あんたがたどこさ
埼玉県川越市は「小江戸」と呼ばれ、蔵造りの建物が立ち並ぶ街並みだ。
今日、仕事のため足を運んだ。
歩くと、駄菓子屋をはじめ古風な意匠を施したカフェ、寺院、神社などがあり、タイムスリップした感を得られる貴重な街だ。都心から電車で小一時間で行けることもあり、休日は観光客が後を絶たない。
この川越、歴史的に要衝の地であり、特に徳川幕府においては、常に譜代大名を配するほどであり、また川越城主を勤めた者は幕閣への登用が約束されるほどだった。
徳川家康が死去し、日光久能山に亡骸を運ぶ際、途中、川越にある喜多院で法要が営まれた。喜多院は、天海僧正が住職として勤めた寺であり、春日局にゆかりのある寺でもある。日光と久能山に東照宮が建立された後、この川越にも東照宮が建立された。
東照宮といえば、「日光東照宮」が有名だが、日本全国には、約500近い東照宮がある。川越にあるのは、川越市小仙波町にある「仙波東照宮」である。
家に帰り、久々に山下洋輔のジャズピアノを聴いた。
演奏ナンバーは『仙波山』。
といわれても、曲名にピンとこない人が多いはず。
しかし、次の歌だといえば、理解してもらえるはず。
あんたがたどこさ
ひごさひごどこさ
くまもとさくまもとどこさ
かの有名な手鞠歌である。誰もが一度は口ずさんだはず。
そして、歌詞の続きはこうである。
せんばさ
せんばやまには
たぬきがおってさ
ここに「仙波山」が登場する。
私も、初めて山下洋輔の『仙波山』を聴いた時、曲名と手鞠歌がまったく結びつかなかった。
山下洋輔は、この手鞠歌を見事ジャズへと変貌させ、独特のパワフルな演奏技法で聴く者を魅了した。
実は歌詞上の「せんばやま」、「仙波山」と書いたが、熊本県にある「船場山」が正しいという説もあり、むしろ「仙波山」の方が異説という、確たる事実がないのが現状だ。
しかし、狸=徳川家康と捉えれば、仙波東照宮にいる家康のことを指している方が、なんとなくピンとくる。
それを猟師が鉄砲で撃ってさ
煮てさ焼いてさ食ってさ
それを木の葉でちょいとかぶせ
童謡のわりに、字面にすると意外と残酷なのにも改めて気づくはず。