32歳の誕生日に僕が伝えたいこと
見かけの言動だけを見ていると、僕の様子は、今でも小さな頃とあまり変わりはないのかもしれません。
昔から、僕は「人と違う」と言われ続けてきました。でも、僕自身は、それほど奇妙だとは思っていなかったような気がします。
自分の姿を自分で見る機会が、なかったからではないでしょうか。
やがて、みんなが当たり前にできることができなくて、叱られることが多くなり、自分が「悪い子」だと思うようになりました。
僕は「いい子」になりたくてしかたありませんでしたが、どうすれば「いい子」になれるのかわからなかったのです。
自分の姿を初めて映像で見たときには、本当に驚きました。
毎日鏡は見ていたのに、画面で見ている少年が自分だとは思えませんでした。それは言動が、あまりにも奇妙だったからです。
自分でやっているにもかかわらず「どうしてこの子は、こんなことをしているのだろう」と不思議でしかたありませんでした。
自分がどうして、障害児だと言われるのか、その時にようやくわかりました。
自分では、みんなとそれほど違わないと思っていたのに、実際は大差があることに気づき、僕は失意のどん底に落ちました。
どうして僕は、おかしな行動をしてしまうのだろう。
自閉症がどういう障害なのかを説明してくれる人はいても、どうしてそんなことをするのか、理由を教えてくれる人はいませんでした。
僕は、自分のことが知りたかったのだと思います。
説明できないことに対して、人は恐れを抱きます。
自分の行動の理由を言語化することで、僕自身も気持ちを整理することができました。
周りの人にも自閉症という障害を身近なものとして感じてもらえるようになった気がします。
何より良かったのは、僕がわざと困らせているわけではなく、僕自身が一番困っていることを知ってもらえたことです。
僕の他にもたくさんの当事者の人たちが発信しています。
自閉症者としての僕の意見が、すべての自閉症者に当てはまるわけではありません。自閉症という障害は、個人差が大きいからです。
今日、僕は32歳になりました。
行動の理由がわかったからといって、僕が自閉症という障害を克服できたわけではありません。
それでも、人生を前向きに生きていけることが、今の僕の幸せです。
これまで僕を支えてくださった皆様、そして応援してくださった方たちに心から感謝しています。