何もない駅
東京モノレール、整備場駅に降り立った。
この駅は、空港関係者専用と言ってもよく、一般の人はまず降りない。
降りても何もない。
正確には、何もないのではなく、工場然とした四角い威圧感のある建物が点在している。
空き地も多いので、建物自体は威圧感があるものの、空が広く、風が抜け、離着陸する飛行機の唸り声が遠くから響いてくる。
今日は土曜日ともあり、さらに人がいない。
広い車道を通る車もなく、センターラインの上を歩ける贅沢を味わえる。
それでも稼働している工場のそばを通ると、デミグラスソースの匂いが身体中を包むほど、漂っていた。
遠くからでもはっきりと見える、サッカーボールのようなドップラーレーダーの真下を歩き、目的地に着いた。
帰り、快晴の下、足を延ばし、多摩川のほとりに立つ大鳥居まで歩いた。
波が立つわけでもないが、静かな水の音が囁き、等間隔に並んだ人々が何をするでもなく、ただ座り、ただ川を眺めている。
鳥居にぶら下げられた本坪鈴が、時折鈴緒を揺らす人により、音を鳴らす。
私も等間隔の間に入って、しばし風にあたり、光る水面を眺めていた。