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ショートショート「1分しまうま」
「知ってるの!
…やだ、ごめんなさい」
嬉しさの余りに初対面の相手に敬語を忘れてしまった。だが仕方がないだろう。何故なら、初めてのことだから。
「いいの!…ってことはあなたも知ってるんですね」
向こうも気持ちは同じようだ。少し前とうってかわって、緊張のほぐれた表情をしている。もはや早く話の続きをしようという顔になっている。私も同じ気持ちです。
「こんなマイナー作品を好きっていう同士と出会えるなんて」
「私も!何から話をしたらいいことやら」
「そのキーホルダー付けてるってことはN男推しですか」
実は私も同じくN男を推している。主人公のことを、陰で体を張って守っていた健気な男だ。
「そう、この作品で一番魅力的なのがN男だなって」
「主人公とくっ付いて欲しいって思っちゃいますよね」
「え…いや…そういう目線では見てないかな」
「あ…」
空気が冷めていく音が聞こえた気がした。
馬が合う、と思ったがそんなことはなかった様だ。
怒涛の1分間であった。
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410文字
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