100均のボードゲームに見る、ゲームの一般性について。
あ、どうも。東出智吉(ひがしで ともよし)です。どこにでも居そうな、ボードゲームが好きな中年です。そんな中年がなぜ、唐突にnoteを始めるということにしたのかと言うと、単にボードゲームに関する感想等を書き連ねたいという気分になったからです。気分で始めたので、急に書くことを辞めたりするかもしれません。悪しからず。
ボードゲームが100円(税抜き)で売られている時代。
あれは、多分X(旧twitter)で見たのだと思うのだが、
「100均ショップのダイソーにボードゲームが売っている」
というのを目にし、実際に欲しくなったので近所のショップを2件ほど回ってみた。その結果、
写真のゲーム以外にも売っており、驚きを隠せないでいたのだが、今回はこの中でも、次のゲームについて取り上げていこうと思う。
トリックテイキングゲームとは?
サンリオのキャラクターが書かれた可愛らしいゲームなのだが、その外箱とは裏腹に、その中身は「トリックテイキング」というジャンルのゲームそのものなのだ。「トリックテイキング」というゲーム自体が、一般に浸透しているモノではないと思うので端的に説明すると、
「カードを使い、ある一定のルールのミニゲームを行った後、その結果で勝負を決める、もしくは更に別に定めたルールに則って勝負を決める」
という一種のカードゲームである。それが100円(税抜き)で楽しめるのだから、凄い世の中である。
ゲームの中身を精査しつつ、トリックテイキングゲームを紐解く。
さて、その中身はというと、こうなっている。
45枚のカードの内、プレイに必要なカードは41枚、説明書がカードで3枚にわたって書かれてあり、残り1枚はオリジナルの設定を作るためのカード、となっている。この項では、特にトリックテイキングゲームに必要な30枚を説明書とともに取り上げて、トリックテイキングそのものを説明しようと思う。とはいえ、著者はトリックテイキングに関してはあまり詳しい人間ではない為、言葉の誤用などあるかも知れない。
スート3色のランク1~10、切り札無し。マストフォロー。
いきなり見慣れない単語が出てきて戸惑う人も居るかも知れないが、これから説明する。まず、スートとは、トリックテイキングで使うカードの色の事である。上の画像の下段、右から3色(緑、赤、青)のカードを指す。ランクというのは、スートを持つカードに記されている数字である。このゲームでは1~10までカードにランクが有り、基本的に数字の大きいほど強いが、ルールにより違ったりする。切り札はトランプともいうが、日本では「トランプというカードゲーム」として捉えられてしまう為に、切り札と呼ぶ。切り札は他のカードよりも強い性質を持つ。それがこのゲームには無いということになる。マストフォローというのは、このゲームの説明書が良くかみ砕いて説明しているので抜粋して引用する。
この、「親と同じ種類のカードを持っていたら、必ず出さなければならない」というのがマストフォローというルールになる。出せない場合、基本的に何色でも出してもいいが、大体のゲームがその色が切り札でない限り、負けとなる。
トリックとテイク。
さて、次はトリックテイキングの肝となる「トリック」と「テイク」について説明していこうと思う。これに関しては、上述した⑤と⑥のルールに以下のルールが有れば説明できる。これも説明書から一部抜粋する。
この「競技」というのはゲームの内容画像のカードに書いてあり、このゲームのルールにはとても大切な部分で有るのだが、一時「スート」と置き換えてもらいたい。この⑤~⑦のルールまでが「トリック」というミニゲームであり、「勝者はみんなが場に出したカードを得点として受け取り」という部分がテイクである。トリックをテイクする、ということで「トリックテイキング」ゲームという訳である。これを繋げて言うと、
「スート3色のランク1~10で切り札無し、マストフォローのトリックテイキング」
ということになる。その他にもルールがあるのだが、このゲームに関しては上の用語を繋げた言葉が理解して頂ければ嬉しい限りである。
このゲームの肝とは?
さて、トリックテイキングゲームというのは、ここまでかみ砕いて説明しないと理解が追い付かないゲームであることは分かったと思う。これが子供向けゲームとして100円ショップの棚に置いてあるのか?ということだが、これがこのゲームの肝に触れることになるので、説明していこうと思う。
実は色ではなく、文字と記号が肝。
実はこのゲーム、トリックテイキングの核となる「スート」を理解しなくても、「なわとび」「かけっこ」「すいえい」の文字が理解できれば、もしくは対応する記号が一緒ということが分かれば、親と同じカードを出すことが出来る。色弱の人にでも楽しめるように、ひらがなと記号で小さい子でも理解できるように作ってあるのだ。
「今回の競技」カードの存在。
このゲームには、一般的なトリックテイキングゲームには無い、親を識別するための「今回の競技」カードというものが存在する。一般的なルールの場合、一番最初の親からトリックを行い、次の親はテイクしたプレイヤーになるのだが、このゲームの場合、一番最初の親にこの「今回の競技」カードを受け取り、トリックで手札のカードと一緒に出す、ということを行い、テイクしたものが場に出たカードと一緒に「今回の競技」カードをもらう、という動作が入っている。これも「親」という説明を省くために必要な処理だったのだと思う。
「特別賞」の存在。
そして、このゲームの1番の核となっている部分は「特別賞」の存在だろう。1回のトリックで、とある条件がそろった時点で該当する特別賞カードが貰え、得点が別に入るというシステムである。プレイカードと区別を付けるために背面の色を変えてあるなど、プレイングに支障がないようになっているのもポイントである。
アートワーク。
サンリオキャラクターという、子供が親しみを持ちやすい、手に取りやすいパッケージ、カードになっていることもポイントとなっている。
結局のところ、このゲームの総評は?
最後にここに行き着くわけだが、
「対象年齢6歳から、という一般性に全振りしていて、トリックテイキングのゲーム性とのバランスに苦心した所が感じられる作品」
というのが、私の総評である。
一般性?ゲーム性?
これに関しては、下の動画が核心を見事に言語化しているので見てほしい。「星のカービィ」等を制作した、桜井政博氏の動画である。
トリックテイキングゲームの対象年齢は、低いもので、8才~、多いものは10才~、という物であり、ちょうど「勝負事」「このゲームの目的とは?」という事が分かり始めるのもこの位からなのかな?と思う。そういうゲームを6才~、としたのだから、「パーティーゲーム」や「誰もが泣かないやさしいせかい」を主眼に置いたのだと思う。そこに「特別賞」というこのゲーム独自のシステムがある。あまり書くとネタバレになるが、一般性を上げるために「やさしいせかい」を構築する為のシステムがこの「特別賞」なのだ。その結果、トリックテイキングを主眼に置いたゲーム性は、幾分下がっている、と言えるだろう。
あとがき。
さて、思ったよりも長文になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?正直のところ、100円(税別)クオリティの真価や如何に!?と思って、ノリで買ったモノでしたが、随分と考えさせられることがゲームから読み取れ、非常に勉強になりました。もしボードゲームをデザインする機会が有り、トリックテイキングゲームを作ることが有ったとしたら、このゲームを指標として、作っていこうと思います。言葉は悪いですが、
「このゲームより面白くないよね・・・」
と言われては作る意味は無いと、価格面から思えてしまうからです。トリックテイキングというゲームは、根底のルール(マストフォローや切り札等)は変わらず、ゲームデザイナーさんは手を変え品を変え、他のトリックテイキングと差異を付けているので、この種のゲームデザイナーの足切り作品をダイソーさんは作ってくれたものですね・・・。
さて、次の投稿の予定ですが、同じく買ってみた100均ゲームを1つずつ、ゆっくりと解剖していきたいと思っています。