ビミョーな食べ物
先週末、客先での打ち合わせが終わり、真っ赤な車両の地下鉄丸ノ内線に乗った。
混んでいる車両の中程に入り、男子社員と並んで立った。
とりあえず、スマホのメールをチェックしていたら、「なんか、ひがしさんの好きそうな広告ばっかですよ」と男子が言ってきた。
顔を上げ、車内に視線をやると、いわゆる『ADトレイン』(アドトレイン)と呼ばれる、車両内のすべての広告が1社で独占されている電車だった。
真っ赤な紙に、キャッチコピーが白文字で書かれている。
これが、車内の至るところに貼られ、吊り下げられ、否が応でも目に入る。
コピーを読んでみると、自虐・逆張り系。
なるほど、なかなか好きそうな文言だ。
しかし、そもそもこれは一体なんなのか?
外見は、M&Mチョコに似ている。
でもチョコじゃなさそうだ。
オフィスに戻る途中のコンビニに寄ってみたが、売っていない。
家に帰る途中にまた見てみよう、と思ったきり、休日にもなり、すっかり忘れていた。
今日の午後、あの時一緒にいた男子が、赤いパッケージの、あのお菓子を持ってきた。
「うちの近くのコンビニにあったんで買ってみましたよ。もしかしてもう食べちゃいました?」
あぁあれか、と思いながら「いや、忘れてた」と言った。
彼は袋を開け、どうぞと言いながら開いた口を私に向けた。
手を入れ一粒取った。
思ったよりずいぶん小さく、いつも飲む頭痛薬みたいだ。
口に入れた。硬かった。
噛んでみたらグミのようなヌガーのような、グチャっとした食感。
なんじゃこりゃ?
「なんか、宣伝通りだな」
「でしょう?」
「美味いのか不味いのかよくわからんし、歯にくっつく」
「これで売れるんですかねぇ・・・」
「自虐過ぎるのも考えもんだな」
「ひがしさんも、こうならないようにしてくださいよぉ」
冗談とも本気ともつかない真面目な表情で言ってきた。
これと一緒にするなよな。