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秋の甘味
季節真っ盛りの栗。
目の前のショーケースに並んだ栗大福をながめ、しばし悩んだ。
仕方ねぇなぁ、買っていくか。
これ下さいと、店員さんに告げる寸前まで、仕方ねぇなぁと、ためらいばかりが頭にあった。
おやつで機嫌を取って仕事をしてもらうという、よろしくない癖をやめなければと思うものの、おやつがあるか無いかで、仕事の出来具合が違ってくるという事実がある以上、なかなかやめ難いものであるのが悔しいところではある。
そもそも、子供じゃあるまいし、食べたければ自分で買って食べるのが社会人としての常識だろうと、そう注意したことがある。
可愛い年下のために、毎日じゃないんだから、たまに高級おやつを買ってくるのが年上としての常識だろうと、ピーチクパーチク何羽も揃って言い返してきた。
「おまえは甘いんだ」とよく言われるが、決して甘いことはないと自分では思っている。
まぁ、少しのおやつで仕事がはかどるなら、それはそれで良いかと、ある意味ドライに考えていることにしている。
ほらよ。
買ってきた栗大福が入った袋をテーブルに置いた。
やったー、おやつだぁ、今日は何?
手早く袋を開ける。
栗大福だぁ、美味しそう。
一人一個で分け始めた。
あれ?一個余った。どうする?
美味そうな栗大福、自分も食べたいので、自分の分も含め買ってきた。
じゃんけんしよ。
(・・・おい)
普通、気付かないか?
さーいしょはグー。じゃーんけんぽん。
勝者が当たり前のように余った一個を食べた。
あーおいしかった。ごちそうさまでしたー。
資料はいいから、栗大福返せ。