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かえって気が晴れる場所

今日、東京・高円寺に行った。
朝からあいにくの曇り空、気晴らしに街歩きと思ったが、歩いていても、湿気と鉛色の空に余計に気が重くなる。
結局、狭い道の年季の入ったカフェに入った。

入った瞬間、カフェではなく、まるで純喫茶であることを悟った。
地元のヤクザ風の人達が集い、競馬やパチンコの話で盛り上がっている、殺伐とした場違いな雰囲気。
静かに本を読もうという気にもさせてもらえないダミ声の怒声が行き交う中、メニューも見ずに、アイスコーヒーとボソッと告げた。
それがこの店の流儀かと察しての、せめてもの気遣いだった。


―かかあの財布から黙ってカネくすねてきたってわけよ
―で、あの大波乱か
―どうなってんだよな?家に火ぃ付けに行かねぇと気ぃ済まねぇ

丸めた競馬新聞でテーブルを叩き、ポケットからジャラジャラと硬貨をテーブルに広げ、一枚、二枚と積み上げていく。

―おぉ、もう877円しかねぇよ
―あーあ、オレは知らねぇぞ
―大丈夫だって、どうせかかあもパチンコですっからピンだ。ざまぁみやがれ


何がざまぁみろなのかよくわからないが、危機感がまるでない。
けれど、その殺伐とした雰囲気がなぜか居心地がよく、しばらく時間を過ごし外に出た。

出てみたら、すっかり空は晴れていた。
なぜか心も晴れていた。

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