさま自転車に飛び乗り、40分ほどかけて彼女に会いに行った。
実家なので夜中に家に入るなんてことはできず、ただ二階の部屋の窓から見える彼女に手を振るだけ。それだけのことの為に、いつも全力だった。いま思えば行き場のないリビドーを発散していたのかもしれない。
やがて私は彼女と初めてのキスをするのだが、
そこでも至る、ことはなかった。
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悶々としたものばかりが溜まる一方であった。
そんな中、途端に不安になった。私は生で性行為を見たことがない、映像や絵でしか見たことがない。学校はもちろん、親にも教えられたことではあるが「存在を観測していない」。
シュレーディンガーの猫を思い出した。
観測されない限り、「生きていて」「死んでいる」。
私の中で「性行為」は「ある」けど「ない」のだ。
もし、なかった時はどうしよう。
「ナガレ」とやらを理解して彼女の衣服を脱がして、生まれたままの姿になって抱き合い、いざその時にあるはずのソレがなく、戸惑う私を前に
彼女はヒヒッと笑い
気が付けば「ナガレ」の話をしてくれたMくんや、保健体育の授業を務めた先生、そして軽はずみにそういうことをしてはダメだぞと真剣に教えてくれた両親、色んな人たちが周囲に立っていて
テッテレー!ドッキリ成功!
「セックスはありませーんっwww」
ってなったらどうしよう。
私は正気を保つことができるだろうか。
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行き場を失ったエネルギーは脳内で暴走し、頭をパンクさせた。
こんなことはあり得ないとわかっている。
わかっているが、、、
いまだ至れないことの原因がそうだったのであれば、自分が男として不足しているからだ、なんて思わなくていいから気が楽になったのだ。
結局、その後彼女と初体験を普通に終えた。
ドッキリでもなんでもなかったし、なんとなく「ナガレ」も理解した気がする。
しかし、それとともに体に秘めていた膨大な行き場のないエネルギーは消失してしまったように思う。具体的な欲求、性欲に変換されてしまったのだ。
思えば、思春期の全能感と無力感、そしてただただ走り出すしか選択肢を持っていなかったあの瞬間は素晴らしいものだった。
いやー、青春って、いいものですねぇ…。
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