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意外な効力

仕事で横浜に行った。
ついでに少し遠回りして、中華街に寄って昼飯を食べた。
中華街は、平日だというのにそれなりに人はいた。
町のラーメン屋的な中華と違い、本格的な中華はいつも思うのだが高い。それなりの食材を使っているのだろうが、ひとりで食べるには、そんな上等なものでなくていいと思った。

結局、わざわざ中華街で食べることもないだろうに、しかも暑いくせに、チャーシュー麺を食べた。
中華のチャーシューは、縁がやや赤く、独特の香りがする。
いわゆる『ハッカク』が使われている。
ハッカクは、ダイウイキョウというシキミ科の果実であり、主に中華料理の香辛料として使われる。

このハッカク。
中に含まれる成分を抽出し、インフルエンザ治療薬『タミフル』の原料に使われる。
正確にいえば「使われた」であって、今では天然物質に依らずとも化合物で生成できるため、ハッカクは必要としない。だからと言って、ハッカクを食べればタミフルの代わりになるわけではないし、ハッカクを買い占めても何の得にもならない。


食べた後、街の中をふらふら歩いたため、会社に戻るのが予定より遅れた。
「ひがしさぁん、どうせ中華街にでも行って遅くなったんでしょぉ」
ウチの若手の子の鋭い考察。
「ちがうよ。打ち合わせが長引いたんだよ」
「ウソばっか・・・。ほら」
白いシャツのポケットに入れっぱなしだった中華料理店の真っ赤な割引券を抜き取り、目の前でヒラヒラと、勝ち誇ったような顔をして私に突きつけた。
「あれ・・・? 何でこんなの入ってんだろう?おかしいなぁ・・・」
「白々しいウソはつかないで下さいね。すぐバレるんだから」
まるで浮気を見つけた奥様のようだ。

ハッカクの効力は、インフルエンザに効くだけではなく、サボってるのが見つかってしまう効力もあるらしい。



「発覚」なだけに・・・。

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