
道標
父は化学を生業とし
母は看護を生業とした
現象の中に
救済の中に
確かなものを探し
もがいたであろう 若い心
やがてその心は
二人の男子を産み 育て 死んだ
その口から
色々の言葉を聞いた記憶はあるが
思えば嘘を聞いたことは一度もなかった
親は子に 生涯
ひとつの嘘も言わなかったのだ
ふたりが死んで、十余年……
たったそれだけのことに気づくのに
私はそれだけの歳月を要した
父は化学を生業とし
母は看護を生業とした
現象の中に
救済の中に
確かなものを探し
もがいたであろう 若い心
やがてその心は
二人の男子を産み 育て 死んだ
その口から
色々の言葉を聞いた記憶はあるが
思えば嘘を聞いたことは一度もなかった
親は子に 生涯
ひとつの嘘も言わなかったのだ
ふたりが死んで、十余年……
たったそれだけのことに気づくのに
私はそれだけの歳月を要した