![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145206928/rectangle_large_type_2_e27287145fed809b14dba32d895730bd.png?width=1200)
Photo by
6megapixelman
夜の翼
羽田空港の出口を出た。
自動ドアが開いた瞬間、モワッとした空気が身体にぶつかってきた。
思わずビル内に引き返し、眉間に皺を寄せながらリムジンバスの時刻表を見上げ、バスに乗るか電車に乗るか、少し迷った。
バスに乗るためには、あの湿気の中、外で待たねばならない。
電車であれば、その心配はない。
しかし、バスは、乗ってしまえば、あとは眠ってターミナル駅に着く。
電車は、車両は混んでいる上、何度か乗り換えなければならない。
・・・決めた。
冷たいコーヒーを買った。
ストローをさし、冷たさが伝わるカップを片手で持ちながら、空港内のエレベーターに乗った。
5階に着いた。
平日の夜ともあり、人はまばらだ。
外へ出る扉を開くと、さっきより強くモワッとした空気がぶつかってきた。
それでも外に出た。
かすかに煌めく展望デッキのフロアを柵に向かって歩いた。
飛行機の燃料の匂いと、休めた翼からわずかに響くエンジン音が、鼻と耳に入り込んできた。
ここまで来ると、風も強く、むしろ心地よい。
ストロー越しに喉を潤しながら、しばらく整然と並んだ飛行機と、プラネタリウムのような滑走路を眺めていた。
ここまで慣らせば苦になるまい。
バスを待つ列に並び、一つ大きなため息をついた。