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へ〜んしんっ



「イヤ〜ん、そんなことないってばぁ」
「ボソボソボソ」
「え〜ぇ、うれしいぃ」

どうしても充電しなきゃならなくなって、入ったカフェベローチェ。
近くの席で、昼間っからカップルが並んで椅子を近づけべったりくっつき、人目を憚らずイチャイチャしてやがる。

「ボソボソボソ」
「あ・た・し・も」
「ボソボソボソ」
野郎が顔を近づけ耳元で何かをささやく。
見ててキモいんだが。

「イヤ〜ん、ダメだってばぁ」
「ボソボソボソ」
「もぉ〜、しょーがないんだからぁ」

っせーよ、ったく。他でやれや。
自分だけじゃなく、周りの視線もそう語っている。
しばらくアホな状態が続くが、充電が終わらない以上、店を出るに出れない。
たのむから早く満タンになれよ。


と、スマホの着信音らしきものが鳴り響いた。
カップルの女性がとっさにスマホを見、電話に出た。
「あ、お世話様です。・・・はい大丈夫です」
普通の会社員がしゃべる口調にガラリと変わる。
なにやら深刻な感じがする。
「はい、承知しました。確認の上改めてご連絡いたします。失礼します」
しばらく話し、そう言うと電話を切った。

女性は、残った飲み物を一気に飲み干し、身の回りを整理した。
「ごめん、急用で行かなきゃならないから。じゃ」
言うなり女性は野郎を一瞥もせず颯爽と出て行った。
野郎は呆気にとられ、憮然とした顔でチッと舌打ちをするなり、カップを片付けることもなく出て行った。


成り行きに、こちらも一瞬呆然としたが、思わず笑ってしまった。
女性の変わり身の早さに、改めて感服した。
スゲーわ。

充電が終わっていた。






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