Happy, and Victorious New Year!
2022年2月にロシアによる全面侵攻が始まってから、心から幸せで希望に満ちたお正月を迎えることはありませんでした。
この時期になると思い出すこと、そして、取り出して眺めるものがあります。
「思い出すこと」とは。
2022年の暮、ゼレンスキー大統領は米国に飛び、議会で支援の継続を求める演説を行います。
https://edition.cnn.com/videos/world/2022/12/22/zelensky-us-congress-speech-full-sot-vpx.cnn
書き起こしはこちら。ギフトリンクで全文が読めるようにしてあります。
ゼレンスキー大統領はこの演説を、以下のように締めくくります。
Merry Christmas and a happy, victorious New Year.
日本語ではHappy New Year! は「あけましておめでとう」「新年おめでとう」ですから、そこにvictorious(勝利を得た、勝利の)という形容詞が入るだけでぐっと訳しにくくなるのですが、ニュアンスとしては
「ウクライナは新年以降、勝利に向けて踏み出す」という決意表明に近いものだったと思われます。
しかしご存じの通り、2023年の新年も、2024年の新年も、ウクライナにとっては厳しく辛いものでしたし、2025年の新年を前にしても明るい兆しは見えてきません。
一方で、「取り出して眺めるもの」とは。
このゼレンスキー演説があった数ヶ月後、仲良くしているウクライナ人研究者や活動家たちが来日し、私は彼らを案内したり、食事に連れて行ったりしていました。
訪日の最終日に彼らは、このワインをくれました。
このワインは、2014年のクリミア占領をきっかけに、自国内にロシアによる占領地を抱えるウクライナ、モルドバ、ジョージアのワインをブレンドする企画が始まり、「自由のブレンド」と名付けられていたのでした。
彼らに
「こんな貴重なものをありがとう。じゃあ、ウクライナがhappy でvictoriousな新年を迎えることが出来たら、このワインを開けることにするね」と伝えたところ、彼らはこれがゼレンスキーの米議会演説の引用だとすぐわかり、大喜びしてくれたのでした。
しかし、ワインを開ける最初のチャンスだったはずの2024年の新年は、米国のウクライナ支援が麻痺状態に陥ったためvictoriousどころではなく、そしてこれから迎える2025年の新年も、ウクライナにとって厳しいものになりそうです。
したがって私も、ウクライナの勝利を願いながら、そして自分が出来ることを2025年もやり続けることを誓いながら、このワインを取り出して眺め、そしてそっとワインセラーに戻すことにします。
ウクライナの「勝利」、と書きましたが、ウクライナにとってなにが「勝利」、「安全」、「平和」なのかをめぐる解釈の違いが増大し、混迷したのが2024年と言えそうです。
日本ではとりわけ、ウクライナへの支援に冷淡な声が高まり、「被侵略国を支えるべき」と主張しただけで、激しい侮蔑と揶揄の対象になりかねません。
私自身もウクライナ支援継続をこのnoteに書いただけで、どれだけの侮蔑を受け続けたことでしょう。2024年とはそういう年でした。
(当たり前のことを確認しておきますが、noteは学術論文でも研究書でもありません。掲載先によって主張そのものをかえることはありませんが、書き方のスタイルや説明の仕方が異なるのは当然です)
それでも私には、あらゆる機会を捉えてウクライナの現状を説明し、侵略国に侵略の果実をとらせてはならないこと、それを黙認したり、ましてや正当化したりすることは誤りであることを、訴え続けていく責務があると思っています。
個人的なことを申し上げると、2024年には一部の方々からの嫌がらせや妨害行為への対処が一段落しました。これも私を支えて下さった皆様のおかげです。
しかし今も、私への粘着を継続している人は、告訴された警官とはTwitter上で親しい間柄で、当該警官と一緒になって私への中傷を日々行っていました。
それ以外の粘着者の方々も、その警官と親しかった人物と親密な関係をTwitter上で保ち、相互言及しながら私をネット空間で貶めています。
とはいえ、私への中傷が完全になくなることを期待するのはそもそも現実的ではありませんし、様々な懸念事項が2024年中に一段落したことも事実です。
2024年中の一段落を素直に喜び、過去にとらわれることなく、前に進みたいと思います。
皆様、本年もありがとうございました。
皆様に支えられてここまで来ました。私は本当に幸せ者です。
来年もよろしくお願い申し上げます。
また、皆様の健康とご活躍を、心からお祈り申し上げます。Happy, and Victorious New Year!