記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画『ぼくのお日さま』あらすじ感想

映画『ぼくのお日さま』を観てきました。

監督:奥山大史
2024年9月13日公開

奥山大史が監督から脚本、撮影、編集までを手掛けた商業映画としてのデビュー作。

10月末でも劇場でたくさんの人と観ることができて 、作品の人気を肌で感じてました。


あらすじ



ホッケーを習う小学6年生の少年とフィギュアスケートを習う中学1年の少女、そしてコーチの3人がスケートを通じて心を通わせた日々が描かれています。

雪の降る季節、都会の喧騒から離れたある田舎街でのこと。

屋内のスケートリンクでは、子供たちが大勢集まってアイスホッケーやフィギュアスケートの練習をしていました。

上手く言葉を発することのできない少年タクヤ(演:越山敬達)は、その日も苦手なホッケーの練習に参加します。

みんなのやりたくないキーパーを任されるタクヤ。

体に傷を負いながらも彼はホッケーの練習をしていました。


ですが同じコート内でフィギュアスケートの練習に励む少女さくら(演:中西希亜良)との出会いが、タクヤにとっての転機に。

タクヤはさくらの美しい滑りに惹かれていきます。

そしてそんなタクヤに気付いたのは、さくらの指導をしていたコーチの荒川(演:池松壮亮) でした。


その後、さくらの見様見真似でスケート練習を始めたタクヤに荒川は声をかけます。

荒川はタクヤの恋の応援を込めて、スケート練習の指導を開始。

そうして始まったタクヤの個人練はやがて、さくらとペアになって出場するアイスダンスの大会に向けた特訓へと変わっていくのでした。


できるようになっていく過程の宝の時間


静かな田舎で、ひたすら自分の心惹かれるものに夢中になる子供たちの姿。

できなかったことが少しずつできるようになっていく経験は、その時間こそが宝のようでした。

すでに美しい滑りを見せるさくら。

彼女を追いかけるようにしてタクヤは、スケートの練習にのめり込んでいきます。

それでもなかなか思うように滑ることのできないタクヤですが、その分一つできるようになった時の喜びはとても大きなものでした。


ある程度まで達した後に、毎日僅かな修正を入れながら研磨していく期間は必ずやってくるもので。

けどまだそこに至っていない、目に見えて成長が感じられるというのは一番楽しい時期なのだと、さくらとタクヤを見ていて感じたことです。

どちらの時期が良い悪いではなく、できるようになっていく過程の楽しさや成長するタクヤのキラキラした眩しさに、心がスーッと洗われるようでした。

・・・

そしてタクヤの感動し喜ぶ純粋な姿に、感化されていく荒川の姿。

さらにそのそばでは荒川に向けるさくらの視線も変化していきます。

それぞれの想いの行方。

タクヤ、さくら、荒川それぞれに抱くものがありながら、上手く伝えることができないもどかしさ。

そんな彼らを繋いでいたのがフィギュアスケートでした。

・・・

大人と子供の間で関係を育んでいくことの素晴らしさと、その脆さ。

あたたかいだけじゃない、繊細な氷のような絆が描かれています。

簡単にヒビの入ってしまうことが映し出されているからこそ、あったまった部分に深く沁みこんでくる冬の僅かな間の三人のドラマがありました。


みんな誰かのお日さま

タイトルの『ぼくのお日さま』。

タクヤ、さくら、荒川の三人に、その時々のお日さまのような存在がいたと思う作品でした。

子供が大人に向ける眼差しだけでなく、大人から子供に感じる光。

荒川はケガが理由で引退した元フィギュアスケート選手です。

スケートが楽しくて仕方のないタクヤの様子は、荒川に当時のことを思い出させていきます。

原石を見つけたと言わんばかりにタクヤに指導する彼の様子は、この田舎街での新たな生きがいを見つけたようでした。

・・・

鑑賞後、自分にとってお日さまのような人は誰だろうと

また自分は誰かのお日さまのようになれているのかなと思ったりしてました。

ギラギラ、ほんわり、しっとり、いろんな光を感じる人たちがいること、浮かぶことにジンワリ。

忙しない日常から距離をおいて、内面を見つめるきっかけをもらえる作品です。


雪に覆われたあたたかい世界

タクヤの抱えている吃音(きつおん)は、言葉の一部で詰まったり、同じ部分を連発したり、伸ばしたりなどとスムーズに話すことができない状態をいいます。

友達や家族との会話や授業中の音読など、上手く言葉を発せなくても、話さなくちゃならない場面は毎日たくさんやってきます。

一言一言一生懸命に伝えようとするタクヤ。

音読の時間は少し緊張の走るものでした。


それでも彼の周りの人たちはまったくなかったわけではないですが、吃音のことを執拗にいじらず、普通に会話が進んでいきます。

自分の気持ちを周りと同じスピードで話すことは、タクヤにとって簡単ではありません。

そのため大勢の生徒がいるアイスホッケーでは、自分の気持ちが上手く伝えられず、誰もやりたがらないキーパーを任されてしまっていました。

それでもさくらに惹かれてフィギュアスケートを始めてからは、そういうことも無くなっていきます。

タクヤの話そうとしている様子を見ると、彼の言葉を聞き逃しちゃいけないという気持ちに。

言葉がスルスル話せることも当たり前じゃないんだと。

タクヤたちの日常に触れて、自分も荒川とはまた違う影響を受けていました。

・・・

新しいことにチャレンジしたり、ドキドキワクワク落ち込むことなど、いろんな刺激の中で少しずつ成長していくタクヤ。

どんなことがあっても完全に光の無くなることはない、必ずどこかしらに光を感じられる『ぼくのお日さま』の世界。

氷がとけても春が来ればまた新しい希望を感じられる、ドキッとしながらのエンディングを迎えていました。




いいなと思ったら応援しよう!