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松見坂



朝方降っていた雨も上がり、東京の午後は穏やかに晴れた。
渋谷駅からずいぶん歩いた先での打ち合わせが終わった。

ビルを出、渋谷とは逆方向に幹線道路へ向かって歩いた。
どこにでもありそうな平凡な道を歩き、大きな交差点に着いた。
信号の横に「松見坂」と掲げられている交差点。信号が青になるまで、行き交う車を見ながら立っていた。
交差点から見る池尻大橋方面は、ゆるやかに下っていて、意外と広い空と電線がない街並みに、仕事が終わったこともあり、解放感を覚えた。

やがて、止まっていた車が動き出すのと同時に、6車線分の大きな横断歩道を渡る。
車音だけが響く幹線道路を避け、静かな一本裏の道に下り入る。
古い家と新しいマンションとが混在する、時折くねる細い道を、物珍しげに見回しながら歩いた。

しばらく歩くと、唐突にカフェの看板が現れた。
1階にはベーグルを売っているショップがあり、どうやらその脇の階段を上がった2階がカフェになっているらしい。
一人で入るには躊躇う雰囲気。
とはいえ何かの巡り合わせ、階段を上がってみた。

あとで調べてわかったことだが、ニューヨークソーホーに住む女の子のアトリエをコンセプトにした、アンティーク調のカフェ。
様々な種類のチェア・テーブル、書籍、レコードが置かれ、落ち着いた雰囲気のカフェだった。
場違いとは思いつつ、仕事を忘れ、珈琲一杯で居心地のいい時間を過ごすことができた。

もうすぐ夕暮れ。
そびえ立つ首都高大橋ジャンクションを見上げながら、池尻大橋駅に向かって玉川通りを歩いた。




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