農機具レンタルが、農業に「自由」を生む可能性
平成も残り1ヶ月、いよいよ新しい時代が迫ってきましたということで、今回は僕が取り組む「農業機械のレンタル事業」についてお話したいと思います。
農機具の宅配レンタルサービスを開始したのが2017年10月、非常にニッチですが、ECのカートシステムを利用した農機具レンタルはおそらく弊社がはじめてだったのではないでしょうか。
また、前回の記事では、農機具にシェアリングエコノミーの思想が掛け合わされて生まれる新しい価値観について考えてみましたが、よく考えてみると投資効率の最大化以外にももっと大事な価値観が生まれるのではないかと考えました。
自分にとって、「価値」の低いものを使いたい人はいない
上記の宅配レンタルサービスでは2019年3月時点で既に80品目以上のラインナップを揃えたのですが、サービスイン当初はスモールスタートを徹底したこともあり、全くと言っていいほど予約が来ませんでした。
「これは本当に需要があるのか?」「値段が高すぎるのか?」など悩みつつも、地道な活動の結果、弊社のサービス内容にご理解を頂けるお客さまも増え、予約件数も少しずつ増えてきました。
そうした本当に地道な活動で気づいたことは、「価値の低い商品を使いたい人はいない」ということです。当たり前ですね。
コストも利用の手間も同じなら、中国製や台湾製の安くて機能や利用シーンが限定される草刈機やチェンソーよりも、ゼノア・共立・新ダイワのような国内向けハイブランドを使ってみたいし、ハスクバーナやスチールのような世界的にシェアも高く高機能な商品を使ってみたい方が多くいること、使った結果、「やっぱりええなぁ・・・」という感想を頂けることに気づいたのです。
お客様にとっての問題を最善の方法で解決できることが、商品の「価値」なのだと思います。
農機具の価値はほぼ市場価格と比例し、高くなるほど専門性が増す
Wikipediaで「日本の農業機械メーカー」を調べてみると、掲載記事数の少なさに震えます。トラクターメーカー4社はすべてあるので安心しましたが、「やまびこ」は載ってないんですね。
筑水キャニコムの「草刈機まさお」という攻めたネーミングは有名になりましたが、このシリーズは1台あたり100万円近くする乗用タイプの草刈機で、四輪駆動をはじめとする様々な高機能が特徴なのですが、乗用草刈機では国内でもトップクラスの人気商品です。
農機具は基本的に市場価格が上がるほど商品性能が上がる傾向にありますが、その分使える環境も細分化されていきます。
自動運転のトラクターをぜひ導入したい人というのは、農業の中でもかなり限定的な環境だと考えていて、「できるなら導入したい」という人の方が多数ではないでしょうか。
もちろん技術開発や国際競争の面もあり、かつてのF1レースのようにトップ層の技術はいずれ汎用化されるのだと思いますが、果樹や野菜などを中心に、機械化しづらい農作物はしばらく機械化を待つ必要がありそうです。
価値を「そこそこ」満たしてくれるものは多数に選ばれやすい
基本的に農機具の「コスパ」を考えた場合、自動運転のトラクターや収穫専用の機械など、専門分野の機械を買えば作業が楽になることはわかっているのですが、やはり価格の高さという部分が障壁になります。
「草刈り」というシーンで考えると、ホームセンターやネット通販で廉価版の刈払機を買う人が多いようにも思いますし、最近の商品は性能がいいので多数の方が求める草刈りの価値はそこそこ満たしてくれ、家庭菜園のような面積ならそれで充分とも考えられます。
エンジン刈払機のシェアを大きく確保しているのがホームセンターブランドであることからもわかる通り、みんなが普段使っているものにはやはりそれだけの価値があるものなのですが、ではそれが家庭菜園に最適化されているかと言われると、そうではないと考えます。
もしプロ向けの刈払機や、仮に「草刈機まさお」が最適解だとしても、そこまでお金を払わないでしょうという無意識の「コスパ」で商品を選んでいるのかもしれません。
農機具レンタルの「コスパ」から「自由」が生まれる
話を本題に戻すと、「価値の低い商品を使いたい人はいない」の通り、「シェア」や「レンタル」の考え方が農機具業界に普及すると、プロ向け農機具や専門機械の需要は今までよりも増えると考えていて、メーカーさんにもそのような説明をしています。
なぜなら、草刈機まさおが2~3万円で借りられるというコストを新しく提案することで、無意識のコスパで商品を選んでいた方にも新たな選択肢が生まれるからです。
実際に農機具レンタルを活用したお客様が、そのまま商品を気に入って購入されるケースもありますし、維持コストを考えて毎月レンタルを利用してくれるお客様もいます。
これって、商品の価格帯や専門性に関係なく、一部のプロだけでなく家庭菜園で機械を使いたいユーザーも「自由」に最適な商品を選べる状態だと思うのです。
何かと大規模集約化や自動化、スマート化が叫ばれがちな農機具の業界ですが、先端技術だけでなく、すでに存在するものの価値を多くの方に伝える必要がありますから、「本物」を広くお客様に体感して頂けるような商品とサービスの提供を今後も更に加速させていきたいと考えています。
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